その場でメタエンジニアリング(その1)
定年退職後の10年間は、どっぷりとメタエンジニアリングに嵌まってしまった。その結果、最近のその場考学では、「その場でメタエンジニアリング思考」が習慣となってしまった。そのいくつかを紹介してゆこうと思う。
題名;その場で進化思考
太刀川英輔著「進化思考-生き残るコンセプトをつくる」(2021)は、現代人がイノベーションを創出する能力を備えているのは、生物学的な進化論から説明できるという。これは、まさにエンジニアリングに関するメタ認知だと思う。
そこで、少し引用しながらメタエンジニアリング思考を試みる。
① 優れたデザイン(創造)の定義
・関係性こそが良いデザインの本質にある (p.12)
・創造とは、人とモノとの新たな関係性を生み出すこと
・人類の創造は、あらゆる分野の専門分化によって矮小化した (p.13)
② 創造は進化を模倣している
「疑似進化能力」;身体の一部を進化させるために道具がつくられた
(例)目=顕微鏡、望遠鏡、声=拡声器、消化器官=調理法、冷蔵庫、足=靴、乗り物
③ 創造とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である (p.48)
これらのことをメタエンジニアリング的に拡張解釈すると、以下になる。
・ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の生存能力の進化である。
一般に、動物の進化とは、生存競争に勝つために、そのための必要能力を高める方向に進化してゆく。ところが、ヒト以外の動物は、エンジニアリングの能力が無いために、自分自身の体の一部を進化させなければならない。これには、膨大な時間を要する。しかし、人類はエンジニアリングという能力を身につけたために、その創造物によって、疑似進化をすることが可能になった。
・眼の進化;敵を素早く発見するために、動物の目は進化をした。しかし、人類は顕微鏡や双眼鏡により、小さな物や遠くの物を発見できるようになった。
・声の進化;遠くの仲間に危険を知らせるために、また、敵を威嚇するために、動物は独特の発声をする。そして、その発声を明確かつ大きくするように進化してきた。しかし、人類は拡声器により、その進化を獲得した。
・消化器官の進化;動物は、自身の体がより強固になるような消化器官を進化させてきた。人類は、それと同等な進化を調理法の開発や、冷蔵庫を創造することで、短期間に進化させることができた。
・足の進化;動物は、敵から逃げるため、または敵を捕らえるために足の能力を進化させてきた。人類は、様々な乗り物を発明して、その能力を獲得した。また、悪路を長時間移動する必要のある動物の足の裏は進化させてきたが、人類は靴を発明して、その能力を獲得した。
このように考えてゆくと、「ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の種としての生存能力の進化である」から「ヒトによる創造は生物の進化そのもの」との結論になる。
・進化の速度と、絶滅に至る速度の関係
他の動物に比べて、進化のスピードが極端に早いということは、絶滅までの期間が短く、かつ絶滅に要する時間も短くなると云うことになるであろう。
このような懸念は、21世紀になってからの多くのイノベーションにあてはまるように思う。上にあげたヒトの諸器官の疑似進化は確かに「生物としての進化」と呼べる物だが、例えば、様々なSNSやチャットGTP等は、生物の進化というよりは、生物としての退化のように思えるからである。
このようなことを、いかにして克服するかが、メタエンジニアリングの主題の一つになる。
定年退職後の10年間は、どっぷりとメタエンジニアリングに嵌まってしまった。その結果、最近のその場考学では、「その場でメタエンジニアリング思考」が習慣となってしまった。そのいくつかを紹介してゆこうと思う。
題名;その場で進化思考
太刀川英輔著「進化思考-生き残るコンセプトをつくる」(2021)は、現代人がイノベーションを創出する能力を備えているのは、生物学的な進化論から説明できるという。これは、まさにエンジニアリングに関するメタ認知だと思う。
そこで、少し引用しながらメタエンジニアリング思考を試みる。
① 優れたデザイン(創造)の定義
・関係性こそが良いデザインの本質にある (p.12)
・創造とは、人とモノとの新たな関係性を生み出すこと
・人類の創造は、あらゆる分野の専門分化によって矮小化した (p.13)
② 創造は進化を模倣している
「疑似進化能力」;身体の一部を進化させるために道具がつくられた
(例)目=顕微鏡、望遠鏡、声=拡声器、消化器官=調理法、冷蔵庫、足=靴、乗り物
③ 創造とは、言語によって発現した「疑似進化」の能力である (p.48)
これらのことをメタエンジニアリング的に拡張解釈すると、以下になる。
・ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の生存能力の進化である。
一般に、動物の進化とは、生存競争に勝つために、そのための必要能力を高める方向に進化してゆく。ところが、ヒト以外の動物は、エンジニアリングの能力が無いために、自分自身の体の一部を進化させなければならない。これには、膨大な時間を要する。しかし、人類はエンジニアリングという能力を身につけたために、その創造物によって、疑似進化をすることが可能になった。
・眼の進化;敵を素早く発見するために、動物の目は進化をした。しかし、人類は顕微鏡や双眼鏡により、小さな物や遠くの物を発見できるようになった。
・声の進化;遠くの仲間に危険を知らせるために、また、敵を威嚇するために、動物は独特の発声をする。そして、その発声を明確かつ大きくするように進化してきた。しかし、人類は拡声器により、その進化を獲得した。
・消化器官の進化;動物は、自身の体がより強固になるような消化器官を進化させてきた。人類は、それと同等な進化を調理法の開発や、冷蔵庫を創造することで、短期間に進化させることができた。
・足の進化;動物は、敵から逃げるため、または敵を捕らえるために足の能力を進化させてきた。人類は、様々な乗り物を発明して、その能力を獲得した。また、悪路を長時間移動する必要のある動物の足の裏は進化させてきたが、人類は靴を発明して、その能力を獲得した。
このように考えてゆくと、「ヒトによる創造は、エンジニアリングにより発現した人類の種としての生存能力の進化である」から「ヒトによる創造は生物の進化そのもの」との結論になる。
・進化の速度と、絶滅に至る速度の関係
他の動物に比べて、進化のスピードが極端に早いということは、絶滅までの期間が短く、かつ絶滅に要する時間も短くなると云うことになるであろう。
このような懸念は、21世紀になってからの多くのイノベーションにあてはまるように思う。上にあげたヒトの諸器官の疑似進化は確かに「生物としての進化」と呼べる物だが、例えば、様々なSNSやチャットGTP等は、生物の進化というよりは、生物としての退化のように思えるからである。
このようなことを、いかにして克服するかが、メタエンジニアリングの主題の一つになる。