不覚にも、けっこう楽しんで観られたし、最終回は泣かされちゃいました。
とは言ってもやっぱ「日曜劇場」だから、不満点はいくつもあります。内輪のゴタゴタ劇と裏切り者当てゲームで尺を稼ぐ『半沢直樹』商法には心底ウンザリしたし、もう残り2話ぐらいの段になって官房長官(杉本哲太)の裏切りが発覚した時には失笑あるのみでしたw もうすぐ日本が沈没するんやで!?
最初はバラバラだったチームが最後には一致団結したり、ずっと悪役だった人がここぞ!って時に一番頼りになる味方になったり等、定石通りの泣かせパターンもやっぱ「いつもの日曜劇場」でしたw
だけど今回だけは「もうええわ!」ってチャンネルを替える気にならなかったんですよね。クライマックスの沈没(スペクタクル)シーンがどう描かれるか見届けたいっていうのもあったけど、それだけじゃない。泣かされたって事はちゃんと感情移入して観てたワケです。
この『日本沈没/希望のひと』が従来の「日曜劇場」と一体どう違ってたのか? なにが「日曜劇場」嫌いの私のハートを掴んだのか?
それは多分、あまりにもストレートに伝わって来る、創り手たちのメッセージがそうさせたんだと思います。
環境省の官僚で政治家を目指す男(小栗 旬)が主人公で、サブタイトルが「希望のひと」でキャッチコピーが「信じられるリーダーはいるか。」と来れば、理想のリーダー像を描くドラマなのは明らかで、現実の我が国のリーダーにさんざんガッカリさせられた今年だからこそ、それをやる意味があるのがよく解ります。
それともう1つ、自然災害プラス疫病蔓延でいよいよ「破滅」が絵空事でなくなって来た今、我々が一番考えなきゃいけないことは何か?っていう問いかけ。
本当に日本がまるごと沈没することが有り得るのか否かはともかく、自然災害の規模がどんどん大きくなって来てるのは歴然たる事実ですから、そんなとき具体的にどんなことが起きて、我々はどう対処していくべきなのかをシュミレーションし、連ドラという形で解りやすく伝えることには大きな意義があると私は思いました。
そんな時にリーダーが内輪のゴタゴタで足を引っ張られることも現実にあり得るだろうし、海外への移民計画がやっと軌道に乗ったところで疫病が世界中に蔓延(温暖化で北極圏の永久凍土から太古のウイルスが復活!)して入国を拒否されちゃう!なんていうジェットコースター展開も、有り得ないなんて今や誰も言い切れませんからね。
しかしスペクタクル描写は最小限に抑えられ、大地震で負傷した小栗くんが病室で目覚めたら、都心はすでに半分沈んでましたっていう描き方になりました。
これはもう仕方ないですよね。現在の映像技術ならそんなに予算を掛けなくても描けた筈だけど、描くワケにいかないご時世なんだからどうしようもない。
スペクタクルを描かなきゃ『日本沈没』を映像化する意味が無いのでは?って最初は思ってたけど、そうじゃなくてこれはリーダー論のドラマなんだと途中で理解しました。
原作は同じでも昭和の頃と今とじゃ現実味がまるで違うから、同じ方法論では創り得ない。当然の処置だろうと思います。
とはいえ、ほとんどの市民が脱出し、もぬけの殻となった東京の風景はある意味スペクタクルと言えるかも? これはこれで相当な手間をかけた映像ですよね。
富士山の噴火と、水没していく関東平野。いま描けるギリギリのスペクタクルなんでしょう。
小栗くんや松ケンくんを乗せた自衛隊の飛行艇が助走中、崩落していく地面と追いかけっこするスリリングな場面もありました。あれってハリウッドの災害スペクタクルムービー『2012』からインスパイアされてると思うんだけど、あの映画で予言してた地球の寿命=2012年からもう10年経ってる! ってことは公開はもっと前!? うそーっ!! ついこないだやん!?
本当に日本全土が水没しちゃった昭和版と、草彅剛くんが1人で沈没を食い止めちゃった平成版との間をとって(?)、令和版はプレートの分裂により北海道と九州だけ沈没を免れちゃった!っていう結末。
そんなことが有り得るか否かも「神のみぞ知る」で、とにかく自然が猛威をふるい始めたら、もはや人間には逃げる以外に成す術なし。そういう意味じゃ原点に戻ったと言えそうです。
「もっと、恐れた方がいい。人間は、この地球があるからこそ生きていられる。皆そのことを忘れてしまっている」
ラストシーンにおける田所博士(香川照之)のセリフに、創り手たちのメッセージが集約されてます。
「止められるのは今しか無い。それが出来なければ、間違いなく地球は終わる。そのカウントダウンはもう、始まっている」
セクシーショットは外務省の官僚を演じた中村アンさん。厚生労働省官僚役のウエンツ瑛士くんと2人、場違い感がハンパなかったけどw、だからこそ一生懸命さが伝わって来て応援したくなりました。
私が日曜劇場をこんなに褒めることはもう、たぶん二度とありませんw
MGCモデルガンの「ハイウェイパトロールマン41(略してハイパト)」は『太陽にほえろ!』が放映スタートしたのと同じ1972年に発売されました。日本におけるプラスチック製モデルガン第2号、リボルバーとしては初の製品です。
それだけに『太陽〜』をはじめとするアクションドラマや映画で引っ張りだことなり、それを観た男の子たちがみんな飛びついて商品としても大ヒット。
ただし、私が持ってるのは実はハイパトじゃなくて、本来なら357マグナム弾を使うハイパトのフレームに44マグナム(S&W M29)のシリンダーを組み合わせてリニューアルされた「ヘビーマグナム」であり、しかも友人から譲り受けたもの。
私が自分でモデルガンを買える年齢になった頃、MGCハイパトはすでに絶版品だったし、刑事ドラマの拳銃と言えばCOLTローマンMk-IIIの時代でしたから、さして興味も無かったんですね。
ところが今、あらためて見るとすこぶるカッコいい! 3.5インチっていう小ぶりなサイズが如何にもポリス仕様だし、やっぱり何と言ってもマカロニ(萩原健一)やジーパン(松田優作)が愛用したリボルバーですから。
で、私のハイパトならぬ「ヘビーマグナム」には、コクサイ製・旧ハイパト用の黒いプラグリップが付いてます。(MGC純正のグリップは茶色)
なんとなく、このテカテカと黒光りするグリップに郷愁みたいなものを感じて、コクサイの旧ハイパトをネットオークションで探してたら、グリップだけ単体で出品されてたから「よっしゃ、これだ!」と。
旧ハイパトはコクサイが「リボルバーのコクサイ」と呼ばれるほどハイクオリティーな製品を連発するようになる前、MGCのコピー製品ばっか造ってた頃のモデルガンだから、きっとグリップのサイズも同じに違いない!と思って買ったら案の定ピッタリでしたw
若干のグラつきはあったけど、試しにグリップアダプター(コクサイのKフレーム用)を差し込んだらそれも解決。カートリッジもコクサイの44マグナム弾を入れてるし、まさにMGC&コクサイのハイブリッドモデルガン! それがどうした!?
