『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1266

2018-04-16 07:07:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、パリヌルス!帰ってきたぞ!』
 オキテスが建造の場に姿を見せる。
 『おう、オキテス早いではないか。何があった?』とパリヌルス。
 パリヌルスは、建造の場のオキテスの席で計画立案の作業に没頭している。2ヶ月先までは、おぼろげながらも先を読んでいる、3,4ヶ月先となると霧の中である。
 脳漿が空になるのではないかと思うくらいまでに絞る、建造計画艇数をはじき出して該当箇所に書き記していく。
 『おう、パリヌルス、今日はキドニアでいろいろなことがあった。いうなればいいことづくめといったところだ。まずは朗報といったところだ。建造計画案だが、どんな具合だ?』
 『おう、建造計画艇数については、目途をつけた、骨子はできている。それを時系列的に組あげれば建造計画の立案完了だ』
 『お前はさすがだな!先を読むということについては、俺らが及ばないところを歩いている。お前の言う計画の骨子の時系列的組あげが確実となる情報を持って帰ってきている。それについて話す』
 『おう、それはいい情報、いいタイミングだ!聞かせてくれ』
 『それがあるから急いで帰ってきたというわけだ。記念売り出しの件だが、売り出し催行の日程が決まった。それからマリアの集散所からの引き合いの件だが、注文主の意向を伝えてきた。そういうことだ』
 『オキテス、今、お前の言ったことで建造計画案が妥当性のあるものになる。その件を説明してくれ!船の建造計画案は9月から12月までの4か月の期間にわたって考えている』
 『記念売り出しは、10月の初めにスタートして、1か月から1か月半にわたる長期間となるであろうと考えられている。マリア集散所からの引き合いの2艇は戦闘艇に決まるといっている』
 『おう、解った。グッド、グッドだ。9月の計画は適合している!』
 『その戦闘艇の納入を持って記念売り出しをスタートさせることになっている』
 『その件、了解した。船の売れるを考えれば、今後の船の建造を戦闘艇にウエイトをおいて考えねばならないといった状況になるな』
 『売り出し催行に関する行事計画とその実行は当方に一任するということになっている』
 『記念売り出し催行の実行が我が方に一任か、それはいい、自由度が大きいということはいいことだ。オキテス!』
 『いい結果を得ることのできる計画、それの実行だな』
 『実行に関する予備思考として、クレタ島の10月の天候について、スダヌスに聞いておくことだな』
 『もう一件、知らせておくことがある。キドニアでガリダに会った。明後日にここへ来る』
 『それはタイミングがいい!グッドタイミングだな!願ったりかなったりではないか』
 『いいタイミングで物事が進み整っていく!』
 『我々の事業が好循環で順調うまくいく!兜の緒を締めていこうぜ!オキテス!』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1265

