ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』とPPCカスタム

2018-12-22 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
私がまだ高校生だった’80年代の初頭に、モデルガンメーカーのコクサイ社から1通のDMが届きました。(以前、壊れたコルト・ローマンの部品を通販で取り寄せた事があったので)

封を開けるとチラシが入ってて、大砲みたいに太いバレル(銃身)を真正面から捉えた、どアップの写真がドーン!と眼に飛び込んで来ました。な……なんじゃこりゃあ!?

その拳銃には「コルト・パイソン357マグナム・カスタム」って名前がついてたように記憶します。私が初めて眼にした「PPCカスタム」でした。

オリジナルの銃よりも更に精密な照準器を搭載し、発砲時の反動を軽減する為に、わざとバレルを太く(つまり重たく)したのがPPCカスタムで、要は射撃競技用に開発された仕様なんですね。

だけど当時の私にそんな知識は無かったもんで、あまりにゴツ過ぎるそのスタイルに「意味が解らん」と呆れつつも「かっこええ」って、思わず「欲しい!」って衝動にかられたもんです。

確か当時で2万円近い値段だったんで、とても高校生の私が手を出せる代物じゃなく、購入は諦めたんだけど、そのチラシの写真を眺める日々がしばらく続きましたね。

それから1年ほど経ってからでしょうか、TVドラマで初めてPPCカスタムの拳銃が登場しました。『西部警察PART II』で大門軍団入りした沖田刑事(三浦友和)が、S&W・M29=44マグナムのPPCカスタム(6.5インチ)を使ってました。MGC社から発売されたモデルガンを電気発火仕様に改造したプロップです。

あんなバカでかい拳銃を刑事が持ち歩くなんて、荒唐無稽も甚だしいんだけど、そもそも『西部警察』自体が荒唐無稽も甚だしい番組だったんでw、違和感は無かったように思います。やっぱ格好良かったですよ。

私はつくづく、こんな拳銃を使っても許される『西部警察』って、ほんっとにバカバカしくて素晴らしい!ってw、本気で羨ましく思ってました。『太陽にほえろ!』だといくら何でもあり得ないだろうって。

そしたらその1年後にまた驚いた! なんと『太陽』にも同じ44マグナムのPPCカスタム6.5インチが登場したではありませんか! 使ってたのは新人刑事・ブルース(又野誠治)です。

初めてそれを眼にした時は驚いたし、何だか『太陽』が越えちゃいけない一線を越えた気がして複雑な気分にもなったけど、ま、カッコええから良いかってw、すぐに頭を切り替えて受け入れました。

ブルース=又野さんがまた、PPCカスタムがメチャクチャよく似合うんですよね。友和さんもスタイリッシュで格好良かったけど、又野さんは存在そのものが「マグナム」って感じですから。

だけど第562話『ブルース刑事登場!』のラストシーンで新人ブルースが調達した拳銃は、PPCカスタムじゃないノーマルのM29(6.5インチ)でした。

そして、主演2作目となる第565話『正義に拳銃を向けた男』。

冒頭、先輩ボギー(世良公則)に促されて銃の弾丸チェックをする場面では、マグナムの一部分しか写ってなかったんで、ブルースはまだノーマルのM29を持ってるものと、私は思い込んでました。

この時点では、ブルースがなぜ使用拳銃に44マグナムを選んだのか、七曲署のメンバー達も我々視聴者も、まだ知らないんですよね。だからボギーは「そいつはぶっ放すなよ。当たりゃ人間バラバラだぞ」って、ブルースに釘を刺すんです。

『西部警察PART II』で友和さんが使ってた拳銃は、形はマグナムだけど中身はマグナムじゃない。つまり、普通の銃と扱い方が変わんないんですよね。通行人がいる街中であろうが気軽に、片手でバンバン撃ちまくってましたからw

団長(渡 哲也)が使ってたショットガンにしても、散弾銃なのに敵が持ってる拳銃だけ弾き飛ばすという、ワケの分からない事やってましたからw それはそれで『西部』の世界観なので受け入れるしかない。

