ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あぶない刑事』1986~1987

2019-01-30 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1986年10月、日本テレビ系列の日曜夜9時枠で放映されてた『誇りの報酬』の後を受け、セントラルアーツ&東映の制作でスタートしたのが『あぶない刑事 (通称あぶデカ)』でした。

神奈川県警・港警察署を舞台にオシャレな刑事たちが華麗に活躍するアクションドラマで、『誇りの報酬』の軽いノリを継承し、それを更に洗練させた「イケてる」世界観で若い世代のハートをがっちり掴み、想定外のスマッシュヒット。

当初は2クールの予定だったのがプラス2クール、1年間に渡って全51話が放映され、更に続編『もっとあぶない刑事』(’88)が放映されたほか、TVスペシャル1本、劇場映画7本が製作される大人気シリーズとなりました。

港署・捜査課の中堅刑事「ダンディー鷹山」こと鷹山敏樹=タカに舘ひろし、「セクシー大下」こと大下勇次=ユージに柴田恭兵、二人の上司・近藤課長に中条静夫、若手刑事・町田 透に仲村トオル、少年課刑事・真山 薫に浅野温子、その上司・松村課長に木の実ナナが扮するほか、ベンガル、山西道広、御木 裕、秋山武史、衣笠健二、長谷部香苗、藍物房子etc…といったレギュラーキャスト陣。

’86年と言えば『太陽にほえろ!』が最終回を迎えた年であり(『あぶない刑事』スタートの翌月でした)、まさに刑事ドラマの歴史が……と言うよりTVドラマの内容が、大きく転換していく過渡期でした。

’72年に『太陽にほえろ!』がTVドラマ全体の流れを変えたのと同じように、この『あぶない刑事』は刑事ドラマの在り方を変えたばかりか、トレンディードラマという新たなジャンル出現にも繋がる、TVドラマ界にとって画期的な作品だったと思います。

ただし刑事ドラマのジャンルに限って言えば『太陽にほえろ!』の流れから『Gメン’75』『特捜最前線』『西部警察』等のBIGタイトルが何本も生まれたのに対して、『あぶない刑事』の亜流作品はことごとくコケちゃった印象があります。いや、確かにコケてました。

ブランド物の高級スーツに身を包み、キザな台詞を連発し、英語の歌詞によるスタイリッシュな音楽をバックに、遊んでるようなノリで捜査し、ジョークを飛ばしながら拳銃を撃ちまくる。(アメリカ産刑事ドラマ『マイアミ・バイス』の影響もあったようです)

そんなスタイルを真似た番組は、どれも視聴率を取れないばかりか「失敗作」の烙印を押さざるを得ないものばかりでした。

私個人の尺度で判断すれば、かろうじて成功したのが『ベイシティ刑事』と『あいつがトラブル』、失敗に終わったのが『あきれた刑事』『俺たちルーキーコップ』『ゴリラ/警視庁捜査第8班』等で、いずれにせよ視聴率はどれもパッとしませんでした。

あの当時はシリアス路線にもこれと言ったヒット作は無く、刑事ドラマのジャンルそのものが衰弱してたように思います。そんな中で『あぶない刑事』だけが奇跡のヒットを飛ばしたワケです。

そう、これはもう、奇跡としか言いようがない。確かに斬新な内容ではあったけど、あのヒットはドラマの内容そのものよりも、やっぱり舘ひろし&柴田恭兵を主役に選んだキャスティングの勝利。それに尽きると私は思います。

私自身、このお2人がコンビを組むと知った時点で「そりゃ観なければ」って思ったし、高級ファッションやキザな台詞や英語の歌詞といった作風は、このコンビでなければサマにならないんですよね。

それも、舘ひろしと柴田恭兵の両方が揃わなきゃダメなんです。その証拠に、舘さんと仲村さんが『あぶデカ』そのまんまのキャラで共演した『ゴリラ』も、恭兵さんと仲村さんがコンビを組んだ探偵コメディ『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』も『あぶデカ』のようには楽しめませんでした。

