『宙わたる教室』 伊与原新 文藝春秋
東京・新宿にある都立高校の定時制。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。負のスパイラルから抜け出せない21歳の岳人。子ども時代に学校に通えなかったアンジェラ。起立性調節障害で不登校になり、定時制に進学した佳純。中学を出てすぐ東京で集団就職した70代の長嶺。「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、理科教師の藤竹を顧問として科学部を結成し、学会で発表することを目標に、「火星のクレーター」を再現する実験を始める――。
直木賞受賞作よりずっといい。(なんでこの作品で直木賞受賞という、直木賞あるあるだ)感動作。
でも、私には申し訳なさで一杯の過去を思い出すので、あまり語りたくない。
『祖母姫、ロンドンへ行く!』 椹野道流 小学館
正月の親戚の集まりで英国留学の思い出話を披露した孫娘(著者)に、祖母が「一度でいいからロンドンに行きたい、お姫様のような旅をしたい」と告げたことから、一族総出で支援する5泊7日の豪華イギリス旅行が決定! だが、そもそも著者が留学で培ったのは「行き当たりばったり体力勝負の低コスト海外滞在」ノウハウで、高齢の祖母をお姫様のようにもてなす旅とは真逆のスキルだ。資金面こそ親族の全面フォローがあるが、慣れないツアコン(秘書)役を任命された孫娘の心には不安しかない。初めての祖母とのふたり旅は、楽しみもトラブルも山盛りで毎日が刺激的だ。果たして著者=《秘書孫》は、強くてキュートな《祖母姫》を満足させることができるのか?
祖母が自己肯定感の高いお姫様然としておもしろい。孫も顔が似ておらず姓が違うことを利用して孫ではなく秘書としてホテルのスタッフと関係性を築いていくのもおかしい。
気を付けないといけないのは、かなり前の思い出話であること。飛行機はファーストクラス、バトラーのいる五つ星ホテルに滞在していること。孫は、留学していたので英語がペラペラなこと。自分の旅行の参考にはならない。ガイド付きの豪勢な旅行として「ええな~」と読もう。メロンを半割にし、種の部分にてんこ盛りのイチゴの朝食なんて!
そして、ホテルのスタッフのホスピタリティや、CAさんのプロとしての意識など感心することしかり。高齢者に対する考え方、祖母姫の「謙虚と卑下は違う」「自分を信じて努力して、その結果生まれるのが自信」などちょこちょこ為になる話もあり。
『みんなのお墓』 吉村萬壱 徳間書店
裸になる快感を追い求める主婦。「真理」がわからないと言う小学四年生四人。夜コンビニに出ることだけが日課の引きこもり男性。
「真・神塾」という塾への合宿参加を決めたギャル。潔癖症の妻を持つ中年。皆それぞれに悩みを抱えつつ、しかし必死に生きていこうとしている面々だった。彼らはなぜ「内藤家之墓」に引き寄せられてしまうのか。
下の話が多すぎて、私はすごく嫌だった。死がゴロゴロと転がっているのも。私とは合わなかった。
東京・新宿にある都立高校の定時制。そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。負のスパイラルから抜け出せない21歳の岳人。子ども時代に学校に通えなかったアンジェラ。起立性調節障害で不登校になり、定時制に進学した佳純。中学を出てすぐ東京で集団就職した70代の長嶺。「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、理科教師の藤竹を顧問として科学部を結成し、学会で発表することを目標に、「火星のクレーター」を再現する実験を始める――。
直木賞受賞作よりずっといい。(なんでこの作品で直木賞受賞という、直木賞あるあるだ)感動作。
でも、私には申し訳なさで一杯の過去を思い出すので、あまり語りたくない。
『祖母姫、ロンドンへ行く!』 椹野道流 小学館
正月の親戚の集まりで英国留学の思い出話を披露した孫娘(著者)に、祖母が「一度でいいからロンドンに行きたい、お姫様のような旅をしたい」と告げたことから、一族総出で支援する5泊7日の豪華イギリス旅行が決定! だが、そもそも著者が留学で培ったのは「行き当たりばったり体力勝負の低コスト海外滞在」ノウハウで、高齢の祖母をお姫様のようにもてなす旅とは真逆のスキルだ。資金面こそ親族の全面フォローがあるが、慣れないツアコン(秘書)役を任命された孫娘の心には不安しかない。初めての祖母とのふたり旅は、楽しみもトラブルも山盛りで毎日が刺激的だ。果たして著者=《秘書孫》は、強くてキュートな《祖母姫》を満足させることができるのか?
祖母が自己肯定感の高いお姫様然としておもしろい。孫も顔が似ておらず姓が違うことを利用して孫ではなく秘書としてホテルのスタッフと関係性を築いていくのもおかしい。
気を付けないといけないのは、かなり前の思い出話であること。飛行機はファーストクラス、バトラーのいる五つ星ホテルに滞在していること。孫は、留学していたので英語がペラペラなこと。自分の旅行の参考にはならない。ガイド付きの豪勢な旅行として「ええな~」と読もう。メロンを半割にし、種の部分にてんこ盛りのイチゴの朝食なんて!
そして、ホテルのスタッフのホスピタリティや、CAさんのプロとしての意識など感心することしかり。高齢者に対する考え方、祖母姫の「謙虚と卑下は違う」「自分を信じて努力して、その結果生まれるのが自信」などちょこちょこ為になる話もあり。
『みんなのお墓』 吉村萬壱 徳間書店
裸になる快感を追い求める主婦。「真理」がわからないと言う小学四年生四人。夜コンビニに出ることだけが日課の引きこもり男性。
「真・神塾」という塾への合宿参加を決めたギャル。潔癖症の妻を持つ中年。皆それぞれに悩みを抱えつつ、しかし必死に生きていこうとしている面々だった。彼らはなぜ「内藤家之墓」に引き寄せられてしまうのか。
下の話が多すぎて、私はすごく嫌だった。死がゴロゴロと転がっているのも。私とは合わなかった。