で、コクサイが「リボルバーのコクサイ」と呼ばれるようになった’80年代に完全新規設計でリリースされたのが、NEWハイウェイパトロールマンことS&W M28の4インチと6インチ。私が持ってるのは画像上の4インチです。
実銃のM28に3.5インチは存在しないそうで、MGCのハイパトは(そしてコクサイの旧ハイパトも)あくまで架空のリボルバーって事になります。
↑旧ハイパトとは比べものにならないほど、外観も内部メカも格段にリアルになったコクサイのNEWハイパト。私が持ってるのは’90年代にリバイバル発売されたもので、パックマイヤー風のラバーグリップが標準装備されてたけど、アルタモントの木製グリップに付け替えてあります。
アルタモントのグリップはオリジナルよりも細めに作られており、私みたいに手の小さい人にオススメ。とても握り易いです。木目やチェッカリングもなんだかエレガントで、もしかすると女性向けに作られたグリップなのかも知れません。
↑これは近年になってタナカ・ワークス社から発売されたモデルガン「S&W M1917・6.5インチ」ヘビーウェイト・バージョン。
『太陽にほえろ!』でジーパン刑事が任期後半で愛用した架空のリボルバー「SWミリタリーポリス22口径 (通称ジーパンカスタム)」に、市販されてるモデルガンの中だと一番シルエットが近いんじゃないかと思って買いました。
ジーパンカスタムは恐らくS&W M10ミリタリー&ポリスをイメージして造られたと思うんだけど、ベースがMGCハイパトだからフレームのサイズがM10よりひと回り大きい。このM1917はハイパトと同じサイズの「Nフレーム」の拳銃なんです。(M10はKフレーム)
M1917の銃身は5.5インチと6.5インチの2種があり、ジーパンカスタムの銃身は恐らく6インチ。ちょっと長い方か短い方か、どっちを選ぶかさんざん迷ったけど、長い方が劇中のイメージに近いと私は感じたので6.5インチにしました。
M1917は第一次世界大戦の末期、アメリカ軍の制式拳銃である45オート=COLTガバメントM1911の数が不足し、それ用の弾丸(.45ACP)をそのまま使えるリボルバーとして開発されたそうです。
で、この6.5インチのM1917はイギリス軍仕様で.455ウェブリーと呼ばれる弾丸が使われてた。これもオートマチック用の弾丸だから、リボルバーに使われる通常のカートリッジより短いワケです。なんてマニアックな話なんでしょうw
↑そして同じタナカ・ワークス製のABS製モデルガン、M1917の4インチ・カスタム。なぜ「カスタム」と呼ばれるかと言えば、とある映画用にアレンジされたプロップGUNを再現したモデルだから。(実銃のM1917に4インチは存在しないようです)
その映画とは、スティーブン・スピルバーグ監督の『レイダース/失われたアーク』、主人公=インディアナ・ジョーンズ博士を演じたのは勿論、我らがハリソン・フォード!
