パリヌルスは、首を傾げて言葉を継いだ。
『それはまた、面妖な、魔性の物体ですな。そのようなものが、どうして軍団長の手許にあるのか。多いとは言いませんが少ないとはいいがたい量、いや本数を持っていられたわけですが、もし、聞かせていただけるものでしたら、お聞かせください』
『そうか、聞かせろでもいいように思うが、今、ここにいる我々のうちで、あのものの存在理由を知っている者が三人だけいる。いや、俺を入れれば四人といったほうが正しいかな。統領の父のアンキセス、アカテス、統領、そして、俺自身の四人だ。他の者で知っている者はいない。もし、知っているとすれば、その関係についてであって、それ以上のいわく因縁を知っている筈がないのだ』
『私がそれを軍団長から聞かせてもらえるとなると五人となるわけですね』
『まあ~そういうことだ。俺はお前に聞かせるとはまだ言ってないぞ。早合点はいかん、パリヌルス。俺は少々迷ってもいる』
『失礼しました、お許しください。聞かせていただけるようでしたら、何卒聞かせてください』
『判った。そうもったいをつけることでもない。まあ~、特別にかくしておくことでもない、いつかは誰かが明らかにすることでもある。聞き手がパリヌルスだ、知っていてくれていい』
『ありがとうございます』
ここでイリオネスは、星のまたたく空を見あげて大きく息を吸い込んだ。誰にも言っていなかったことである。また、語る機会もなかったことであった。
『では、パリヌルス始めよう』
イリオネスはやや緊張気味であった。彼は身構えて話し始めた。
『我々が住み暮らしていたあのトロイ、あのトロイが、あの地に築砦して城市を形成して1500年のときが流れている。それはどうしてだと思う?その1500年の間に6回に及んで城、城市が焼かれ、再建が不可能と思われるくらいに壊滅している。しかしだ、やられるたびに6回も再建復興している。それはどうしてだと思う。いかにトロイが富を持った裕福な城市であったかということである。判るかな。6回も再建復興するたびに建設する城市をより立派なものにしてきたのだ。それはトロイを統治する領主の王の力であり、王を支える王の側近の力でもあったのだ。それくらいにあのトロイの地は、富を生む地でもあったのだ。パリヌルス、のどが渇くな、ちょっと楽にしていろ。酒でもとってくる』と言って座を離れていった。
話が中断した。パリヌルスは考えた。1500年という気も遠くなるような長い年月の間に壊滅の状態から6回にも及ぶ再建復興を繰り返したトロイの城市に思いをはせた。
『それはまた、面妖な、魔性の物体ですな。そのようなものが、どうして軍団長の手許にあるのか。多いとは言いませんが少ないとはいいがたい量、いや本数を持っていられたわけですが、もし、聞かせていただけるものでしたら、お聞かせください』
『そうか、聞かせろでもいいように思うが、今、ここにいる我々のうちで、あのものの存在理由を知っている者が三人だけいる。いや、俺を入れれば四人といったほうが正しいかな。統領の父のアンキセス、アカテス、統領、そして、俺自身の四人だ。他の者で知っている者はいない。もし、知っているとすれば、その関係についてであって、それ以上のいわく因縁を知っている筈がないのだ』
『私がそれを軍団長から聞かせてもらえるとなると五人となるわけですね』
『まあ~そういうことだ。俺はお前に聞かせるとはまだ言ってないぞ。早合点はいかん、パリヌルス。俺は少々迷ってもいる』
『失礼しました、お許しください。聞かせていただけるようでしたら、何卒聞かせてください』
『判った。そうもったいをつけることでもない。まあ~、特別にかくしておくことでもない、いつかは誰かが明らかにすることでもある。聞き手がパリヌルスだ、知っていてくれていい』
『ありがとうございます』
ここでイリオネスは、星のまたたく空を見あげて大きく息を吸い込んだ。誰にも言っていなかったことである。また、語る機会もなかったことであった。
『では、パリヌルス始めよう』
イリオネスはやや緊張気味であった。彼は身構えて話し始めた。
『我々が住み暮らしていたあのトロイ、あのトロイが、あの地に築砦して城市を形成して1500年のときが流れている。それはどうしてだと思う?その1500年の間に6回に及んで城、城市が焼かれ、再建が不可能と思われるくらいに壊滅している。しかしだ、やられるたびに6回も再建復興している。それはどうしてだと思う。いかにトロイが富を持った裕福な城市であったかということである。判るかな。6回も再建復興するたびに建設する城市をより立派なものにしてきたのだ。それはトロイを統治する領主の王の力であり、王を支える王の側近の力でもあったのだ。それくらいにあのトロイの地は、富を生む地でもあったのだ。パリヌルス、のどが渇くな、ちょっと楽にしていろ。酒でもとってくる』と言って座を離れていった。
話が中断した。パリヌルスは考えた。1500年という気も遠くなるような長い年月の間に壊滅の状態から6回にも及ぶ再建復興を繰り返したトロイの城市に思いをはせた。
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