1975年の秋シーズン、日本テレビ系列の火曜夜9時枠で全13話が放映された刑事ドラマ。制作は俳優座映画放送&国際放映。
東京・浅草を管轄とする台東警察署を舞台に、人情派の中堅刑事=風間(平 幹二朗)とエリート気質の新米刑事=影山(沖 雅也)が、下町の人々とふれ合いながら事件を解決していくヒューマンストーリー。
地味な内容ゆえか当時それほど話題にならず、ガキンチョだった私はその存在すら知りませんでした。10年ほど前にCATVで放映されたのを何話か観ましたが、やっぱり地味で眠たくて継続視聴には至りませんでした。
本作の後番組である『大都会/闘いの日々』もジメジメした内容で、日テレ火曜夜9時枠がハードアクションのイメージを定着させるのは'77年の『大都会 PART II 』以降という事になります。
かくも地味な存在かつ思い入れのない作品にも関わらずここで取り上げたのは、沖雅也さんが『太陽にほえろ!』にスコッチ刑事として登場する1年前に、その原型とも思える刑事像を演じておられるから。
というのも、第1話で沖さん扮する影山刑事が犯人を狙って撃った筈の弾丸が、なんと先輩の風間刑事に当たっちゃうトラウマ設定があるんですよね。
その弾丸を摘出するのが困難で、風間は体内に鉛の塊を残したまま刑事の仕事を続けるんだけど、激しく動くと激痛に襲われ、その度に影山は罪悪感に苦しむワケです。
『太陽~』のスコッチ刑事は、かつて自分が犯人を撃つことをためらったせいで先輩刑事が撃たれてしまい、そのトラウマから非情な性格に変貌したという設定。似てますよね。
ただし『太陽~』のチーフプロデューサーで『はぐれ刑事』の企画にも参加された日テレの岡田晋吉さんは、スコッチのキャラクター造形に影響を与えたのは影山刑事ではなく、テレビ朝日系列の人気時代劇『必殺』シリーズで沖さんが演じた殺し屋だとインタビューで証言されてます。影山はトラウマで人が変わったりはしてないですから、先輩刑事が撃たれちゃうシチュエーションがたまたま似ちゃっただけの事みたいです。
だけど鋭い眼つきとダンディーなスーツ姿はどう見てもスコッチを彷彿させ、少なくともビジュアル面では影響を与えたんじゃないかと思えてなりません。
風間刑事の幼なじみで町医者の新藤(田中邦衛)の義妹=美智子を演じてるのが、後に『太陽~』でスコッチの元婚約者に扮する夏純子さんなのが、またややこしいんですよねw で、その美智子は影山じゃなく風間に惚れてるというw
最終回直前で風間刑事の弾丸摘出手術が成功し、トラウマから解放されたのも束の間、影山刑事は最終回で保護しようとした女の子(市毛良枝)に撃たれ、「死にたくない」と呟きながら絶命します。
このシチュエーションはジーパン刑事(松田優作)の有名な殉職シーンとも似てるし、スコッチ刑事も最期は「死にたくない」と呟いて息を引き取ります。そもそも新米刑事・影山の成長と挫折を軸にしたシリーズ構成からして『太陽~』的なんですよね。
意図して似せたワケじゃないとしても『はぐれ刑事』と『太陽にほえろ!』とは切っても切れない関係、と言って差し支えないでしょう。少なくともテレ朝の『はぐれ刑事純情派』よりはずっと近い。
レギュラーキャストは他に火野正平、ホーン・ユキ、浅芽陽子、小沢栄太郎といった面々。10年前はリタイアしちゃったけど、今一度じっくり観直してみたい作品の1つです。
ボンを殉職させた倉田こと望月太郎さんも坂田刑事役でレギュラー出演され、トシさんこと地井武男さんもお偉いさんで2回ほど出られてます(^_^;)
作品はちょっと地味ですけど肩の凝らない作品だと思いますよ。一度ご覧になってくださいね。