舘さんと恭兵さんが揃わなきゃダメなんです。もしかしたら、浅野温子さんの存在も大きかったかも知れません。理屈じゃ説明がつかない、組み合わせの妙による化学反応がもたらした奇跡。

無理やり理屈をつけるとすれば、柴田恭兵さんの存在が核になってたのは間違いないと思います。『大追跡』や『プロハンター』『俺たちは天使だ!』等、軽いノリの作風で成功したアクションドラマには、必ず恭兵さんが出演されてるんですよね。

あの時代、あの世代で「軽いノリ」が本当にサマになる俳優さんは、恭兵さんしか存在しなかったんじゃないでしょうか? 身も心も、本当に軽い人なんだと思いますw それと天才的なユーモアのセンス。

で、共演する俳優さん達も恭兵さんに引っ張られて、普段は出せない軽さを表現出来るようになる。その最たるお人が舘さんなのかも知れません。

自他共に認めるナルシストの舘さんですから、『西部警察』の頃は「あんた、カッコつけ過ぎやろ」みたいな反感も買ってたように思うけど、『あぶデカ』ではその「決まり過ぎ」な感じが1つのネタに昇華され、どんだけ格好つけても「舘ひろしなら許せる」みたいな空気が確立しましたよね。それって、恭兵さんがアドリブでさんざんネタにしてくれたお陰じゃないでしょうか?

共演者をそうやってイジるのが大好きな恭兵さんは、『大追跡』で藤竜也さんを年寄り呼ばわりして叱られるわw、『俺たちは天使だ!』じゃ忍者のコスプレをした長谷直美さんに「まるで太ったゴキブリだな」と言い放つわw、相手が先輩だろうが女性だろうが容赦なし。

舘ひろしをそんな風にイジれるのは、芸能界広しと言えど柴田恭兵しかいないかも知れません。だから『あぶデカ』で舘さんは初めて、ご自身のキャラを笑いに転ずる術を会得されたんだと思います。

どう見ても器用な役者じゃない仲村トオルさんにせよ、本来なら地味な存在の中条静夫さんにせよ、恭兵さんにイジられる事によって面白味を発揮し、存在感を増して行きました。

浅野温子さんがあれだけ弾けまくる事が出来たのも、恭兵さんのアドリブ芝居が作品の枠をどんどん広げてくれたお陰じゃないかと私は思います。

ただし、浅野さんはやり過ぎましたねw 続編『もっとあぶない刑事』以降は越えちゃいけない一線を越えて、絶妙だった作品のバランスを破壊しちゃいました。

それだけのパワーを持った女優さんもなかなかいないでしょうから、このキャスティングは本当に凄いと思います。形だけ真似してもダメで、このキャストが揃ってなきゃ成立しない世界です。

パワフルな女優さんと言えば、木の実ナナさんもそうですよね。だけどこの人、最初の数話しか出てないのにレギュラー扱いで、毎回オープニングのタイトルバックで木の実さんだけテロップが出なくて、なのに映像はポーズを決めてストップモーションってのが、何ともマヌケな感じでした。

そのオープニング映像も斬新で、署に出勤する舘さんの目線でカメラが動いて、レギュラーキャスト達がこちらに向かって順番に挨拶していく形でした。

エンディングのフィルムカタカタ……もお洒落で格好良かったです。曲を作った舘さんは当初、これはハードボイルドなドラマになるんだと思い込み、フランス映画の渋いイメージで作曲されたんだそうですw

泥臭かったり悲壮感があったりしがちな刑事ドラマに、そういう乾いたスタイリッシュさを持ち込んだのは、舘さんの功績。これがまた、若い世代の圧倒的な支持を得た大きな要因でしょうから、やっぱり舘ひろし&柴田恭兵の組み合わせありきのスマッシュヒットなんです。

もう1つ、それまでの刑事ドラマに無かった新しい魅力として、GUNアクションにおけるマニアックな描写も挙げられます。これは納富貴久男さん率いるGUNエフェクト専門業者「BIG SHOT」の参加によるもの。

具体的な違いを説明するのは面倒なので省略しますがw、とにかくGUNアクションの見せ方、そのリアルさが『あぶデカ』以前と以後とでは格段に違うんですね。

お洒落なだけなら女性ファンしか注目しなかったかも知れない『あぶデカ』が、マニア層や子供たちをも引きつけたのは、格好良くてリアルなGUNアクションが見られた事も大きかったんじゃないでしょうか?