2018-04-13 08:14:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ガリダとの話し合いが終わる、スダヌスが声をかけてくる。
 『おう、オキテス、集散所との話が動いているな?』
 『おう、その通りだスダヌス。集散所の新しい計画が動き始めた。それに加えてだな、あの引き合いの話がまとまりかけている』
 『おおっ!そうか。いいじゃないか、重畳!重畳!』
 『浜頭が力を貸してくれた営業航海が実を結びかけている。話はそれとは関係がないが、今月の末にレテムノンに出かける用事だできるかもしれない。その時には連絡する』
 『おう、それはその時に言ってくれ、また考える。集散所の新しい計画とは、どのような計画だ?話せるのなら聞かせてくれ』
 『おう、その計画はだな、集散所にとっても初めての試みらしい。俺らの造っている船の売り出しだ』
 『何っ!船の売り出し。初めて耳にする』
 『キドニアの集散所とマリアの集散所が手を結んで船を売りだす計画だ。計画の詳細は、これからだが10月の初めに計画実行をする予定でいる』
 『ほう、それは壮大な計画だな。オキテス!俺でよければ手を貸す、いや、ぜひ、俺に手伝わせてくれ』
 『浜頭ありがとう。その時は、力を貸してくれと頼むかもしれない』
 『了解、了解!承知した』
 スダヌスは、笑みを浮かべて二つ返事をする。
 一同の昼めしが終わる。スダヌスの売り場の者がアレテスの用済みを伝えに来る。
 『おう、オキテス、アレテスの用件が終わったと言っている』
 『おう、ありがとう』
 オキテスがオロンテスに声をかける。
 『オロンテス、俺はこれで帰る』
 『おうっ!』
 『ガリダ頭領、いやあ~、とっても旨かった!馳走になりました。明後日の件、よろしく頼みます』
 『おう、解っている』
 『ではーーー』と言って、オキテスとスダヌスが場をあとにする、スダヌスの売り場にはアレテスが待っている。
 『おう、アレテス、ごくろう。俺を乗せていってくれ』
 『解っています、行きましょう』
 『浜頭、では、これにて』
 『おう、オキテス!今日はありがとう』
 オキテスが右手をあげて振る、スダヌスの売り場をあとにする、オキテスとアレテスの二人は船だまりの岸壁へと歩を運ぶ、オキテスがアレテスに話しかける。
 『なあ~、考えてみると世の中ってうまく動いていくものだなとつくづく思う。人間という生き物は利口な生き物だ。お前、そうは思わんか』
 『思います』
 『その人間が生きていくことに知恵を絞ってあれやこれやと生きている。発展する知恵もある、そうかと思えば、途絶える知恵もある。それが引き継がれて時代が連なっていく』
 『そうですね』
 『我々がその役目のなかで船に関することを背負って生きている』
 『言われることが解ります。私も考えることがあります。魚の獲りかたも変わる日が来ると考えています』
 『そうか、魚の獲りかたか、面白い、それは面白い!アレテス、いつになるかわからんが、時間を作って語り合おう。お前と共有する考え事する。やろうな』
 二人は、岸壁に着く、アレテスのキドニア通いの舟艇に乗る、帰途に就いた。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1264

2018-04-12 08:39:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 四人は広場の木陰を選んで陽射しを避ける一隅に場をとる、タブタが持参した食材を場に広げる、酒の準備もある。
 オキテスが声をかける。
 『スダヌスに言伝てしてすぐ戻る!』
 『おう、オキテス、スダヌスとも久しい。連れてきてくれ』
 『おう!』
 間をおくことなく、スダヌスを連れてオキテスが戻る。
 『おう、ガリダ!元気そうだな、何より、何より、結構このうえなしだ。昼めしに声をかけてくれてありがとう』
 『おう、何の、何の!久しぶりに顔を見る。俺は、元気、元気!昼めし一緒にやろうや』
 『おう、喜んでだ!馳走になる』
 スダヌスが持参した魚が場におかれる、オロンテスも持ってきたパンを場におく、タブタが酒杯を手渡す、酒を注ぐ。
 ガリダが場を見まわす、うなずく。
 『一同元気に顔を合わせた。乾杯!』
 一同が酒杯を合わせ、口に運ぶ、飲み干す、空になった杯にタブタが酒を注ぐ、一同の昼めしがスタートする。
 『スダヌス!この魚はなんだ?デカさもいい!』
 『これから旬になる魚だ!あれこれ考えずに塩を振って口に入れろ!』
 一同が串に刺されて焼かれた魚に手を伸ばす、塩を振る、噛みつく。
 『おおっ!うまい!絶品、絶品!』
 一同から感動の声が飛び出す、彼らは目線を交わしながら食べる飲むに専念する。
 久しぶりだといいながらも話題に乏しい、スダヌス、ガリダがオキテスに話を振ってくる。ガリダがオキテスと目線を合わせる。
 『おう、オキテス、何かいい話がないか?』とスダヌスが問いかける。
 ガリダも声をかけてくる。オキテスがガリダに伝えたい用件を持っていることを察したらしい。
 『おう、オキテス、何か言いたいことがあるのなら言ってくれ』
 『おう、ガリダ頭領、今は多忙な時期かな?』
 『そうでもない』
 『そうか、実はだな、話したい用件があるのだが、俺が頭領の館を訪ねるか、頭領が浜に来てくれるかのどちらかで話し合いたい。話は急ぎの話と考えてくれればいい』
 『ほう、急ぎの話か』
 『俺の都合で俺が浜を離れることができない。浜に来てくれるのであれば、船便をこちらで仕立てる』
 『よっしゃ!いいだろう!お前の話に乗る!俺がお前の浜に行く。ウチの奴らの顔も見てやりたい。泊まりの予定で行く。明後日に船便を都合してくれ』
 『解った。そのようにする。明後日の朝、岸壁に待機させる』
 『解った。了解した』
 ガリダは、オキテスからの用件を快諾した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1263