私がタナカ製のS&W系リボルバーを買ったのは、実はこれが最初。発売された頃 (約10年前)、私はマジンガーZのフィギュア集めに凝ってたもんでモデルガン熱は冷めてたんだけど、インディの愛用銃が商品化されたと聞けばスルー出来ませんでした。
で、買ってそのクオリティーの高さに驚愕。さっきご紹介したMGCヘビーマグナムとは大違い!w そりゃあ発売時期に30年以上の開きがありますから、技術は格段に進歩してるワケです。
モデルガンを買ってそれが気に入ると、木製グリップやらホルスターやらも買わずにいられないワケです。画像に写ってる本革ホルスターは、MGCのリボルバーが(発売当時の価格なら)2〜3挺買えちゃう値段だけどw、これもインディが使ったのと同じ型と聞いて、つい……
木グリの手触り、革ホルスターの匂いや軋む音なんかもひっくるめて銃の魅力なんですよね。
↑「Nフレーム」繋がりで、我が家にある44マグナム・リボルバーも紹介させて下さい。これはMGCのABS製モデルガン、S&W M29の4インチ。
M29はご存知『ダーティハリー』シリーズで世界一有名になった「(当時)世界一強力なハンドガン」で、MGC社がハイパトのフレームを流用して製造&発売したこのモデルガンも大ヒット。昭和のガンマニアなら誰でも一度は手にした筈です。
一番メジャーなのはやっぱり『ダーティハリー』で使われた6インチ(6.5インチ?)でしょうけど、この4インチもドラマ『大激闘』でマッドポリスの制式拳銃として使われたり、『太陽にほえろ!』でボギー刑事(世良公則)が、『あぶない刑事』シリーズで町田刑事(仲村トオル)が愛用して強い印象を残してます。
M29は後にコクサイ社やタナカ・ワークス社がもっと(そりゃもう比較にならないほど)ハイクオリティーなモデルガンを出してるけど、この4インチだけはマッドポリスが使ってた「MGCの44マグナム」がどうしても欲しくなり、ネットオークションでほぼ新品に近い中古を見つけて購入しました。
やっぱり、真っ黒でテカテカ光ってるのが好きなんです。昭和のアクションドラマで活躍した真っ黒でテカテカ光ってるモデルガンこそが、私にとっての「リアルな拳銃」だから。
↑コクサイ社のABS製モデルガン・NEW M29 44マグナムの6インチ。これも’90年代にリバイバル発売された製品です。コクサイは後にヘビーウェイトや金属モデルのM29もリリースしてますが、さすがにこのサイズだと私の手には重すぎるので、今はABSのしか持ってません。
しかしやっぱり、つくづくカッコいい拳銃ですよね。バランス的にはこの6インチが一番しっくり来ます。日本の刑事ドラマでは『俺たちの勲章』で松田優作さん、『華麗なる刑事』で草刈正雄さん、『爆走!ドーベルマン刑事』で黒沢年雄さん、『警視庁殺人課』で菅原文太さん等が6インチを愛用されてました。
↑コクサイ「ニュー・コンセプト・モデルガン」シリーズのM29、8+3/8インチのABSスタンダードモデル。私が持ってる中で最も銃身の長いリボルバーです。グリップはS&W社純正のサービスサイズに換えてあります。
8+3/8インチの44マグナムは『大都会PART III』と『西部警察』で寺尾聰さんが、『太陽にほえろ!』で沖雅也さんと又野誠治さんが、いずれもMGCのを愛用されてました。映画『最も危険な遊戯』シリーズでも松田優作さんが使ってましたね。
↑『西部警察PART II』で三浦友和さんがいきなり使い始めて我々の度肝を抜いた、極太バレルの44マグナム「PPCカスタム」。少し遅れて『太陽にほえろ!』でもブルース刑事(又野誠治)が愛用しました。
テレビで使われてたのはMGC製だけど、私が持ってるのはコクサイ製のM29 PPCカスタム「SATAN」6インチ。完成品より安価な組み立てキットを買って自分で作りました。
このモデルはバレルの下にもウェイトが付くんだけど、あまりにゴツ過ぎるし重すぎるので私は外しました。
↑知り合いから譲り受けた、同じくコクサイ製のM29 PPCカスタム「DEVIL」6インチ。これもバレル下部のウェイトを外してあります。
丸いバレルのSATANは大砲みたいで迫力満点だけど、フラットサイド・バレルのDEVILはよりスタイリッシュに見えて格好良く、私はこっちの方が好きです。気に入ったし、けっこう傷だらけだったので自分で塗装しました。
PPCカスタムっていうのは競技射撃用にアレンジされたリボルバーで、発砲時の反動を抑える=フロントをより重くする為にバレルを太くしてあるワケです。
実銃の世界ではKフレーム(M19 357マグナム)のPPCカスタムしか存在しないらしく、テレビで使われた44マグナムやCOLTパイソンのPPCカスタムは、MGCハイパトやジーパンカスタムと同じで架空のピストルなんですね。
↑最後にご紹介するのはモデルガンではなく、マルシン社製のエアーソフトガン(8㎜Xカートリッジ仕様のガスリボルバー)トーラス・レイジングブル44マグナムの6.5インチ。
トーラスはブラジルの銃器メーカーだけど現在はS&Wの系列会社らしく、このレイジングブルも内部メカはS&W製リボルバーのパクリみたいだけど、バレルのデザインがなかなか独創的で気に入りました。
広末涼子さんが出演されたフランス映画『WASABI』でジャン・レノ扮する刑事が使ってたけど、日本じゃいまいちマイナーな拳銃。マルシンさん、よくぞ製品化してくれました!
マルシン製ガスリボルバーはグリップにガスを注入するタイプなので、シリンダーに真鍮のカートリッジを入れるモデルガン同様の操作が楽しめる点でも高ポイント。
スナブノーズ拳銃も良いけど、ごっついマグナム拳銃もやっぱカッコいいですよね!
いったん時を戻しましょう。前回レビューした『太陽にほえろ!』#442を「数あるGUNアクション編のベスト」って書きましたが、その原点を辿ってみると、まだレビューしてないこの作品に行き着きました。
これ以前にも銃撃戦はたくさん描かれて来たけど、銃に関する『太陽〜』独自のマニアックな視点が盛り込まれたのは、たぶんジーパン刑事(松田優作)時代のこれが最初。
☆第82話『最後の標的』
(1974.2.8.OA/脚本=長野洋/監督=高瀬昌弘)
屋外射撃場でジーパンがゴリさん(竜 雷太)と2人で抜き撃ちの練習をしていたところに、かつて本庁捜査一課の部屋長で現在は庶務課に勤め、引退を間近に控えた根来刑事(北村和夫)がひょっこり現れます。
「何を遊んでるんだ、西部劇じゃあるまいし」
「根来さん!」
急に背筋がピンとなるゴリさんだけど、ジーパンはピンと来ません。
「なんだお前、根来さんを知らんのか?」
根来は「拳銃の神様」と呼ばれるほどの名射撃手であり、警察学校では教官としてゴリさんに射撃のイロハを教えたという。そのゴリさんが今や警視庁きっての名射撃手ですから、そりゃ根来は生けるレジェンド、神様みたいなもんです。
だけどジーパンは気に入りません。
「遊びってのはどういう意味ですか?」
本来、拳銃が大嫌いだったジーパンにとって射撃練習は決して楽しいもんじゃない。
しかも、ジーパンはつい最近の事件(#076)でまだ若い容疑者をやむなく射殺し、その妹(北原和美、今回の冒頭にも登場)から「人殺し」呼ばわりされたばかり。二度とそんな思いはしたくない、つまり二度と犯人を射殺しなくて済むよう、肩を狙って撃つ練習を一生懸命やってたのに!
