第１２章 攻略 １

　パリスが逝ったあとも、前夫メネラオスのもとにも行けず、、ヘレンはトロイにいた。今度は、パリスの弟のデイポポスが、第二夫人として彼女を自分の館に引き入れた。ヘレンは、侮辱を感じた、そして、大きく傷ついた。　『この私を何だと思ってんのよ。兄弟でたらいまわしにしやがって！』　と、彼女は、心の中に憤りの核を持った。しかし、しぶしぶではあったが、今の立場では、この運命を受け入れるより他はないとあきらめた。
　連合軍は、再び　ネオプトレモスやピロクテテスの軍団を中心に、トロイ攻城戦に差し向け、戦闘に及んだが、トロイの城壁を破ることは敵わなかった。
　オデッセウスの今度のトロイ城市内への潜入は長かった。彼は、７日間も城市内をうろつきまわった。生死をかけた苦肉の策ではあるが、トロイ攻略の作戦案が出来上がった。彼はイメージした光景を野宿のまどろみの中で見た。それはつかの間であった。トロイ城市が紅蓮の炎で燃えている、逃げ惑う市民、斬り倒されていく将兵、地獄絵図であった。敵の地内にあって出来上がった作戦計画であった。難攻不落が落ちる、喜ぶには早いが、彼の心は欣喜雀躍した。彼は、急ぎトロイをあとにした。