ささやかな幸せ

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夏休み文楽特別公演 第二部名作劇場

2016-07-25 15:01:00 | 文楽
夏休み文楽特別公演 第二部<名作劇場> 平成28年7/23~8/9 国立文楽劇場

薫樹累物語(めいぼくかさねものがたり)

●豆腐屋の段
 力士絹川谷蔵は、傾城・高尾におぼれて政治をかえりみない主君を思うあまり、高尾を殺してお尋ね者になっている。絹川は、高尾の兄・三婦の豆腐屋に偶然逃げ込む。高尾の妹・累は、以前危ない目にあったときに絹川に助られたことを思い出し、恋心をつのらせる。絹川は三婦に正体を見破られるが、忠心を認められ、お家安泰まで命を長らえることとなる。累は姉の敵と知りつつも絹川と夫婦になりたいと思いつめ、自害しようとするので三婦に夫婦になることを許される。一人で祝言の身拵えをしている累の前に姉の高尾が幽霊となって現れ、累は気を失う。美しかった累は、姉の怨念によって、すっかり容貌が変わってしまう。
 姉の敵を好きになり、結婚しようとするのがなかなか理解できない。恋って、そうさせるものなのでしょうかねえ。いつもなら、たくさんの義太夫さん達の声がそろって、はもった感じに聞こえるのだが、なぜか今日はバラバラに聞こえて気持ちが悪かった。
●埴生村の段
 累と一緒に故郷埴生村にもどった絹川は名を与右衛門と変え、ひっそりと暮らしている。累は夫の心遣いで鏡を見ることを禁じられ、容貌の変化に気づいていない。絹川は、主君の許嫁の歌潟姫が金五郎に吉原へ売られるのを救うために百両の金が必要になる。そこで、姫を女房にしたいので百両で譲ってくれと持ち掛ける。一方、累には心配をかけないように金五郎への借金が返せず困っていると嘘をつく。累は、自分の身を売って百両を用立てようとするが、女郎屋の主人に罵られ、鏡を渡される。累は、変わり果てた自分の顔に驚き、絹川(鬼怒川)に身を投げようとする。
 前半は、眠気に襲われてしまった・・・。足の不自由な累を遣う吉田和生さんがすごいと思った。
●土橋の段
 鬼怒川の堤まで来た累は人声に気付いて物陰に隠れる。歌潟姫を連れた金五郎は、累を追ってきた与右衛門と出会い、争いになる。累は、姫を与右衛門の恋人と思い込み、嫉妬する。嫉妬に狂う累に姉・高尾の怨念が乗り移り、恐ろしい形相で歌潟姫に襲い掛かる。戻ってきた与右衛門は、累に事情を打ち明けるが、なおも執着を見せる累のとどめをさす。
 恐ろしい顔のガブを用いるのが見どころ。忠義やら誤解やらすれ違いやらで悲劇になるのだが。顔にあざがあっても、足が不自由でも累を愛する与右衛門。累が後世悪女と言われるのが不憫だと殺す与右衛門の気持ちが悲しい。

伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)

●古市油屋の段
 福岡貢は、以前主君から盗まれた銘刀・青江下坂を取り戻したが、刀が本物であるという鑑定書(折り紙)の行方をまだ探している。貢と恋仲である油屋の女郎・お紺は、折り紙を持っているらしい徳島岩次になびいたふりをして、貢のために折り紙を取り返そうと考える。そして、お紺は、岩次に取り入り、折り紙の入った包みを預かる。一方岩次は、銘刀を手に入れるため、自分と貢の刀の中身をすり替える。お紺に愛想尽かしをされた貢は、岩次が刀をすり替えるのを見ていた家来筋の喜助から渡された岩次の刀(銘刀・青江下坂)を持ち、怒って帰っていく。岩次は、貢の刀が残っていることに気付き、仲居の万野に貢の後を追わせる。
 吉田蓑助さんの使うお紺が、なんともお色気たっぷり。しかも、そこはかとなく品があるから、お女郎さんには見えない。格の高い武家とか、いいおうちの娘が落ちぶれてお女郎さんになったのかなと思わせる。義太夫の竹本津駒太夫さんが、たくさんの登場人物をはっきりと語り分けてスゴイ。 
●奥庭十人斬りの段
 刀が岩次のものだと知った貢が油屋へもどってくる。そこへ、銘刀を取り戻そうとする万野ともみあいになり、万野を斬ってしまう。貢は、行き会う人を次々と殺めながら、岩次を探す。お紺は、貢に本心を偽ったことを明かし、折り紙を渡す。喜助も貢の持っている刀こそが銘刀だと言う。貢は、岩次を斬ると刀と折り紙を主君へ届けようと急ぐのであった。
 首を斬ると、舞台に生首が転がる。足を斬ると、舞台を斬られた片足が歩く。と、なんとも凄惨な殺人現場である。しかし、桐竹勘十郎さんの遣う貢は、銘刀に操られるように人を殺める妖しい美しさ。非情な殺人鬼なのに、私は、魅入られたように貢に惹きつけられた。しかし、罪のない子どもを殺しても、忠義のためならと許される世界は、現代の私達にはなかなか受け入れ難い。終わった後は「えぇ~っ、そんなんでいいのか」と客席のあちこちから声がもれていた。

 

 
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