『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  33

2009-09-02 07:48:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『アレテス、どうだ。奴ら来なかったな。お前はどう思っている。今日、敵情を探ってほしい。この地を踏むのは、お前にとって初めてであろう。浜頭連との話し合いのあと、直ちに行動してくれ。お前の腹心2名、土地の者1名を連れて行くのだ。いいな。この土地について説明しておく。我々が上陸した地点から、北へ約8キロの地点、エブロス川のほとりに集落(現在のエネズあたり)がある。住民は400人余りの集落だ。そこから、さらに北東へ7~8キロのところに大きな湖(現在のGALA湖)がある。その湖の南東に低い山地が広がっている。その山のふもとにポリメストルの砦がある筈だ。探ってくれ。言葉は、トロイ言葉でも充分だと思うが気をつけろ。あ~あ、それから、山地の東は、広い湿地帯だ、トロイ城市の広さより、はるかに広い、その方向に足を踏み入れることは、はなはだ危険だぞ、気をつけるのだ。いいな。じゃ、頼んだぞ。』
 話は終わった。アレテスは、深く考えて頷いた。
 市民とその女房連総出で、船から降ろした有り合わせの食材で朝餉の準備を整えた。昨夕の宴の広場にしつらえた食事場であった。一同、安堵感のある雰囲気の食事時を過ごした。

第2章  トラキアへ  32

2009-09-01 07:20:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテス、カピュス、アミクスの部隊は、深夜の敵襲に備えて、警戒の任を担当し、闇の中で部署に着いた。
 朝告げの鶏鳴が浜の家々の庭から聞こえてくる。朝の曙光が東から平野を朱に染めてくる。短い夏の夜が明けた。
 予想した敵襲はなかった。彼らが異国の地で迎える朝に、戸惑いと不安を感じていた。目覚めた市民たちが集まってきた。集まった彼らが何かを話し合ってるようである。彼らは迷わなかった。衆議一決、行動を開始した。朝の食事の準備に取り掛かったのである。
 アエネアスは、ユールスと父を見やり、起き上がった。敵襲がなかった。彼は、その何故について、考えを巡らせた。浜頭連との話し合い、エノス地方の事情の詳細を知ることによって、それは明らかになることであり、襲撃のなかったことを何よりとした。
 アエネアスは、アレテスを探した。アレテスは、昨夜から、敵襲の警備に当たっていた。
 『おっ!アレテス、ご苦労。変わりがなかったようだな。何よりだ。』
 『あっ!統領、おはようございます。』
 『アレテス、ちょっと話したい、歩こう。』
 アエネアスは、アレテスを伴って、広場のはずれにある小高い丘の上に歩を運んだ。