だけど戦中派の根来からすればちゃんちゃら甘い、心臓を狙わなきゃ意味が無いってワケです。
「凶悪犯の中にはプロと云われる連中もいる。そんなヤツらと対決する場合、一瞬の抜き撃ちで勝負が決まる時もある。肩だけ狙うなんてやり方で勝てると思ってるのか?」
「しかし、そんなことは滅多に無いでしょ?」
「無いと言い切れるか? 一度でもあったらもうキミの命は無いんだぞ?」
「…………」
「ヤツらプロにとって最高の標的は生きた人間だ。キミ自身がその的になりたくなければ、腕を磨いて1発で仕留めることだな」
「…………」
こないだエアガンのシューティング・フィールドで私に事細かく指導してくれた鬼軍曹……じゃなくてオーナーを思い出しましたw 戦場においては確かにそうかも知れないけど、警察学校の元教官が言うセリフとしてはちょっと……いや、相当ヤバいですよねw
ふだん拳銃に弾丸をこめない主義のゴリさんが崇拝するような人物とは思えないけど、どうやら教官を退いてから現在に至るまでの間に色々あったみたいです。
ともかく根来に誘われ、拳銃の神様と並んでハイパトを撃つ羽目になったジーパンだけど、その腕前は「まるで大人と子供だな」とゴリさんに言わしめるレベル。
だけど根来はそれよりも、頑なにマン・ターゲットの肩ばかり狙うジーパンが気に食わないご様子。
「何やってる、撃つなら急所を狙って撃て!」
「オレたちが射撃練習するのは人殺しが目的じゃありませんよ!」
「いざ撃ち合いになった時、相手はバカみたいに突っ立ってやしないんだぞ? そんな甘い考えで倒せると思ってるのか!」
これぞ本物のマッドポリス! そりゃ庶務課に追いやられたワケですw
さて、その数日後、ルガーP08という渋いオートマチック拳銃を使った狙撃事件が連続して発生し、遠距離から1発で仕留めるその腕前から犯人は射撃の「プロ」だろうと見た藤堂チームは、極秘リストを元に殺し屋を片っ端から当たって行きます。(そんなリストがあるならなぜ全員逮捕しない!?)
が、どうやら今回の事件には誰も関わってない。面倒くさいから先に結論を書きます。皆さんお察しの通り、犯人は「拳銃の神様」こと根来。引退を迎え民間人に戻った根来は、刑事時代に裁けなかった犯罪者たちの処刑をおっ始めたのでした。
この時点じゃまだ正体不明だけど、とにかく射撃のプロが相手ってことで、ボス(石原裕次郎)は捜査一係メンバー全員に拳銃の常時携帯を命じます。
拳銃を渡されて浮かない顔のジーパンに、同僚で後に婚約者となるシンコ(関根恵子)が言いました。
「まだあのことを気にしてるのね?」
「……たとえ相手がどんなヤツでもな、生身の人間を殺した者にしかこの気持ちは解らないよ」
いつも悪党は問答無用でぶっ殺せ!とか書いてるけど、もし実際に殺しちゃったら、そりゃあ私だってとてつもない罪悪感を一生背負うでしょうから、ジーパンの気持ちはよく解ります。
なにせジーパンは初めての射殺を経験したばかり。その葛藤を(数話またいで)ここまで丁寧に描く『太陽にほえろ!』って、やっぱつくづく「青春ドラマ」なんですよね。
さて、なんだかんだあり、ジーパンは根来から射撃の猛レッスンを受けることになります。恐らくジーパンは根来が犯人であることを察したから。そして根来は根来でジーパンといずれ対決することになると予測し、対等に撃ち合えるよう鍛えておきたい気持ちが芽生えたんでしょう。
けど、根来がいくら心臓を狙えと教えても、ジーパンは頑として肩しか狙いません。
「本当に強情なヤツだな、貴様は」
苦笑しつつも根来は、なんだかジーパンのことが気に入って来たようで、自宅に招いてメシをご馳走します。
そこでジーパンは根来が過去に愛用して来た拳銃のコレクション(ただし写真)を見せてもらい、その中にルガーP08が含まれてること、そして「SWミリタリーポリス22口径」という命中精度バツグンのリボルバーが、今も本庁の銃器庫に保管されてることを知るのでした。
「これなら、いくら下手くそなオレだって……」
で、後日。かつて汚職を尽くした元警察幹部を根来が殺しに向かってると察したジーパンは、例のミリタリーポリス22口径を銃器庫から無許可で持ち出し、いよいよ「拳銃の神様」と対決します。
画像じゃよく判んないけど、ジーパンはちゃんと22口径の極細カートリッジ(弾丸)をシリンダー(弾倉)に込めてます。
このプロップ銃はMGCモデルガンのハイパト(38口径) をカスタムした物。つまりシリンダーまで22口径用に造り直してあるワケで、テレビ映画でここまで手の込んだプロップは滅多にお目にかかれるもんじゃありません。『太陽にほえろ!』って、なにげにマニアックな番組なんですよね。
さあ、クライマックス。林の中でジーパンは根来と対決します。
「そこで大人しくしてろ! オレが最後の標的を撃ち落とすまではな!」
「最後? どういう意味だっ!?」
実は根来は癌に冒され、余命宣告を受けていたのでした。ガーン!(昭和ギャグ)
