通常管理の桑は、春先根元から切り取られ、新芽から育った葉を収穫する、この新芽に実はつかない。
梅雨の季節、傾斜地で樹木のように大きく育てられた桑の木に、野鳥や子供が喜ぶ桑の実が色づく。
黒くなれば食べられる、指先で触れるだけで落ちるのは完熟でその旨さは格別だった。
果汁で紫色に染まった口の中や唇は、時間とともに褪せるけれど、衣服に付いた色彩は褪せることがなかった。
学校帰り、いつもの場所で桑ズミ(桑の実)を漁っていると、熟れた一つが新しい白シャツの胸ポケットに転がり込んだ。
気が付いたとき、鮮やかなムラサキ色が掌ほどに広がっていた。
今時 桑ズミを好むのは野鳥と、一部の高齢者だけ
国語の教科書に桑の実と子供の情景が載っていたように思う。
桑の木登りをする子供を叱った父親が後日、外国の桑の実ジャムを買ってきたというような話だった。
桑の木の梢
タチアオイが咲くころでもある。