『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ２９

　『お～お、皆さん。めしの準備ができました。テカリオンどの、行きましょう。それから、あとから聞いておきたいことがあります。よろしく頼みます』
　『判りました。オロンテスどの心得ました。なんなりと、話はあとでたっぷりとうかがいます。さあ～、皆さん、一緒にまいりましょう』
　テカリオンはパリヌルスらのほうへ身体を向けて、『ご両人、如何です。オロンテス殿のこの謙虚さ、ちいーと見習っては』
　『一緒にだと、テカリオン。一緒には、まいるな。身に危険を感じるね。パリヌルス、大丈夫かな』
　『私は、戦士ではありません。見ての通り、丸腰ですよ』
　『オキテス、ガッチリ、鎧をまとって、テカリオンの横にいようではないか。ハッハッハ』
　彼らは歩みながら雑談を交わした。
　アヱネアスとイリオネスは浜頭連と連れ立って、めしの場に向かっていた。
　一同が座につく、まさに、古代の野辺焼きスタイルの食事の場である。彼らが手にしている酒杯は、地面に突き刺して立てるツノ型の酒杯である。
　イリオネスが立って、話し始めた。
　『ご一同、今日は、はなはだご苦労様でした。ささやかではありますが、一同で夕食を楽しみたいと思います。統領お願いします』
　『ご一同、今日は、いろいろと世話になりました。我々は、これで建国への第一歩が踏み出せる。皆さんとともに、一献っ、飲み交わしたい』
　アヱネアスは、一同と目を合わせて、感謝の意を伝えた。一同は、拍手をもって、これに答えた。