壮絶な撃ち合いの末に相手を仕留めたのは、ジーパンの方でした。もちろん、狙ったのは根来の肩。もしミリタリーポリス22口径でなければ急所に当ててしまったかも知れません。
「お前の勝ちだ……おい、オレを殺してくれ。頼むよ。オレにはベッドの上で安らかに死ねる権利は無いんだ」
「……オレはあんたを、病院に連れて行く」
根来はもしかすると、初めてジーパンと出逢った時から「最期はこいつに撃たれて死のう」と決めてたのかも知れません。だからしつこく「心臓を狙え」って……
数日経って、ジーパンはボスから根来の訃報を聞かされます。ジーパンに撃たれたからじゃなく、すでに末期まで進んでた癌による病死でした。
「根来は、ベッドの上で死ねるのを喜んでたそうだ」
そしてボスは、本庁から正式に許可を得て貰い受けた、アレをジーパンに渡します。
「行って来い。根来の供養にもなる」
「はい」
ジーパンが向かった先はもちろん、いつもの射撃訓練場。これから殉職するまで愛用することになるミリタリーポリス22口径で、相変わらずマン・ターゲットの肩を撃ち抜くジーパン刑事なのでした。
拳銃を持つことを拒否し、ゴリさんを激怒させて始まったジーパン刑事の成長ストーリー。自分が丸腰だったせいでシンコが撃たれ、初めて自らの意志で拳銃を手にした事件、そして初めて犯人を射殺した事件を経て今回、師匠と対決し、勝利したことでジーパンはほぼ刑事として完成されたように思います。
こうして振り返ると、ジーパンはゴリさん以上に、拳銃とは切っても切れない関係のキャラクターですよね。誰も殺したくないっていう気持ちはゴリさんより強いかも知れません。
その割に殉職編では暴力団員たちを豪快に射殺しまくってたけどw そりゃチーフプロデューサーの岡田さんが激怒するワケです。こんなに丁寧に育てたキャラクターが台無しやん!って話ですから。
それで天罰が下ってジーパンは殺された、と解釈するしかありませんw
ところで、任期2年目になって欠場することが増えたシンコ=関根恵子さんだけど、今回はしっかりご登場。庶務係の久美ちゃん(青木英美)とWヒロインで花を添えてくれました。
藤堂チームに女性レギュラーが2人いるのは『太陽にほえろ!』の長い歴史の中でも、このジーパン期だけ。しかも2人ともミニスカート!
後のアッコやナーコ、そしてマミー刑事にはイマイチ色気が……でしたからw、そういう面でもジーパン期はスペシャルな感じがします。この当時はまだ、刑事ドラマはどちらかと言えば男の子向けだったんですよね。
これはマジで傑作です。数ある『太陽にほえろ!』GUNアクション編の中でも、私はこれがBEST1じゃないかと思ってます。
このエピソードのどこがそんなに優れてるのか、具体的に検証しながらレビューしたいと思います。
☆第442話『引金に指はかけない』
(1981.1.30.OA/脚本=小川英&土屋斗紀雄/監督=鈴木一平)
スニーカー(山下真司)が非番の日、妹から頼まれて預金に行った銀行で、強盗事件に出くわしちゃいます。賊は覆面を被った3人の男で、そのうち2人は拳銃、1人はライフルを所持しており、対して非番のスニーカーは丸腰なもんで手が出せません。
ところが、よく見ると拳銃を持ったヤツは(暴発を避けるため)引金に指をかけてない。チャンス!とばかりに飛びかかったスニーカーだけど、あえなくライフル男に頭を殴られて卒倒!
しかもそのライフル男、現金を奪って目的は果たしたというのに、貸付課長の山口(山中康司)をわざわざ射殺して逃走しちゃう。
スニーカーが目撃した以上の事柄を踏まえ、藤堂チームは山口課長に恨みを持つ人間を洗い出すことから始めるんだけど、そこからは何も浮かばず捜査は難航し……
先に結論を書きます。ライフル男の正体は、山口課長とはいっさい関わりの無い片桐竜次だった! じゃあ、なぜ片桐竜次は、何の恨みも無い山口課長をわざわざ殺したのか?
その答えは、全く無関係な相手を殺すことで捜査を撹乱させる為。なんちゅー非道かつ冷酷で狡猾な輩なんだ片桐竜次! 強盗仲間は無意味な殺生をしないよう引金に指をかけてなかったのに!
しかも片桐竜次は、奪った金を独り占めする為、強盗仲間を2人とも殺しちゃうんだけど、1人は車でわざわざニ度轢きし、もう1人はナイフで何十箇所も刺して息の根を止めるという残忍さ。
それだけでも充分異常なのに、片桐竜次はさらに、仲間から奪った拳銃で現場近くにいた野良犬まで射殺してしまう!
本エピソードの素晴らしい点、その1。この血も涙もない片桐竜次の徹底した殺人マシーンぶり! つまりどんな相手でも躊躇なく殺しちゃうヤツが敵だから、俄然アクションに緊張感が生まれる。
しかも、片桐竜次がなぜそんなマシーンになって、わざわざ犬まで殺しちゃうのか、ちゃんとした理由が設定されてる点もまた素晴らしい! 裏付けがあることでリアリティーが生まれ、それが更に緊張感を増してくれるワケです。さて、その理由とは一体何なのか?
