その場でメタエンジニアリング(その6) KME901
定年退職後の10年間は、どっぷりとメタエンジニアリングに嵌まってしまった。その結果、最近のその場考学では、「その場でメタエンジニアリング思考」が習慣となってしまった。そのいくつかを紹介してゆこうと思う。
題名;ダーウインの進化論をメタ思考する
ダーウインの進化論は、一般の生物には当てはまるようだが、人類の進化については、ミッシングリングを含めて、うまく説明がつかない。また、宗教上の理由などから、全く否定するヒトも多数存在する。そこで、いくつかの文献を調べた結果、思わぬ結論に達してしまったので、その経過と結果を示す。
文献とその要旨;
① 太刀川英輔著「進化思考-生き残るコンセプトをつくる」英治出版(2021)
・創造は進化を模倣している
「疑似進化能力」;身体の一部を進化させるために道具がつくられた
(例)目=顕微鏡、望遠鏡、声=拡声器、消化器官=調理法、冷蔵庫、足=靴、乗り物
・創造とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である
② 今西錦司全集(第9巻)講談社(1994)
・人間と生物を区切る考えを止め、進化の過程において生成されたとみると、無関係でなくなる
・なぜ、進化の過程で文化を創り出すことになったのか
・必要な前提条件として道具がつくれるだけの潜在能力が必要
・他の生物との違いは、一時的な間に合わせではなく、永続性のあるものを作る(なぜ作れるのか?)
・最初の道具は武器
・自然環境が変わり、武器無しでは絶滅してしまう状況に
・従来通りに身体を造りかえてから始めたのでは、急場に間に合わない
・生物は、原則的には同じ属ならば、みな同じ形態を持ち、同じ機能をあらわす。
・武器つくりで成功した人類は、その後も、もっぱら身体外的な進化、すなわち文化の進化を追うことになった。
③ ジョセフ・ヘンリック著「文化がヒトを進化させた」白揚社(2019)
・人間の消化管は有毒な植物を無毒化する機能が貧弱なのに、ほとんどの人間は有毒植物と食用植物を見分けられない
・身体の大きさが同じくらいの哺乳動物に比べて、人間の腸はあまりにも短いし、胃も歯も小さい
・猛獣が棲む酷暑のアフリカで、なぜ発祥し、生存し進化できたのであろうか
・文化として受け継いできた知的スキルやノウハウを奪われると、どうにもならなくなる。(生まれつき火のおこし方も解らない)
・ヒトという種が文化への依存度を高めながら進化した種だからなのである(p.21)
・文化とは、習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念など、成長過程で他者から学ぶもの
・文化進化の産物(火、調理法、切断用具、衣類、身振り語、投槍、水容器)がヒトの脳や身体に遺伝的な変化をもたらした
・幼年期と閉経後の生存期間が長くなり、文化を習得したり、伝えたりする機会ができた
・身体のあらゆる部分の遺伝的変化をもたらしたのは、文化である
・大きな脳、速い進化、遅い発達
・脳容積の拡大は、20万年前に停まった
・脳は、シワを増やして表面積を大きくし、神経細胞どうしの連絡を密にし、誕生後にも急速に大きくすることができる
・消化機能の外部化―食物調理
・文化は、遺伝子には手を加えなくても、ありとあらゆる方法でヒトの脳や身体の機能を変化させることができる
これらのことをメタエンジニアリング的に拡張解釈する;
・人類(ヒト)は、10~20万年前に生物として二つの独特な進化(脳の拡大、10本の手の指を独立して動かす)をとげ、以降は身体の進化を次々に外部化することに成功した。
それは、文化(狩猟、農耕以降のあらゆる技術などを含む)であり、すべての文化はイノベーションによって維持・発展され続けている。
・しかし、すべての機能の外部化は、生物としての身体の諸機能を低下する傾向にある。
・ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の生存能力の進化である。
一般に、動物の進化とは、生存競争に勝つために、そのための必要能力を高める方向に進化してゆく。
ところが、ヒト以外の動物は、エンジニアリングの能力が無いために、自分自身の体の一部を進化させなければならない。これには、膨大な時間を要する。しかし、人類はエンジニアリングという能力を身につけたために、その創造物によって、疑似進化をすることが可能になった。
・眼の進化;敵を素早く発見するために、動物の目は進化をした。しかし、人類は顕微鏡や双眼鏡により、小さな物や遠くの物を発見できるようになった。
・声の進化;遠くの仲間に危険を知らせるために、また、敵を威嚇するために、動物は独特の発声をする。そして、その発声を明確かつ大きくするように進化してきた。しかし、人類は拡声器により、その進化を獲得した。
・消化器官の進化;動物は、自身の体がより強固になるような消化器官を進化させてきた。人類は、それと同等な進化を調理法の開発や、冷蔵庫を創造することで、短期間に進化させることができた。
このことは、消化機能の外部化といわれる。
・消化機能の外部化は、エンジニアリングによる調理器具の進化と、おいしいものを調理するというテクノロジーの進化により達成された。
・足の進化;動物は、敵から逃げるため、または敵を捕らえるために足の能力を進化させてきた。人類は、様々な乗り物を発明して、その能力を獲得した。また、悪路を長時間移動する必要のある動物の足の裏は進化させてきたが、人類は靴を発明して、その能力を獲得した。
このように考えてゆくと、「ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の種としての生存能力の進化である」から「ヒトによる創造は生物の進化そのもので、大自然の現象のひとつ」との結論になる。
定年退職後の10年間は、どっぷりとメタエンジニアリングに嵌まってしまった。その結果、最近のその場考学では、「その場でメタエンジニアリング思考」が習慣となってしまった。そのいくつかを紹介してゆこうと思う。
題名;ダーウインの進化論をメタ思考する
ダーウインの進化論は、一般の生物には当てはまるようだが、人類の進化については、ミッシングリングを含めて、うまく説明がつかない。また、宗教上の理由などから、全く否定するヒトも多数存在する。そこで、いくつかの文献を調べた結果、思わぬ結論に達してしまったので、その経過と結果を示す。
文献とその要旨;
① 太刀川英輔著「進化思考-生き残るコンセプトをつくる」英治出版(2021)
・創造は進化を模倣している
「疑似進化能力」;身体の一部を進化させるために道具がつくられた
(例)目=顕微鏡、望遠鏡、声=拡声器、消化器官=調理法、冷蔵庫、足=靴、乗り物
・創造とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である
② 今西錦司全集(第9巻)講談社(1994)
・人間と生物を区切る考えを止め、進化の過程において生成されたとみると、無関係でなくなる
・なぜ、進化の過程で文化を創り出すことになったのか
・必要な前提条件として道具がつくれるだけの潜在能力が必要
・他の生物との違いは、一時的な間に合わせではなく、永続性のあるものを作る(なぜ作れるのか?)