一方『太陽』の世界では、あくまでマグナムはマグナムとして、つまり撃てば人の頭を吹っ飛ばす、極めて危険な拳銃として扱うんだって事が、先のボギーの台詞で示されてます。

で、その場面では銃を使うこと無く、ブルースは犯人もろとも運河に落下し、ずぶ濡れになりながら格闘の末、逮捕します。

その犯人を連行する途中でブルースは、釣竿バッグを背負った中年男とすれ違いざま、軽くぶつかります。その時の感触でバッグの中身が長物の銃である事を見抜き、ブルースはさっき逮捕した犯人をボギーに託し、その中年男の後を追います。

男がタクシーに乗ったもんで、ブルースも別のタクシーを拾う。その車中でブルースは、びしょ濡れになったマグナムをやおら取り出して、ハンカチで拭き始めるんですよね。

それを見てタクシードライバーがギョッとするんだけど、テレビを観てる我々もギョッとしましたw ここで初めて、その拳銃がPPCカスタムである事が判るワケです。

結局、ブルースは中年男を見失っちゃうんだけど、彼のカンは当たってました。男はバッグに入れてた散弾銃で、暴走族のチンピラ4人組を襲撃し、1人を射殺して逃走したのでした。

その4人組はいつも面白半分で走行中の車を取り囲み、慌てたドライバーが危うく事故を起こしそうになるのを見て楽しむという、どうしょうもないクズ連中なんですね。

1年前にそれで事故を起こし、死んでしまった娘がいた。クズ連中を襲った中年男は、その娘の父親なのでした。『太陽』でたびたび描かれる、被害者が非道なクズ野郎で、加害者が同情すべき悲劇を背負った善人という、逆転の構図です。

だけど警察としては、どんな事情があろうとも、被害者であるクズ連中を守ってやらなきゃならない。そして、可哀想な加害者を逮捕しなければならない。

そんなジレンマを抱えながら捜査するブルースは、散弾銃の男を追跡する時に拾ったタクシーの運転手=坂口(三角八郎)が、なぜかクズの生き残り三人衆を独自で探してる事に気づきます。

「正義の為です」と言う坂口の顔つきが、最初に出逢った時と何か違ってる。そう感じながらも、今はクズ連中を探し出して保護する事が先決。ブルースは捜査を続けます。

そしてようやく連中のアジトを見つけるんだけど、そこに再び襲い掛かる、散弾銃の凶弾! 反射的にマグナムを抜いたブルースに、相棒のボギーが叫びます。「ブルース、やめろ! 撃つな!」

でも、ブルースは撃ちます。周りにある廃材を狙い、マグナムの威力で吹っ飛ばす。姿を見せない襲撃者は、その破壊力にビビって逃げて行くのでした。

そこでやっと、ボギーは気づきます。ブルースが使用拳銃にマグナムを選んだのは、威嚇射撃で敵の戦意を消失させる事が目的だった。むしろ、相手を直接撃たないで事を収めたいという、優しさの裏返しだったワケです。

まぁ、こじつけ臭い感じは否めませんがw、筋は通ってます。ブルースの役名は「澤村 誠」で、亡きゴリさん(竜 雷太)=「石塚 誠」の名前とスピリットを受け継いでるんですよね。

ゴリさんの場合は「拳銃に弾丸をこめない」っていう保守的な手段で「決して犯人の生命を奪わない」主義を貫いたワケですが、ブルースは対照的に攻撃的な手段で、全く同じ主義を貫こうとしてる。

そんなスタイルは又野誠治さんの風貌にもマッチしてるし、何より本当にマグナムがよく似合う人ですから、充分に納得できる設定だと私は思います。

しかし山さん(露口 茂)は、そんなブルースに釘を刺す事を忘れません。

「気持ちはそれでいい。だがな、問題は人を撃つ撃たないじゃない。刑事はどんな時も、感情を銃弾にこめてはならんと言うことだ」

つまり、例え相手がどんなに非道な人間でも生命は守らなきゃいけないし、相手がどんなに同情すべき善人であっても、犯罪は食い止めなければならない。これまで『太陽』が一貫して描き続けて来たテーマです。