他にも、刑事の私生活を一切描かない割り切り方や、決してお涙頂戴に走らない作劇、これといった動機がない愉快犯や通り魔が大半を占める犯人像など、新しい刑事ドラマを目指した創り手たちの目論見が、’80年代後半の空気にぴったりハマったんだろうと思います。

そんなワケで『あぶない刑事』は、刑事ドラマに革命をもたらした作品として、『太陽にほえろ!』や、後の『踊る大捜査線』とも並ぶBIGタイトルであり、同路線の番組としては唯一の成功作でもありました。

そう、素晴らしいのは『あぶない刑事』だけなんです。続編の『もっとあぶない刑事』や、それに続く劇場版のシリーズは、残念ながら「素晴らしくない」ものになってしまいました。そのへんは私ならではの感じ方かも知れないけど、シリーズの人気が衰えて行った原因は決して「時代が変わったから」だけじゃないだろうと思います。

その辺りについては『もっとあぶない刑事』の記事にて詳しく書こうと思ってます。
 

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2 コメント

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バディ物の刑事ドラマ (フルーツブラザース)
2019-01-31 19:55:21
あぶない刑事と言えばテレビ第一作目が抜群に面白いです。番組当初のタカとユージはライバル意識がある場面が多々ありました。それは、舘さんと恭兵さんがライバル意識を持って芝居してたそうです。しだいに恭兵さんの軽快なアドリブに尊敬して舘さん自身も恭様のような役者に憧れを持ち始めたそうです。恭兵さんも舘さんのようなどっしりとした役者に憧れたみたいでライバル意識からお互いをリスペクトする関係になったみたいです。やっぱりそれが画面を通して出てくるんですね〜。劇場版1作目にタカが瀕死の重症を追った時に(ユージの単独行動で犯人からユージを救ったため)ユージが泣きながら、「やっぱりお前といないとだめだよ、ごめんなタカ」にタカは「気にすんなよ、一気のユージだろ、気にしてないよ」と一言、舘さん、恭兵さんの普段の関係性が画面、フィルムを通して役者としてただのコンビではないのを証明してますね。タカとユージはハードボイルドっていっているけど近藤課長には浪花節といわれたりと。この作品の一番の脇役は近藤課長でしょう。普段は2人のむちゃな捜査に頭を悩ましてるが、2人が辞表覚悟で県警からも指名手配も突っ切ったときには、自ら辞表を出して県警上層部にでむくなど一番に2人のことが大事な部下であることが証明してますね。そのタカとユージと課長の存在感と2人の影の理解者、松村課長の存在感がこの作品の基盤を作ったのでしょう。そのなかで、薫、トオル、中さん、パパ、谷口(筋肉バカ)鈴江が恭兵さんのアドリブでキャラクターが軟化してアドリブのアドリブと軽くて何も残らないくらいの軽さになりましたね。それでも、タカ、ユージ、近藤課長がいるから、越えてはいけない一線をこえないで一年間、放映できたのでしょう。ですから、劇場版1作と2作またまたとさらばはテレビ寄りの映画でしたので十二分たのしめました。第一作目の前期2クールはわりとハードボイルドな路線とコミカルなやりとりが見られ後期2クールでは作風が軟化して共演者全員がはじけてましたね〜でも共通するのは横浜の街を疾走カーアクションや銃撃戦アクション刑事ドラマの一番の見せ場を毎回、お届けする制作者の映画魂。

刑事ドラマは撃って、走って、車で疾走してなんぼですね。
あぶない刑事を超える作品はないですね
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>フルーツブラザースさん (ハリソン君)
2019-01-31 23:06:34
TVシリーズ1作目は全てのバランスがうまくいった奇跡の作品ですね。同じことをもっとお金をかけてやった『ゴリラ』はコケちゃったし、同じ『あぶデカ』でも続編はダメだったし、アクションドラマを、それもコメディを成功させるのは本当に難しいことです。
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