2018-04-11 08:42:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、オロンテス、売り場を整え終えたら集散所との話し合いにいく』
 『おうっ!』
 売り場が整う、オロンテスが夏のフルーツをミックスして焼き上げたパンを手にして集散所の詰め所へと二人で向かう。
 ハニタスが出入り口に立って迎えてくれる。
 『おう、ご両人!おはよう、いい朝です』
 『おはようございます、いい朝です。新しく焼き上げたパンです、賞味してください』
 『新しく焼き上げたパン、どんな趣向ですかな?』
 『いい味、香りの旨いパンです』
 『ほっほう、遠慮なくいただきます』
 一同が話し合いのテーブルにつく、トミタスが飲み物と先ほどのパンに包丁を入れて持参する、話が順を追って展開していく、スムースに事が決まっていく。
 ハニタスが改まって口を開く。
 『昨日ですが、マリアからいい知らせが届きました。引き合いされていた船が戦闘艇に決まりそうです』
 『そうですか、それはいい知らせです。ありがとうございます。軍団長が喜びます』
 『この船の引き渡しをもって、売り出しの口火をきることになるやもしれませんな』
 『解りました。我が方としても、そのことに想いを馳せて業務に励みます。ありがとうございます』
 集散所との話し合いが午前中に終わる。
 新艇の価格が決まる、戦闘艇完成記念売り出しの日程も決まる。この二件に加えて、マリア集散所からの船の引き合いのその後の動向が伝えられる。
 『おう、オロンテス、今日の話し合い我々にとって、いいことづくめであったな。建造計画、売り出し計画、それらの計画立案に有効な内容であった。出来れば一時も早く帰りたい!アレテスの昼便で帰る』
 『そうか、了解した』
 二人がパン売り場に帰ってくる。
 『オキテス隊長、客人が待っていられます』
 二人が驚く、オキテスの口から声があがる。
 『おうっ!ガリダ頭領!』
 『おう、ご両人!久しいのう、相変わらずかな?』
 『おう!見ての通りだ、相変わらずだ。統領も元気そうだ、何よりだ!』
 ガリダが進み出る、ガキッとオキテスの肩を抱く、一呼吸して目を合わせる。改めてオキテスを引き寄せる。
 次いで、オロンテスと目を合わせる。
 『いつも世話になっている、ありがとよ!』と言って、オロンテスの肩を引き寄せて抱く。
 三人が言葉を交わしてるところにタブタが姿を見せる。
 『おう、来た来た!タブタうまくいったか?』
 『はい!うまく揃いました』
 『おう、ご両人!準備ができた。一緒に昼めしと行こう!広場でやろう』
 オキテスがうなずく、オロンテスと目を合わせる、オロンテスがパンを手に持つ、四人は広場へと向かった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1262

2018-04-10 08:32:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが沖合に舟艇の姿を見てほどなく浜に舟艇が着く、オロンテスらが艇を下りてくる。
 『おう、オロンテス、ごくろう。今日は帰りが遅かったな』
 『パリヌルス、気にかけていてくれたのか。今日は、いろいろと集散所での仕事がてこずってな、帰りが遅くなった。待っててくれたのか。ありがとう、感謝感謝だ!』
 『俺も少し前に仕事のきりがついたところだ』
 オロンテスが同行の一同に声をかける。
 『おう、一同!今日は仕事の都合で遅くなった。無事に帰り着いた、ごくろうであった。身体を休めてくれ。明日はヘルメス艇でキドニアに向かう。漕ぎかたを担当してくれた一同は休日とする。以上だ』
 オロンテスの帰りに気づいたギアスが姿を見せる。
 『オロンテス隊長、ごくろうです!明日のキドニア行きはヘルメス艇ですね』
 『おう、そうだ!オキテス隊長も明日はキドニア行きだ。明朝は、いつもの浜で出船の荷積みをする。いいな』
 『了解です。待機いたします』
 『おうっ!』
 彼らの打ち合わせが終わる。パリヌルスがオロンテスに声をかける。
 『オロンテス、軍団長は宿舎の方だ。行こう、オロンテス』
 『おうっ!』
 二人はイリオネスの宿舎に向かって歩き始める。宵が二人を包み始めている。
 
