ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#439

2021-12-06 16:40:45 | 刑事ドラマ'80年代

あの『太陽にほえろ!』が未成年のセックス問題を取り上げた!? セックスセックス!? と、たったそれだけのことで話題になった1981年新春一発目のチョメチョメ話。

セックスを匂わせる表現すらタブーにして来た永遠の童貞番組『太陽にほえろ!』が、一体どんなセックスを描いたと言うのか!? セックスセックス!

えっ? ボス(石原裕次郎)が!? あのボスがチョメチョメを? しかも女子高生とチョメチョメ!?



☆第439話『ボスの告発』

(1981.1.9.OA/脚本=小川英&古内一成/監督=山本迪夫)

事の発端は、向井という男子高校生(岸 正明)が、3人の輩たちにフルボッコにされ重傷を負った傷害事件。

藤堂チームが動き出し、被害者の向井と、病室で彼に付き添うガールフレンドの辻本美奈子(白石まるみ)に犯人の特徴を尋ねるんだけど、なぜか2人ともマトモに答えてくれない。明らかに何かを隠してる。

そこで普段は電話番のボスが急に張り切りだして、スナックでバイトする美奈子に身分を隠して接近し、店で弾き語りをする彼女に歌のレッスンを施して油断させ、チョメチョメしたかどうかは不明だけど心を開かせ、事件の真相に迫ります。

どうやら、1年前に美奈子の親友だった女の子がチンピラに「乱暴」され、父親の訴えで立件されたんだけど犯人が「合意の上だった」と主張した為、彼女は何度も繰り返し警察や法廷に呼ばれ、恥ずかしいあんな事やこんな事をさんざん尋問された挙げ句、高架から線路に飛び込んで自殺しちゃった。

「警察なんかに訴えなきゃよかった……」

自殺する前日に、彼女が電話で洩らしたその一言が、美奈子を警察不信にさせたワケだけど、それが今回の事件とどう繋がってるのか?

恐らく、また似たような事件、つまり女子が輩に「乱暴」される事件が美奈子の身辺で起きた。だから自殺した親友の轍を被害者に踏ませないよう、真相を隠してるんじゃないかと刑事たちは推理します。



再び美奈子に接近したボスは、半月前に泉(青木 純)という同級生が大学生に「乱暴」された事実を巧みに聞き出します。

それで美奈子は空手の有段者である向井にボディーガードを頼み、犯人の親に慰謝料を請求した。恐らく向井はその報復あるいは見せしめで、犯人に雇われた輩たちにフルボッコにされた……という流れ。

これでいきさつは分かったものの、一番知りたい犯人の正体は不明のままで、それを聞き出すにはもはや、ボスも本当の身分を明かすしかありません。



「汚い……汚いわ!」

ボスが示した警察手帳を見て、美奈子は態度を一変させます。そりゃそうですよねw 嘘をつくなら最後までつき通さなきゃ! だけどそれが出来ないのがボスであり『太陽にほえろ!』という番組なんです。青春ドラマなんです。

とにかく真相が判った以上、今回の件を単なる傷害事件で済ませるワケにはいきません。半月前に泉を「乱暴」した大学生を捕まえ、それ相応の罰を与えなきゃならない。

だけどそれを実行するには、まず当事者である泉に証言してもらわなきゃいけません。



「お願いだから泉をそっとしといてあげて! 今さらイヤなこと思い出させることないでしょう?」

刑事たちが半月前の事件を調べ始めたことを知り、美奈子は一係室にまで怒鳴り込んで来ました。

「そんなことより犯人の親から金を取るようなことはやめなさい。恐喝になるぞ」

「そんなことあなたに関係ないでしょう!?」

美奈子に何と言われようと、ボスは捜査続行の意志を曲げません。

「なんで!? どうして罪の無い女の子を傷つけるの !?」

そこがこういう事件の一番難しいところ。チョー生真面目番組『太陽にほえろ!』は、果たしてどんな回答を示すのか?

ともかく捜査は進み、向井をフルボッコにした三人組は連行され、取調べにより黒幕は宮島(田中 隆)という大学生であることも判明します。つまり半月前に泉を暴行したのも宮島に違いありません。

ここまで判れば、あとは泉の証言を取るだけ。ゴリさん(竜 雷太)とスコッチ(沖 雅也)の真摯な説得により一時は口を開きかけた泉だけど、それを全力で阻止したのは美奈子でした。

「ダメ! 何も喋っちゃダメよ、警察ってすっごい汚い手使うんだから!」



「ありゃあ徹底抗戦のかまえだなあ……」

美奈子のガード役を任されたドック(神田正輝)がボヤきますが、常にクールなスコッチが今回もクールに決めます。

「むしろ辻本美奈子の方が心配だな。張り詰めた糸は切れやすい」

その台詞、オレが言いたかった!って、横にいるゴリさんは思ってるに違いありませんw

さて、こんな時こそ頼りになるのが山さん(露口 茂)です。まず説得すべきは美奈子の方だと判断した山さんは、なぜ泉を傷つけてでも犯人を逮捕すべきなのか、今回のエピソードの核心=レイプ被害者に対する『太陽にほえろ!』からのメッセージをここで代弁します。



「向井くんを襲った三人組は、我々に対しても実に平然としていた。なぜだか分かるかね? キミらが決して警察に訴えないことを知ってるからだ」

「!!」

「友達を傷つけた犯人は、きっとまた同じことを繰り返すだろう。どこの誰とも知れないその犠牲者を救う道は1つしかない。犯人を逮捕することだ。解るね?」

「……解りません! 解りたくありません! 私、これ以上友達の苦しむ顔、見たくありません!」

なんと! あのいぶし銀=山さんの説得まで突っぱねてしまう女子高生、その名は辻本美奈子! むしろ天晴です!

そんなワケでドックたちの尾行をかわし、慰謝料をふんだくるべく犯人の宮島と接触した美奈子は、当然のごとく輩たちに囲まれ、あわやレイプ被害者の仲間入りを果たすことに……

「お前はさ、何をしたってサツには訴えないからさ。気に入ってんだよ、うひひひひ」



もちろん、宮島の父親(根上 淳)を説得して隠れ家を聞き出したボスにより、空手有段者の向井をフルボッコにした強者たちは瞬殺されます。



「たたっ、助けてくれ! か、金か? 金なら払うから!」

そんな陳腐な決まり文句をほざくレイプ魔=宮島も、ボスの必殺ばかもんパンチで宇宙の彼方へと飛んで行きます。

「間に合って良かった」

「怖かった……でも、襲われたのが私で良かった……私で良かった!」

そう言って胸に飛び込んで来た美奈子を抱きしめたボスは、決して「そんなに襲われたいのかうひひひひ」とか「おいおい、本番はこれからじゃないかうひひひひ」なんて言ったりはしません。



劇中では「レイプ」とか「強姦」といった言葉はいっさい使われず、ゲストの白石まるみさん演じる美奈子自身はレイプ被害者じゃなかったりする点に甘さを感じなくはないけど、これが『太陽にほえろ!』で可能な限界ギリギリの表現でしょうから、あえてタブーに踏み込んででも伝えたかった作者のメッセージを、我々は真摯に受け止めるべきかと思います。

白石まるみさんは#408『スコッチ誘拐』に続いて2度目のゲスト出演。以後も#560、#617、#629と番組終盤まで度々ご登場、このブログでも『誇りの報酬』#03や『あさひが丘の大統領』#25等のレビューに登場されたお馴染みの女優さんです。


 

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