『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ２８

　『テカリオンの話のうまさは、ここなんだな。ひとつは雑談の中にかくれているポイントをうまくつかんで、的に向かってくるところだ。もうひとつは、嗅覚だ、お前は匂いにとても敏感だ。パリヌルス、話すときはだな、言葉を選んで気をつけて話すことだ』
　『何か匂いますな。ご両人、何かをかくしていますね』
　『ほうっ！テカリオン、どんな匂いだ？肉の焼ける匂いか、はたまた、魚か。そろそろ、めしの時間だ』
　『あ～、例の『方角時板』大層な人気です。あの道具のために貴方がたをを追って、急拠、エーゲ海を南は向かってきたのですよ。判ってくださいよ。この私の苦労も。私もエーゲ海沿いについては詳しいのですが、あの不思議な鉄棒のありどころがわからない。そういうことです。そうだ、もうひとつ、オキテス殿。あなたの部下たちが言っていましたよ、隊長がこの航海で何か変わったものを風に差し向けていたといっていましたよ。それは何です？それ？話してくれてもいいんじゃないのですか』
　『お前、どこで、そんな話を聞きこんできたのだ。それは何かの勘違いだよ』
　『お～っ！顔色が変わりましたね。何かありそうですな。かくしておく、それは身のためによくないのではありませんか』
　『おっ、パリヌルス、俺の顔色変わっているか？』
　『いや、ちっとも変っていない』
　そういった会話を交わしているところへオロンテスが連絡に姿を現した。


　＊5月31日の投稿で欠字の間違いをやりました。お詫びいたします。
　　欠字訂正箇所は、本文12行目です。
　　
　　よきトナリ組ではありませか　　を　　よきトナリ組ではありませんか
　　
　　訂正いたします。　　　　山田　秀雄