ここで中盤の見せ場。検問に引っ掛かった片桐竜次が警官を射殺して車で逃走、いち早く駆けつけたスニーカーとドック(神田正輝)の覆面パトカーが追跡します。
そしてハンドル操作を誤った片桐竜次の車が横転! しぶとくライフルを持って逃走する竜次を追ってドックとスニーカーが激走!
ここで片桐竜次が再びやらかします。なんと、通りがかりの老人にライフルの銃弾を浴びせ、刑事たちがそっちに気を取られたスキに逃げるという鬼畜ぶり!
だけどスニーカーも負けてません。100メートルくらい先を走る片桐竜次に狙いを定め、愛銃COLTパイソン357マグナムを発砲! 見事、竜次の左腕に傷を負わせます。
利き腕の右なら尚よかったけど、4インチのリボルバーでこの距離なら当たっただけでも奇跡でしょう。ただしボス(石原裕次郎)はかつて、飛行中で激揺れのヘリコプターから、300メートルぐらい先の山小屋に立て籠もる清水健太郎の眉間を1発で、しかもパイソンより命中精度が低そうなローマン4インチで撃ち抜いたけどw
残念ながら片桐竜次を見失ったスニーカーだけど、ヤツに傷を負わせた事が後に、捕獲へと繋がる大きな役目を果たす事になります。
それはなぜか? 藤堂チームの捜査により、片桐竜次は「RHマイナスAB型」という、かなりレアな血液型の持ち主だった事が判明。そしてその血液型こそが、竜次を鬼畜たらしめた大きな要因だった!
つまり、あまりにレアな血液型ゆえ、もし出血多量の重傷を負った時、すぐに輸血が出来ないかも知れない。だから竜次は野良犬まで射殺したワケです。もし咬まれて出血したら生命に関わるかも知れないから。そして……
「不利なハンデを背負わされた自分には、人間も犬も殺す権利がある」
それが平気で人を殺せる理由だろうと刑事たちは推理するのでした。
「冗談じゃない! 誰だって色んなハンデを背負って生きてるんだ!」
怒るスニーカーにボスが言います。
「喚いてるヒマがあったら、ヤツの行動の先を読め」
そう、スニーカーが放った弾丸により傷を負った片桐竜次は今、それがかすり傷だとしても生命の危機を感じてる筈。必ず病院に輸血を頼みに行くに違いない!
他人の生命は平気で奪うクセに、自分が死ぬのは怖くてたまらない超自己チュー人間、その名は片桐竜次! 一晩ガマンはしたものの、朝になってたまらず町医者に駆け込み、ライフルで脅して輸血を強要。もちろん血液センターにRHマイナスAB型の血液が要請され、そこに網を張ってた藤堂チームが町医者へ急行!
本エピソードの素晴らしい点、その2。謎解きは手際よく前半で済ませ、ここからラストまで怒涛の追跡劇をノンストップで見せる、このシンプルさ! もちろん、理由その1(リアリティーと緊張感)のお膳立てがあればこそシンプルでいられるワケです。
さあ、ここから『太陽にほえろ!』史上……いや、日本のアクションドラマ史上屈指とも言える追跡&銃撃シーンが展開されます。
本エピソードの素晴らしい点、その3。片桐竜次という名の狂犬を閑静な住宅街へ逃げ込ませるというシチュエーション設定の秀逸さ!
これが繁華街ならすぐパニックが起きてメチャクチャになるけど、昼下がりの住宅街だと人もまばらだし、誰も平和な町でライフルを持った片桐竜次が眼を血走らせながら向かって来るとは夢にも思わない!
しかも当時は、まだ子供たちが公園や道端で(親がついてなくても)ふつうに遊べた時代。自分が逃げ切る為なら通りがかりの老人でも平気で撃っちゃう狂犬が、もし子供や買い物帰りの主婦を見つけてしまったら……!
つまり刑事たちは、ただ犯人を追うだけじゃなく、出くわしてしまった全ての市民をライフルの凶弾から守らないといけない。その緊張感たるや! これぞ本物のスリルとサスペンス!
そして本エピソードの素晴らしい点、その4。臨場感満点のカメラワーク! 例えばこの、片桐竜次を追って激走するスニーカー、ドック、ロッキー(木之元 亮)を、ゴリさん(竜 雷太)が覆面パトカーで追い抜いて行くシーン。
カメラはわざわざ、走る刑事たちを車内から、運転するゴリさん越しに捉えるんですよね! こういう撮影はすごく手間がかかるんだけど、このカットがあるのと無いのとじゃ我々視聴者が味わうライブ感が全然違って来る。
直後に展開する銃撃戦も、鈴木一平監督はものすごく丁寧に演出されてるんですよね。タイトなスケジュールゆえ常に時間に追われてるTVドラマの撮影で、この丁寧さは異常とも言えるかも? 素晴らし過ぎる!
片桐竜次は通りがかりの親子連れや新聞配達員を狙ってライフルを乱射しつつ、だだっ広い駐車場を抜け、遊園地の跡地へと逃げ込みます。
刑事たちもそのつど市民をガードしながら、鉄壁のチームワークで何とか食らいつき、いよいよ壁際まで竜次を追い詰めます。
この場面も、片桐竜次と刑事たちの位置関係がよく判るよう、あらゆるアングルからカットを重ね、実に丁寧に撮影されてます。それが臨場感を生むんですよね!
