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1976年の1月から8月まで、日本テレビ系列の火曜夜9時枠で全31話が放映された刑事ドラマ。制作は石原プロモーション。
日本映画が斜陽期に入り、多額の借金を抱え経営危機に陥った石原プロを救ったのは、背に腹は換えられず社長=石原裕次郎さんが渋々出演したTVドラマ『太陽にほえろ!』の大ヒットでした。
当初はテレビというメディアを馬鹿にしてた裕次郎さんも考え方を改め、自社でも連ドラを手掛けたいと『太陽~』のチーフプロデューサー・岡田晋吉さんに相談し、当時『前略おふくろ様』等をヒットさせ注目されてた脚本家・倉本 聰さんを岡田さんが招き入れ、石原プロのNo.2・渡 哲也さん主演を念頭に置いて練り上げた企画が『夜の紋章』というマルボー(暴力団担当)の刑事を主人公にしたストーリー。
それじゃイメージが暗すぎるって事で最終的には『大都会/闘いの日々』というタイトルに落ち着き、石原プロ初のTVドラマ制作がスタートしたのでした。
あの『西部警察』の前身となったシリーズって事でアクション物のイメージが強いかも知れませんが、第1作『闘いの日々』だけは全然違います。なにしろ人間ドラマの権化とも言える倉本聰さんがメインライターですから、ほとんど文芸作品に近い重さとリアリズムを持ったこのドラマにはアクションのアの字もありません。『太陽にほえろ!』が既に国民的人気を獲得しており、それとの差別化や強い対抗意識もあった事でしょう。
あるいは、主役を務める渡哲也さんが大病(そのせいで大河ドラマ『勝海舟』を途中降板)から復帰したばかりで、体調が万全じゃない影響もあったかも?(治療の副作用で、渡さんのお顔がパンパンにむくんでます)
そんな渡さん扮する主人公=黒岩頼介は暗い過去を背負い、部長刑事という中間管理職の悲哀を滲ませ、事件もスカッと解決すること無く、矛盾と理不尽に満ちた毎回の結末に、ますます眉間にシワが寄って行くという世界観。
要するに、リアルで良質なんだけど暗い、重い、地味なドラマで、どちらかと言えば玄人向け。当然ながら視聴率は取れないし創ってる側も楽しくないって事で、松田優作さんを新レギュラーに迎えた第2シリーズ『大都会PART II』からは娯楽アクション路線へとシフトし、それがテレビ朝日系列『西部警察』シリーズや『ゴリラ/警視庁捜査第8班』等へと繋がっていく事になります。
そんなワケで、私個人としては『PART II』を強くオススメしたいんだけど、アクションやヒロイックな刑事ドラマが好きじゃない、あるいは見飽きたと仰る方には、この第1作を是非、試しに観て頂きたいです。
内容の地味さとは裏腹に、キャスト陣はすこぶる豪華絢爛。渋谷を管轄とする城西警察署メンバーとして渡 哲也、高品 格、小野武彦、佐藤 慶、中条静夫、そして東洋新聞や毎朝新聞の事件記者に石原裕次郎、宍戸 錠、寺尾 聰、神田正輝、平泉 征、柳生 博etc…といったメンツ。
見事にオッサンだらけの布陣ですがw、黒岩刑事の妹に仁科明子さん、黒岩に想いを寄せるヤクザの情婦に篠ひろ子さんが扮する他、石原プロ作品恒例の弾き語り歌手を牧村三枝子さんが担当し、花を添えられてます。
松田優作、浅田美代子、石田あゆみ、坂口良子、藤岡琢也、川谷拓三、志賀 勝、木の実ナナほか、豪華ゲスト陣にも要注目の第1シリーズです。
なお、'76年は日テレで『太陽にほえろ!』、TBSで『夜明けの刑事』『Gメン'75』、NETで『非情のライセンス』が継続中のほか、千葉真一『大非常線』(NET)、星正人『刑事くん』(TBS)、篠田三郎・高岡健二『新・二人の事件簿/暁に駆ける』(NET)、高松英郎・山城新伍・江藤潤『刑事物語/星空に撃て!』(CX) 等の刑事ドラマが制作・放映されてました。
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