『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第6章 クレタ ４８

　『なあ～、オキテス、これ見てくれ、この塵、ホコリだ。この浜小屋使ってはいないな』
　『そうだな、ここ半年は使った様子がない。このホコリのたまり具合から見てその感じだ』
　『ギアス、調査点検の要領、判るな』
　『判ります』
　『よし、できるだけ数をこなそう。オキテス、やれるだけ覗いてみよう』
　『心得た。ギアス、行くぞ』
　三人は、手分けして小屋、住居であったと思しき建物をかたっぱしから覗いて回った。半年以上、使われてはいない、全てがそのようであった。
　『統領に軍団長、建物は、ここ半年以上使われてはいない状態です』
　『そうか、この集落は人が住んでいないということか』
　『そのようです』
　『判った、引き揚げようか。おう、オロンテス、畑地の状況はどのようだ』
　『このうえなく荒れていますね。収穫できるものもありますが、ものの数ではありません。微々たるもんです。しかし、畑地はすぐ使おうと思えば使えますね。手入れさえすれば、すぐ種をおろせます』
　『そうか、判った。引き上げるぞ』
　彼らは小一時間くらいかけて調査を終えた。イリオネスはギアスに指示を出した。
　『ギアス、島へは上陸しない。出来るだけ岸に近い距離を保って、島を一巡りだ。それが終われば帰ろう。いいな』
　一同を乗せた舟艇は浜を離れた。