 クレタ島の8月は天候が落ち着いている。今日も抜けるような青空である。射しかけてくる強い陽光、走行に程よい西からの風、ヘルメスは波を割ってキドニアを目指す。
 艇上の二人、オキテスとオロンテスが話し合っている。
 『おう、オロンテス、会議の日を明日に繰りあげた。船の売り出し計画、見込む結果を予測して建造する造船数を決めて建造用材の手配をしなければならない!そのようなわけで会議の日程を早めて、明日、朝から午前中、会議をやることに決めた。オロンテス、スケジュールをそれに合わせてほしい』
 『明日、会議をやるということだな。解った』
 『会議が終わったら、午後完成した戦闘艇2艇のテスト構想を行う。明日はそのように段取りしている。よろしく頼む』
 『解った!』
 『オロンテス、話をする、聞いてくれ』
 二人が目線を合わせる。
 『今な、仕事が好循環で展開している。喜ばしいことだと感じている。昨日のことだが、戦闘艇2艇の出来あがり具合をチエックした。その結果だが、チエック項目の多さに比べて、認めた不具合が少なかった』
 『いいじゃないか、それはいいことだ』
 『俺ら、船舶の建造に携わっている者らの建造の技術、能力が向上した結果と考えている。重畳と言ったところだ、喜んでくれ』
 『そうか、それはよかった。喜ばしいことではないか』
 『そう、感心してくれるか、ありがとう!建造を担当している俺として、その結果を喜んでいる』
 話し合っている間にヘルメスは、キドニアの船だまりに着く、パン売り場の今日がスタートした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1261

2018-04-09 08:31:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスとオキテスの話し合いが続く。
 『パリヌルス、ところで、俺の明日は集散所での打ち合わせだ。新艇の引き渡し価格の決定の件もある。そこでの頼みだ、先を読んでの艇の建造計画案を練りあげてほしい。なお、会議日程を22日に繰りあげたことについては、キドニアへの道中でオロンテスに伝えておく』
 『解った。集散所提案の売り出し計画でどのように艇が売れるか、まったくわからない。集散所にとっても初めての企画だろう。いかなる結果になろうとも我が方には、それを受け入れる余裕がある。その心配をする必要は全くない』
 『お前、余裕だな。お前の余裕が心強い、しかと、わきまえた』
 『オキテス、今の俺らには、いかなる状態にも対応するに充分な能力がある。期にのぞんで思う存分に対処していってくれ』
 『解った。お前には強さがある!集散所との話し合いの落としどころは心得ている』
 『お前は、謙虚でありながら、物事の遂行力がずば抜けている。そのうえ、結果にミスが少ない』
 話し合っている二人にイリオネスが声をかけてくる。
 『おう、お前らまだ話し合っているのか』
 『いえ、もう終わります。何か用事でも?』
 『おう、戦闘艇のチエック作業も終わった。オキテス、お前の明日は?』
 『はい、私の明日は、集散所で話し合いと打ち合わせです』
 『パリヌルス、お前は?』
 『私ですか、私の明日は、明後日の会議に提案する建造計画案の立案です。それに戦闘艇のテスト航走の準備です』
 『解った。明後日の会議において話し合う建造計画案だが、その立案にお前の智謀ありだ。始計第一、脚下照顧だ。己を知って、想を練り計を立てるだ』
 『解りました』
 『統領と俺は宿舎へ引きあげる。あとを頼む』
 オキテスが声をかける。
 『おう、パリヌルス、もう終業の頃だ。建造の場の者らに戦闘艇のチエック結果を伝えて、チョッピリだが、奴らを誉めてやりたい。俺はそちらに行く』
 『おう、オキテスご苦労だった。俺も引きあげる』
 二人は互いのいく先へと歩を運ぶ。
 彼らの浜が今日を終わろうとしている、パリヌルスは歩を運びながら考える。
 『今日のオロンテスらの帰りが遅い!天候も落ちついている。海にも荒れがない。オロンテスの帰りをここで待ってやろう』と独りごちて浜に立つ。
 海を眺める、陽が海に身を沈めていく、月が東にのぼり始める、海は凪いでいる。
 かなた東方の海上に見慣れた舟艇の姿を見とめた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1260