・最初の道具は武器
・自然環境が変わり、武器無しでは絶滅してしまう状況に
・従来通りに身体を造りかえてから始めたのでは、急場に間に合わない
・生物は、原則的には同じ属ならば、みな同じ形態を持ち、同じ機能をあらわす。
・武器つくりで成功した人類は、その後も、もっぱら身体外的な進化、すなわち文化の進化を追うことになった。
③ ジョセフ・ヘンリック著「文化がヒトを進化させた」白揚社(2019)
・人間の消化管は有毒な植物を無毒化する機能が貧弱なのに、ほとんどの人間は有毒植物と食用植物を見分けられない
・身体の大きさが同じくらいの哺乳動物に比べて、人間の腸はあまりにも短いし、胃も歯も小さい
・猛獣が棲む酷暑のアフリカで、なぜ発祥し、生存し進化できたのであろうか
・文化として受け継いできた知的スキルやノウハウを奪われると、どうにもならなくなる。(生まれつき火のおこし方も解らない)
・ヒトという種が文化への依存度を高めながら進化した種だからなのである(p.21)
・文化とは、習慣、技術、経験則、道具、動機、価値観、信念など、成長過程で他者から学ぶもの
・文化進化の産物(火、調理法、切断用具、衣類、身振り語、投槍、水容器)がヒトの脳や身体に遺伝的な変化をもたらした
・幼年期と閉経後の生存期間が長くなり、文化を習得したり、伝えたりする機会ができた
・身体のあらゆる部分の遺伝的変化をもたらしたのは、文化である
・大きな脳、速い進化、遅い発達
・脳容積の拡大は、20万年前に停まった
・脳は、シワを増やして表面積を大きくし、神経細胞どうしの連絡を密にし、誕生後にも急速に大きくすることができる
・消化機能の外部化―食物調理
・文化は、遺伝子には手を加えなくても、ありとあらゆる方法でヒトの脳や身体の機能を変化させることができる
これらのことをメタエンジニアリング的に拡張解釈する;
・人類(ヒト)は、10~20万年前に生物として二つの独特な進化(脳の拡大、10本の手の指を独立して動かす)をとげ、以降は身体の進化を次々に外部化することに成功した。
それは、文化(狩猟、農耕以降のあらゆる技術などを含む)であり、すべての文化はイノベーションによって維持・発展され続けている。
・しかし、すべての機能の外部化は、生物としての身体の諸機能を低下する傾向にある。
・ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の生存能力の進化である。
一般に、動物の進化とは、生存競争に勝つために、そのための必要能力を高める方向に進化してゆく。
ところが、ヒト以外の動物は、エンジニアリングの能力が無いために、自分自身の体の一部を進化させなければならない。これには、膨大な時間を要する。しかし、人類はエンジニアリングという能力を身につけたために、その創造物によって、疑似進化をすることが可能になった。
・眼の進化;敵を素早く発見するために、動物の目は進化をした。しかし、人類は顕微鏡や双眼鏡により、小さな物や遠くの物を発見できるようになった。
・声の進化;遠くの仲間に危険を知らせるために、また、敵を威嚇するために、動物は独特の発声をする。そして、その発声を明確かつ大きくするように進化してきた。しかし、人類は拡声器により、その進化を獲得した。
・消化器官の進化;動物は、自身の体がより強固になるような消化器官を進化させてきた。人類は、それと同等な進化を調理法の開発や、冷蔵庫を創造することで、短期間に進化させることができた。
このことは、消化機能の外部化といわれる。
・消化機能の外部化は、エンジニアリングによる調理器具の進化と、おいしいものを調理するというテクノロジーの進化により達成された。
・足の進化;動物は、敵から逃げるため、または敵を捕らえるために足の能力を進化させてきた。人類は、様々な乗り物を発明して、その能力を獲得した。また、悪路を長時間移動する必要のある動物の足の裏は進化させてきたが、人類は靴を発明して、その能力を獲得した。
このように考えてゆくと、「ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の種としての生存能力の進化である」から「ヒトによる創造は生物の進化そのもので、大自然の現象のひとつ」との結論になる。
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