いつもの喫茶店は珍しく1番乗りだった。8時開店の8時半。
カウンターの端っこに座って新聞を取りだそうとした時、ミルをひきながらマスターが
突然「NさんとKさんは仲が良いのですかねえ」と言った。「えッ」とわたくし。
今まで彼がお客のことを何か言ったことはないし、お店の人間が客のことを口にすべき
ではないとわたくしは思っている。
「KさんはいつもNさんにひどいことを言っている。あんなにひどく言われて、仲良しで
いられるのかと・・」
Nさんは少し耳が遠いのでKさんが大きな声で話しているのが耳に入ってくることがあ
る。確かに相手を小馬鹿にしたような物言い。
「あなたに聞いても分かりっこない」「本当に何も知らないねえ」・・・
Nさんはお向かいさんだからよく知っているけれど、KさんのことはNさんの友人で
喫茶店で顔を合わせる程度の知り合いである。
Nさんは自分の身内の愚痴をよく話し、人の話の腰を折って話したがる性癖があるから
鬱陶しいことはある。
でも2人は電話でやり取りし、いつも一緒にいる。他人が出る幕ではない。
そういう仲良し関係もあるのだ。