深緑の一角から浮き出すように栗の花が咲いた。
今更ながら森に栗の木が多いことに気づかされる。
以前 秋の楽しみの一つに栗拾いがあった。
拾うのは小粒の山栗である。
集めた身を蒸して干すと、小石のように固くなる、固皮をむくと、渋皮と実が分離している。
実を口に入れると、唾液が浸み込んで少しづつ柔らかくなる。その甘さに惹かれた。
遠山の栗花
もう気が遠くなるほど昔、母に連れられて里山に栗拾いに行った、母の茶飲み友達と一緒だった。
母の背中には弟だったかか妹が背負われていて、その子が突然咳き込んだ。
風に吹かれた落ち葉を口に入れてしまったらしい。それから後が面白い。
両袖口を紐で縛って小さな手が出ないようにしたのである。
多分六歳ごろの記憶だと思うが、鮮明に思い出す。
紐状に咲く栗の花
瓦と沙羅