「COMIC デカ」というムック本の存在をご存知でしょうか? 不覚なことに私はつい最近まで知りませんでした。
すでに「VOL.7」まで発売されており、その号に'70年代末期の刑事ドラマ『手錠をかけろ!』第1話を収録したDVDが付録されてると知って、これは是非レビューしたい!と思ってネットで取り寄せました。
そしたら届いた本がどう見てもマンガ雑誌で、そもそもムックと雑誌の違いって何なのかね?(誠意って、何かね?)っていう、かねてからの疑問を解決すべく調べてみたら、本の内容は雑誌に近いけどあくまで単行本(書籍)なのがムックであり、雑誌の「magazine」と書籍の「book」を組み合わせて「mook」という呼び名が生まれたんだそうです。
その特徴は、本の内容が1つのテーマに特化してること、そして発売が不定期で販売期間が決められてないこと。だから売り切れなければ長期間店頭に並んでる。
なるほど! だから例えば月刊「映画秘宝」は雑誌だけど別冊はムックだったりするワケです。懐かしの「刑事マガジン」もマガジンを名乗りながら形態はムックでした(復活熱望!)。
この「COMIC デカ」には叶精作さんの『女刑事Q』、柳沢きみおさんの『特命係長 只野仁』、ほんだあきとさんの『奥さまは仕事人』、てしろぎたかしさんの『まかない刑事』といった刑事系マンガが掲載されてますが、あんまり興味ありませんw 子供のころ『ドーベルマン刑事』を読んだりはしたけど、私は刑事ドラマのマニアであって刑事マニアじゃないですから……
で、本題のドラマ『手錠をかけろ!』です。
『手錠をかけろ!』は1979年の秋シーズン、フジテレビ系列の木曜夜8時枠で全10話が放映された、国際放映&フジテレビの共同制作によるフィルム撮りの刑事ドラマ。
このシーズンは『鉄道公安官』『大空港』『ザ・スーパーガール』『探偵物語』『噂の刑事 トミーとマツ』『特捜最前線』『怒れ兄弟!』『太陽にほえろ!』『七人の刑事』『Gメン'75』『熱中時代 刑事編』『俺たちは天使だ!』『西部警察』etc…と、各局で刑事や探偵が活躍するアクションドラマが毎日何本も放映されてたパラダイスの時代。
そんな中でこの『手錠をかけろ!』はまったく目立たぬ存在でw(私感)、今の今まで私は一度も観たこと無かったです。
ちなみに本作の後番組が杉良太郎主演の『大捜査線』で、恐らく他局で杉サマが主演中だった『遠山の金さん』が放映を終えるまで、その繋ぎとして1クール限定を前提に制作されたのが『手錠をかけろ!』だろうと云われてます。
東京・青山警察署捜査課のエースである主人公=村田刑事を演じたのは、トーク番組『スター千一夜』の司会やブルース・ウィリスの吹替えでもお馴染みだった俳優の、荻島真一。
ほか、直属の上司である矢ノ浦課長に松村達雄、「チョウさん」こと鬼沢部長刑事に小池朝雄、同僚の小松刑事に赤塚真人、「テラ」こと寺泉刑事に中田譲治、「タキ」こと滝田刑事に渡辺寛二、「ボウヤ」こと立花刑事に阪本良介、署長の北小路に高橋昌也、そして部署不明の美人婦警=三杉ケイコに夏樹陽子、といったレギュラーキャスト陣。
この番組でしか見たこと無い俳優さんも混じってはいるけど、実力派が揃った渋いメンツで安定感バツグン! ただ……
肝心の、主役である荻島真一さんに、まぁこれも私感だけど「華」があまりに無さすぎて、一言で言えば「引き」が弱い。当時は女性に人気があったのかも知れないけど、それにしたって刑事ドラマの主役としては、どう贔屓目に見ても弱い。
役作りにしたって、きちんとしたスーツ姿で眼鏡までかけて、口調もなんだか気取った感じで、もしこれが『太陽にほえろ!』なら本庁から来た嫌味なエリート刑事(その回だけのゲスト、それも三番手ぐらいのポジション)にしか見えません。
なぜこのキャスティング? なぜこの役作り? 逆に意表を突いたのかも知れないけど、どう考えてもこれじゃ視聴率は取れないでしょ?って、失礼ながらそんなことを考えながら第1話を観てみました。
そしたら、最後の方になって謎が解けました。そうか、そういうことか! あらためて番宣ポスターを見れば、すでに答えが載ってました。
上のポスター画像と、これから載せる画像をご覧下さい。そう、主役は荻島さん=村田刑事でもなければ、青山署メンバーの誰でもなかったんです!
☆第1話『ペンフレンド狙撃事件~函館』(1979.10.18.OA/脚本=鴨井達比古/監督=永野靖忠)
実は『手錠をかけろ!』は地方ロケ主体の番組で、毎回レギュラーの刑事たちが地方へ出張し、地元の刑事と組んで捜査するという『俺たちの勲章』型のフォーマット。
第1話は北海道・函館が舞台で、函館東署のはぐれ刑事=倉田に扮したゲストが、明らかに荻島さんより華のある元祖「御三家」アイドル=西郷輝彦さん! キャラクターもクールかつワイルドで村田刑事より断然カッコいい!