他のアクションドラマ、例えば『西部警察』の銃撃戦シーンを観ると、やたら銃をぶっ放す刑事や悪党たちのバストショット(寄りの画)ばかり続いて、誰が誰を狙って撃ってるのか全然判んないから凄い大雑把に感じちゃう。
黒澤明監督の『七人の侍』がアクション映画の教科書みたいに云われるのは、戦いが始まる前の作戦会議シーンで、わざわざ見取り図を使って戦場の地形や敵・味方の配置を我々観客に把握させたりする丁寧さがあったから、だと思うんですよね。
昨今のアクション映画って、スピードと勢いだけは凄いんだけど、画面で何が起こってるのかよく判んないことが多いですよね? 演出が雑なんですよ!
その点『太陽にほえろ!』のアクション演出はすごく丁寧。必ず引きの画を入れて人物の位置関係を我々に把握させてくれる。それが臨場感を生むワケです。
閑話休題、いよいよクライマックス! せっかく片桐竜次を追い詰めたところでタイミング悪く、小学生の子供2人が何も知らずに遊びに来てしまう! それを竜次が目ざとく見つけてしまった! あかん、絶対殺される!!
「オレが行きますっ!!」
スニーカーが飛び出し、ロッキーとドックが援護射撃!
ここで鈴木監督は、S&W M59を連射するドックを右サイドから、つまりオートマチック拳銃がブローバックして空薬莢を排出する様が一番よく見えるアングルから据え、しかもドック越しに走るスニーカーとゴリさんまでワンショットで見せてくれる! こんなのTVドラマで観たこと無い!
もはや丁寧を飛び超えマニアックとも言える演出で、これは恐らく相当なガンマニアであろう神田正輝さんの提案が活かされたと推察します。
そもそも当時はまだ、テレビのアクション物で使うプロップGUN(小道具のピストル)は電気発火が主流で、ブローバックが見られること自体が珍しかった時代。MGCモデルガンのM59が快調に動いてくれたお陰もあるにせよ、これはホントに画期的な演出だったと思います。素晴らしい!
さて、再び閑話休題。お互いの銃口が触れ合う距離まで片桐竜次に迫ったスニーカーは、決死の覚悟でこう言います。
「撃つなら撃て。お前が撃てばオレも撃つ!」
「オレは死なんかも知れん。すぐに輸血が出来るからな。しかしお前は確実に死ぬぞ」
『ダーティハリー』1作目の犯人=スコルピオンは本物のサイコパスだったから、似たようなシチュエーションでハリー刑事を撃とうとし、マグナム44であえなくぶっ殺されたけど、しょせん片桐竜次は死ぬのが何より怖いフツーの人間でした。あっさりライフルを捨て、毛むくじゃらの刑事に手錠を掛けられます。
やれやれ、何とか死人を出さずに済んだ……安堵したゴリさんが、ふとスニーカーを見て驚きます。
彼が構えるCOLTパイソンの引金には、指がかかっていませんでした。
「スニーカー……」
「……殺したくなかったんです」
ちょっと前の事件で初めて犯人を射殺したトラウマもあろうけど、スニーカーはきっと片桐竜次も「人間」であると信じたんでしょう。
このエピソードだけは何回観ても飽きません。こんな話をもっともっと創って欲しかった! 銃弾1発を極めて重く扱う『太陽にほえろ!』ならではの傑作だと思います。
ただ1つだけ残念なのは、あの緊迫した銃撃戦においてあのゴリさんが、なぜか最後まで拳銃を抜かなかったこと。これは不自然!
警視庁屈指の射撃の名手であるゴリさんが銃を抜いたらすぐに解決しちゃうから? あるいはゴリさん用のプロップGUNを小道具さんが忘れちゃったとか?
なんにせよ、ゴリさんがこの時だけ銃を使えない理由を設定して欲しかったです。途中で左腕を撃たれちゃったけど、だったら利き腕の右にしとけば明快な理由になり得たのに! ホントここだけはよく解んない。なぜ!?
まあ、そんな些末なことがすこぶる残念に思えるくらい、作品のクオリティーが抜群に高かったって事です。スニーカー刑事は不遇なキャラだと云われがちだけど、このエピソードで主役を張れただけでも充分報われたんじゃないでしょうか?
あの『太陽にほえろ!』が未成年のセックス問題を取り上げた!? セックスセックス!? と、たったそれだけのことで話題になった1981年新春一発目のチョメチョメ話。
セックスを匂わせる表現すらタブーにして来た永遠の童貞番組『太陽にほえろ!』が、一体どんなセックスを描いたと言うのか!? セックスセックス!
えっ? ボス(石原裕次郎)が!? あのボスがチョメチョメを? しかも女子高生とチョメチョメ!?
☆第439話『ボスの告発』
(1981.1.9.OA/脚本=小川英&古内一成/監督=山本迪夫)
事の発端は、向井という男子高校生(岸 正明)が、3人の輩たちにフルボッコにされ重傷を負った傷害事件。
藤堂チームが動き出し、被害者の向井と、病室で彼に付き添うガールフレンドの辻本美奈子(白石まるみ)に犯人の特徴を尋ねるんだけど、なぜか2人ともマトモに答えてくれない。明らかに何かを隠してる。
そこで普段は電話番のボスが急に張り切りだして、スナックでバイトする美奈子に身分を隠して接近し、店で弾き語りをする彼女に歌のレッスンを施して油断させ、チョメチョメしたかどうかは不明だけど心を開かせ、事件の真相に迫ります。
どうやら、1年前に美奈子の親友だった女の子がチンピラに「乱暴」され、父親の訴えで立件されたんだけど犯人が「合意の上だった」と主張した為、彼女は何度も繰り返し警察や法廷に呼ばれ、恥ずかしいあんな事やこんな事をさんざん尋問された挙げ句、高架から線路に飛び込んで自殺しちゃった。
「警察なんかに訴えなきゃよかった……」
自殺する前日に、彼女が電話で洩らしたその一言が、美奈子を警察不信にさせたワケだけど、それが今回の事件とどう繋がってるのか?