時には「こんなクズ野郎、ぶっ殺しちゃえよ!」って、見ながら欲求不満に感じる事もありました。アメリカ映画じゃ必ず最後はぶっ殺すしw、日本でもカタルシスを優先する番組は少なくないのに、なんで『太陽』はそんなにお堅いの?って。

でも今にして思えば、時代が変化しても決してブレないその姿勢、視聴者への影響も常に考慮する責任感こそが、『太陽』を15年も続く人気番組たらしめた魅力なんだって事が、よく解ります。

さて、事件は急展開。散弾銃の中年男は、実は最初の襲撃時にチンピラの反撃を食らって死んでたのです。じゃあ、2度目の襲撃はいったい誰の仕業だったのか? そう、タクシードライバーの坂口が、瀕死の犯人を乗せてその死を看取った時に、復讐の代行を依頼されたのです。

「私の代わりに、奴らを……正義の為に……」

坂口自身もまた、暴走族に何度か運転を妨害され、危ない目にも遭って来た。50年間、ずっと地道に生きて来たからこそ、怒りのマグマみたいなものが胸に沸々と溜まってた。映画『タクシードライバー』のデニーロみたいに。

「正義の為に銃をぶっ放すってのは、本当にいい気持ちですね、刑事さん」

いよいよ本性を表した坂口は、必死に止めようとするブルースを振り切ります。

「正義だ! 警察が何もしないから、私が正義の為に戦うんだ!」「人生50年、ろくな事は無かった! 正義の為なら死んでもいい!」

猛スピードで走るタクシーから振り落とされ、ボロボロに負傷しながらもブルースは、どうしょうもないクズ野郎を守って、散弾銃を構える坂口の前に立ちはだかります。

「なんでそんな奴をかばうんだ!? あんただって本当はそいつが憎いんだろう!?」

「ああ、憎い! だけど俺はあんたを撃つ! こいつを守る為に!」

PPCカスタムの銃口を坂口に向けて、ブルースは叫びます。

「例えあんたに正義があっても、俺はあんたを殺さなきゃならない。それが……デカなんだ!」

とても新人刑事とは思えないw、ブルースの貫禄と迫力に圧倒された坂口は、ついに散弾銃を手放すのでした。

主演2作目にして、この独壇場ぶり。いや、登場編からしてほとんど単独行動で、最後も1人で何人もの屈強なヤクザを病院送りにしちゃってましたからね。

既に愛妻(渡瀬ゆき)もいたりなんかして、これほど最初から「出来上がってる」新人刑事ってのも、かなり異色だったように思います。又野さんが強烈に意識しまくってる松田優作=ジーパン刑事との明確な違いを打ち出す狙いもあったみたいですね。

なお、ブルースのPPCカスタムは『西部警察』シリーズの電気発火式と違って、連射の際にシリンダー(弾倉)がちゃんと回転してますから、カートリッジ(弾丸)発火方式のプロップだったみたいです。

翌年、後輩のマイコン(石原良純)が加入してから、ブルースの拳銃はノーマルのM29(8・3/8インチ)にチェンジする事になります。だけどブルースが最もアクティブに活躍したのは最初の1年間なので、PPCカスタムの印象はとても強く残ってますね。

第567話『純情よ、どこへゆく』、第576話『刑事、山さん』、第578話『一係皆殺し!』、第583話『三人の未亡人』、第586話『生と死の賭け』、第600話『七曲署事件No.600』、第604話『戦場のブルース』、第615話『相棒』等、ブルースの主演作以外でもPPCカスタムは活躍し、そのどデカいインパクトにより強い印象を残してます。

なお『西部警察』のPPCカスタムM29は、三浦友和さんから柴俊夫さんに受け継がれた他、舘ひろしさんがMGC社製のコルト・パイソンPPCカスタム4インチを愛用されてました。

コクサイ社からは後に「デビル」「サターン」の名称で、M29のPPCカスタムが2種類発売され、私はそのキットモデルを大人買いしちゃいましたw
 

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4 コメント

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Unknown (適当谷損気)
2019-08-08 18:58:40
日本の警察官がマグナムを使うことはまずあり得ませんけど、昭和の刑事ドラマでは「とんでもない威力の銃」から様々なドラマが生まれたのも事実ですね
まぁ、マグナムでなくても銃弾なんて普通の人からすれば充分怖いですけど

