『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ６

　『このクレタ、東西に長いこの島の東、クノッソス(現在のイクラリオン)を中心に文明も交易も盛んであったらしい。それがミケネ人、まあ～、スパルタ人だが、奴らが統治するようになってから荒れてきているらしい。奴らは海賊顔負けの荒っぽさで植民してポリスをつくっていくからな』
　『東地区の島民も楽ではなさそうですな』
　『それやこれやで、東から西地区に人が流れてきているらしい、目立ってはいないそうだが』
　『お前や俺が、多方面に知恵を絞らなければならない事態となって来るやもしれん』
　『そうですね。判りました』
　話が切れ目にさしかかった。そこへパリヌルスら三人が連れ立って姿を現した。
　『おはようございます』
　『おはよう。おはようの刻はすぎてはいないかな。陽の高さを見てみろや、まあ～、そうでもないか。アッハッハ』
　イリオネスは笑いながら『おはよう』を返してきた。それにつれてアヱネアスも笑いながら『おはよう』を返してきた。
　『テカリオンがまだ来ていませんね。いい具合だ。奴が来る前にちょっと話しませんか』
　『そうだな交易について、我々の考えをまとめておいたほうが、よし、そうしよう』
　『いいですね。備えよ常にです』
　集まった五人のベクトルが力と方向を示してきていた。