そして第2話以降も宍戸錠、宝田明、藤田弓子、中村敦夫、梅宮辰夫、篠田三郎、竹脇無我、藤田まこと、最終回に至っては藤岡琢也に志穂美悦子!と、そうそうたるスター俳優たちがゲストで登場し、地方の刑事を演じてる!
そう、この番組の主役は各回のゲスト刑事であり、レギュラーたちは言わばホスト役で引き立て役。ゲストより目立っちゃいけないんですよね! だから、言っちゃ悪いけど荻島さんが主演なワケです。これはなかなか画期的なアイデアかも!?
初回のストーリーは、東京で若い女性が改造拳銃で撃たれ重傷を負う事件が発生し、被害者と文通してたガンマニアの医大生=水谷(狩場 勉)に容疑が絞られ、そいつが別の文通相手である函館の美容師=悦子(林 寛子)に会いに行ったことが判り、村田刑事ら青山署メンバーたちが函館に向かう、という流れ。
そこで登場するのが西郷輝彦さん扮する函館東署の倉田刑事で、なんと奇遇なことに彼は悦子の実の兄だった!
ところがこの兄妹、現在なぜか絶縁状態。実は悦子がまだ高校生だった頃、ボーイフレンドの男子生徒に強盗事件の容疑がかかり、彼は単なる見張り役だったのに倉田刑事の強引な捜査に傷つき、自殺しちゃうという悲劇があった。それ以来、悦子は兄に対して心を閉ざしてるワケです。
当然、今度はペンフレンドが殺人未遂の容疑者にされて悦子は激怒するんだけど、水谷の犯行を確信する倉田は意に介さず、悦子をオトリに使って水谷を誘きだしちゃう。
逆上した水谷は悦子を人質にし、改造拳銃を振りかざすんだけど、倉田はひるまず言い放ちます。
「お前に人は殺せない。お前に出来るのはせいぜい文通相手に嘘八百を並べることぐらいだろ? さぁ撃ってみろ!」
単なる小心者のガンマニア(誰がやねん!?w)に過ぎなかった水谷は、倉田の気迫に押されてあっさり投降。
「すまなかった。お前にあの男の正体を見せたかった……ただそれだけなんだ」
内心「ホンマかいっ!?」と思いつつw、兄の強引さの裏に隠された愛情を、悦子は初めて理解するのでした。めでたしめでたし。
……あれ? 主人公=村田刑事はどこ行った?w
もちろん、村田もちゃんとその現場にいて、青山署の仲間たちと一緒になりゆきをハラハラ見守ってましたw あっ、さすがに「手錠をかける」役目だけは彼が担いましたけど、そんなの誰がやっても一緒ですw
いかがですか、どう見たって西郷輝彦さんが主役でしょう? 第1話にして主人公が完全に埋没しちゃってる刑事アクションドラマって、なんと斬新な!w
だからやっぱり、ホスト役かつ引き立て役なんですよね。あくまで主役は各回のゲスト刑事。そんなコンセプトで創られた番組と見て間違いないと思います。
歳を重ねた我々世代からすれば荻島さんや西郷さんよりも、珍しく今回は二枚目に徹してらっしゃる小池朝雄さんや、課長らしからぬ軽妙さで場を和ませる松村達雄さん等、ベテラン勢の名演技に眼を惹かれます。やっぱ場数は踏むもんですよね。
あと、この回は左とん平さんや桝田紀子さん(『大都会』シリーズの看護婦さん)もゲスト出演されてます。
そしてゲスト・ヒロイン=悦子役の林寛子さん。子役からスタートされ、オーディション番組『君こそスターだ!』の第1回グランドチャンピオンに輝き、アイドル歌手として一時代を築かれました。俳優の黒澤久雄さんと結婚後は、毒舌キャラの主婦タレントとしてバラエティー番組でも大活躍。2人の娘さんもそれぞれ女優と歌手で芸能界入りされてます。(ちなみに娘婿はSOPHIAの松岡充さん)
今回の演技からも気の強さが滲み出まくってますがw、やっぱ美しいし輝いてらっしゃいます。西郷さんとの組み合わせはかなり豪華では?
Wikipedia記載のプロフィールによると、他の刑事ドラマへのゲスト出演は'77年放映の『特捜最前線』#019があるのみ。けっこうレアだったりします。
そしてレギュラー側のヒロイン、三杉婦警役の夏樹陽子さん。ファッションモデル出身で'77年の映画『空手バカ一代』ヒロイン役で女優デビュー。
'79年春シーズンに西郷輝彦さん主演の刑事ドラマ『刑事鉄平』(そんな番組があったこと、いま初めて知った!w) や『ザ・ハングマン』('81) にレギュラー出演されたほか、『華麗なる刑事』#26、『Gメン'82』最終回、『風の刑事・東京発!』#07等にゲスト出演。現在も女優としてモデルとして、さらにジュエリーデザイナーとしても活躍されてます。
ムック本の意味や語源は気になっても、わざわざ調べてまで知りたいとも思いませんよね。私もブログをやってなければ知らないまま一生を終えたと思いますw
このご時世もあり地方ロケは楽しそうです。当時の景色が見られるのも貴重でしょ。
ムック本の語源は初めて知りました。