『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第10章  アキレスとヘクトル  11

2008-02-09 08:42:24 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アキレスは、ヘパトスから、出来上がったばかりの絢爛の軍装を受け取った。鎧をまとい、兜を頭につけた。そして、昇りくる朝日を仰いだ。プリセイスの捧げ持つぶどう酒の大杯を受け取り、うやうやしく朝日に掲げたあと、半量を大地に注いだ。ヘパトスの捧げ持つ、燦然と輝く楯を手にとるや、左手に持ち、帯剣を引き抜くや、高くかざし、今日の戦いの勝利を誓約した。凛としたその声は、朝のしじまを裂いて響いた。
 ヘパトスは感動した。アキレスの軍装に精魂を打ち込んだ夜を徹しての労苦が報われた。大杯にあるぶどう酒を二人で飲み干した。あの母にして、この子。ヘパトスは、瞼に焼き付けた。無事帰国したときには、この話をと、心に情景を描き収めた。
 パトロクロスなきあとアキレスは、将兵の中から三人を選び副官としていた。儀式のあと彼等のうちの一人を呼び、アガメムノン、ネストル、オデッセウスに伝言を、あとの二人には、将兵たちに朝食を済まさせ、軍団の編成、陣立てをするように指示した。アキレスの率いる軍団の兵数は、参戦時には5000人を数えていたが、今日に到る10年間の間に4000人に減っていた。1000人に及ぶ将兵が、このトロイの大地に露となって消えていたのである。