医師のアドバイスで家内が養命酒を飲むことにした。
養命酒は、幼少の頃、祖父が「長生きの薬や」と言って飲んでいたことを思い出す。かすかに残る祖父の面影が浮かんできた。明治初期の生まれだった祖父は、「生まれたのが2月30日、今は暦にないので誕生日がない」と笑いながら母が言っていた。祖父も「誕生日がないので歳取らん。」などと言っていた。今にして思えば、陰暦の誕生日を勘違いしていたんだと思う。若い頃は大阪・泉南の紡績工場に勤めていたらしく、粋な帽子をかぶり、ステッキをつき、人力車に乗って颯爽と田舎に降り立ったと母に聞いたことがある。いつも、縁に座り、柔和でニコニコしながらキセルでタバコをふかしていたことを思い出す。そんな祖父は86歳で天国に行った。50回忌も終わった。
そんなことを思い出させてくれた養命酒、いつもの店に買いに行き、お酒のコーナーを探し回ったが見当たらないので店員さんに聞くと、ドラッグフロアーへ案内してくれた。ヘー、養命酒ってお酒じゃなくて薬? とビックリ。値段も、お酒の大吟醸並みでビックリ。成分をみて、またビックリ。アルコール度が14%なんてお酒と同じやんか。違うのは、漢方薬のような成分名がギッシリ載っていること。養命酒って、アルコールと漢方薬が入った薬用酒のことだった。
祖父を想い出させてくれた養命酒、家内だけでなく自分も毎日、20mlを飲み始めた。孫達に「これ、長生きの薬や」と言って飲めば、代々、孫達の心に受け継がれていくのも知れない。