私はPPCが登場する作品では「省港旗兵2」というのが気に入っています
中国本土から来たギャング団(省港旗兵)に、本土の公安出身者が香港警察(返還前の皇家警察)に依頼されて潜入するという内容
で、ギャング団の武装のひとつとしてPPCリボルバーが登場しています。主に主人公(徐錦江)が愛用してました。

ラストでは助けてくれる筈の港警の警部が裏切り、ギャングもろとも潜入仲間を警官隊に命じて蜂の巣にし、それを見た主人公は激怒し、警部にPPCを突きつけます。
警官隊に包囲される中、警部は主人公をなだめようとしますが主人公は許すわけありません。
自分も蜂の巣にされるのを承知で警部を射殺、同時に警官隊に撃たれて死んでいくのでした…

ってコメントがあまりにも長すぎて申し訳ありませんでした。
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Unknown (harrison2018)
2019-08-09 00:56:12
香港映画なんですね。ということはMGCのモデルガンではなく、本物ベースのステージガンが使われてたんでしょうか?

本物のPPCカスタムは写真でしか見たこと無いので、それは是非観てみたいです。

モデルガンでも相当重いのに、本物だと鉄アレイを持ち歩いてるようなもんですよねw 刑事はもちろん、ギャングが愛用するのもかなり荒唐無稽だけど、映画だからいいんです。
返信する
Unknown (適当谷損気)
2019-10-17 16:06:00
今さら返信です。
香港映画のプロップガンもピンキリのようでして、改造実銃だけでなく、日本製のモデルガンや電着銃、海外製の空砲専用銃など、様々なものが使い分けられているみたいです
「省港旗兵2」のはどうも日本製?のモデルガンに火薬を目一杯つめて発砲してたようにも見えます(まあ、素人にはこれでも十分迫力あるように見えますが)

では実銃改PPCが登場しないのかというと、登場する作品もちゃんとあります。
ジョン・ウー監督、チョウ・ユンファ、ダニー・リー主演の「狼」という映画では、殺し屋役のユンファがステンレス製のPPCリボルバーを発砲していました。
M29っぽく見えますが、ひょっとしたらブラジル製のタウルスがベースかもしれません。

話は変わりますが…最近、「西部署物語」とは別に、こんな作品も妄想しています。
舞台は戦前の日本。陸軍施設で射殺事件が発生。凶器は22口径拳銃。しかしどこからも発見されない。
怪しげな将校。彼はルガーP08を所有していた。被害者を殺す動機もある。しかし証拠となる凶器が見つからない…
主人公は警察から憲兵に出向していた若者で、明智探偵の助手の小林や文代と共に事件を追っていきます。
主人公が所持するのは十四年式…ではなく、二十六年式拳銃。当時は時代遅れのリボルバー。その上とにかく威力が低い。鈴木貫太郎が頭を撃たれても死ななかったという代物。優れているのは速射性だけ。

トリックを暴かれ、追い詰められ、機関短銃を乱射する犯人。主人公は二十六年式で三発叩き込み、犯人を捕らえる。
「なぜ自分がこんな銃を選んだのか、貴官には分からないでしょう。
今の自分は憲兵であり軍人だが、それ以前に警察官なのです。犯人を敵兵のように殺すのではない、生かして捕らえ、法の裁きを受けさせるのが私の使命です。だから、人を殺せないこの銃を選んだんです。」

って書き込みが長くなり過ぎましたね。すみませんでした。
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Unknown (harrison2018)
2019-10-18 00:43:07
渋いですね! それは是非とも実写のドラマか映画で観たいですが、戦前が舞台となると製作費が莫大になり、ちょっと日本じゃ無理でしょうね。日本のメジャーは女性にアピール出来るものにしかお金を出さないですから……破滅です。

女性にだって銃やアクションが好きな人もいるんでしょうけど、少数派は無視されますからね。日本は良い国だと思うけれど、映像業界のレベルは先進国の中で最低に近いかも知れません。
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