恐らく、また似たような事件、つまり女子が輩に「乱暴」される事件が美奈子の身辺で起きた。だから自殺した親友の轍を被害者に踏ませないよう、真相を隠してるんじゃないかと刑事たちは推理します。
再び美奈子に接近したボスは、半月前に泉(青木 純)という同級生が大学生に「乱暴」された事実を巧みに聞き出します。
それで美奈子は空手の有段者である向井にボディーガードを頼み、犯人の親に慰謝料を請求した。恐らく向井はその報復あるいは見せしめで、犯人に雇われた輩たちにフルボッコにされた……という流れ。
これでいきさつは分かったものの、一番知りたい犯人の正体は不明のままで、それを聞き出すにはもはや、ボスも本当の身分を明かすしかありません。
「汚い……汚いわ!」
ボスが示した警察手帳を見て、美奈子は態度を一変させます。そりゃそうですよねw 嘘をつくなら最後までつき通さなきゃ! だけどそれが出来ないのがボスであり『太陽にほえろ!』という番組なんです。青春ドラマなんです。
とにかく真相が判った以上、今回の件を単なる傷害事件で済ませるワケにはいきません。半月前に泉を「乱暴」した大学生を捕まえ、それ相応の罰を与えなきゃならない。
だけどそれを実行するには、まず当事者である泉に証言してもらわなきゃいけません。
「お願いだから泉をそっとしといてあげて! 今さらイヤなこと思い出させることないでしょう?」
刑事たちが半月前の事件を調べ始めたことを知り、美奈子は一係室にまで怒鳴り込んで来ました。
「そんなことより犯人の親から金を取るようなことはやめなさい。恐喝になるぞ」
「そんなことあなたに関係ないでしょう!?」
美奈子に何と言われようと、ボスは捜査続行の意志を曲げません。
「なんで!? どうして罪の無い女の子を傷つけるの !?」
そこがこういう事件の一番難しいところ。チョー生真面目番組『太陽にほえろ!』は、果たしてどんな回答を示すのか?
ともかく捜査は進み、向井をフルボッコにした三人組は連行され、取調べにより黒幕は宮島(田中 隆)という大学生であることも判明します。つまり半月前に泉を暴行したのも宮島に違いありません。
ここまで判れば、あとは泉の証言を取るだけ。ゴリさん(竜 雷太)とスコッチ(沖 雅也)の真摯な説得により一時は口を開きかけた泉だけど、それを全力で阻止したのは美奈子でした。
「ダメ! 何も喋っちゃダメよ、警察ってすっごい汚い手使うんだから!」
「ありゃあ徹底抗戦のかまえだなあ……」
美奈子のガード役を任されたドック(神田正輝)がボヤきますが、常にクールなスコッチが今回もクールに決めます。
「むしろ辻本美奈子の方が心配だな。張り詰めた糸は切れやすい」
その台詞、オレが言いたかった!って、横にいるゴリさんは思ってるに違いありませんw
さて、こんな時こそ頼りになるのが山さん(露口 茂)です。まず説得すべきは美奈子の方だと判断した山さんは、なぜ泉を傷つけてでも犯人を逮捕すべきなのか、今回のエピソードの核心=レイプ被害者に対する『太陽にほえろ!』からのメッセージをここで代弁します。
「向井くんを襲った三人組は、我々に対しても実に平然としていた。なぜだか分かるかね? キミらが決して警察に訴えないことを知ってるからだ」
「!!」
「友達を傷つけた犯人は、きっとまた同じことを繰り返すだろう。どこの誰とも知れないその犠牲者を救う道は1つしかない。犯人を逮捕することだ。解るね?」
「……解りません! 解りたくありません! 私、これ以上友達の苦しむ顔、見たくありません!」
なんと! あのいぶし銀=山さんの説得まで突っぱねてしまう女子高生、その名は辻本美奈子! むしろ天晴です!
そんなワケでドックたちの尾行をかわし、慰謝料をふんだくるべく犯人の宮島と接触した美奈子は、当然のごとく輩たちに囲まれ、あわやレイプ被害者の仲間入りを果たすことに……
「お前はさ、何をしたってサツには訴えないからさ。気に入ってんだよ、うひひひひ」
もちろん、宮島の父親(根上 淳)を説得して隠れ家を聞き出したボスにより、空手有段者の向井をフルボッコにした強者たちは瞬殺されます。
「たたっ、助けてくれ! か、金か? 金なら払うから!」
そんな陳腐な決まり文句をほざくレイプ魔=宮島も、ボスの必殺ばかもんパンチで宇宙の彼方へと飛んで行きます。
「間に合って良かった」
「怖かった……でも、襲われたのが私で良かった……私で良かった!」
そう言って胸に飛び込んで来た美奈子を抱きしめたボスは、決して「そんなに襲われたいのかうひひひひ」とか「おいおい、本番はこれからじゃないかうひひひひ」なんて言ったりはしません。
劇中では「レイプ」とか「強姦」といった言葉はいっさい使われず、ゲストの白石まるみさん演じる美奈子自身はレイプ被害者じゃなかったりする点に甘さを感じなくはないけど、これが『太陽にほえろ!』で可能な限界ギリギリの表現でしょうから、あえてタブーに踏み込んででも伝えたかった作者のメッセージを、我々は真摯に受け止めるべきかと思います。
白石まるみさんは#408『スコッチ誘拐』に続いて2度目のゲスト出演。以後も#560、#617、#629と番組終盤まで度々ご登場、このブログでも『誇りの報酬』#03や『あさひが丘の大統領』#25等のレビューに登場されたお馴染みの女優さんです。