2018-04-06 08:07:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人が一心不乱の心姿勢でチエック作業に取り組んでいる。
 作業が進む、現代に比するとはなはだ稚拙である、計測機器など存在していない時代である。
 勘に頼ったチエック作業である、彼らとしては、それでも彼らの水準に基づいてチエックすべきをチエックする。
 浜では、アエネアスとイリオネス、建造作業に携わった者らが注意深く彼らの作業を見つめている。
 三人がそれぞれに考えたチエック項目を木板に書き付けてチエックしている、三人は照合し合う。チエックに抜けがないかを確かめ合う。
 オキテスが声をかける。
 『おう、パリヌルス、いいのではないか?』
 『おう、では、チエックの仕あげといくか。三人でチエック作業を進める』
 彼らは、三人態勢でチエック作業を進めていく、意見が絡む、話し合う。
 一艇の帆柱の建て具合に不具合を発見する、チエックもれがないようにと心配りをしながら作業を進める、最終段階に到る。
 漕ぎかたら全員を櫂座につかせてのチエックへと進む、艇の沈み具合、それに伴う喫水の深まり、考えられる操舵効果等、綿密に計画したチエック作業を終える。
 三人が協議に及ぶ。話し合いが終わる。
 『ドックス、いいな、そういうことだ。不具合を修正して、2艇を完成させてくれ』
 『解りました』
 『明後日には、修正箇所の修正を確認してテスト航走を行う』
 三人はアエネアスとイリオネスに報告し話し合う。
 『おう、チエック作業が終わったな。修正を終えて戦闘艇2艇の完成か、君ら、ごくろうであった。このあと、テスト航走を終える、テカリオンを待って、引き渡しだな』
 『はい、そうです』
 『パリヌルスとオキテスにたずねるが、この2艇の引き渡しに関して、集散所との関係はどのようなはからいをしている?』
 この問いかけにパリヌルスが答える。
 『はい、この件については、テカリオンの建造意図、そして、私らの建造に関する考え方、それはテカリオンからの試作建造の請負と言えます。そのような理由により集散所は関係せずの取引となります』
 『解った、了解した』
 『そのようなわけで価格の決定に配慮いただければ幸いです。検討よろしく願う次第です』
 『パリヌルス、その件了解する。会議の折に話し合う』
 『解りました』
 漕ぎかたら、作業員らが力を合わせて戦闘艇2艇をドックスの指示に従って建造の場の作業位置に揚陸作業をしている、丁寧な仕事運びで作業を終える。
 オキテスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、出来あがった戦闘艇だが、チエック項目の多さに比べて修正箇所が少なかった。重畳といえる。作業に従事した作業員らの建造技術、作業能力が向上したのかな?』
 『結果が示しているように、その両方が向上したと見るのが正しい。いい傾向ではないか、喜ばしいことだ』
 『そうだな、お前の言うように、喜ばしい!ドックスの関与結果でもある』
 二人は手を握り合う、目線を交わす、チエックの結果を話し合い、うなずき合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1259

2018-04-05 08:07:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜に集う彼ら一同の目線が2艇に集まる、その姿に見とれる、均整のとれた姿形、海上を駆ける姿を彼らに想像させる。
 パリヌルスら三人のチエックが始まる、航海に使う船舶である、機能美、船としての均整のとれた姿形であらねばならない。
 新艇に比べて船の長さが長い艇体である、その艇体に対応した帆柱の高さが設定され備えられている、それに加えて帆の面積の拡大も意図された帆柱の高さである。
 艇の構造と艇重を考慮してより速い船速を目論んでの帆柱の高さである。今のところその構造効果については不明である。
 パリヌルスは、その目論見がいい結果であってほしいと強く念じている。戦闘艇の船速が走行安定性を保持しての速さの実現に心配りをしていたのである。
 それが売りの結果に通じると考えている、まさに薄氷を踏む、慎重さで設計、建造した2艇である。
 その結果が判明するのが、明後日のテスト航走であると気を引き締めて、海に艇体を浮かべた戦闘艇を見つめる。
 パリヌルスはチエック項目を書き記した木板を手にしている。新艇を造りあげた頃を思い浮かべ戦闘艇と比べる。端的に言えば、走行性能を向上させた戦闘艇である。
 艇を求める使用者側の要望、艇を販売する集散所側の要望を考慮しての建造である。また、このようであるべきであるとする建造する側の要望等、広範囲に及ぶ要望を集約して建造完成した戦闘艇である。
 チエック項目が多岐となることを否めるわけにはいかない。それだけに船舶としての完成度を高めて完成させた戦闘艇である。非の打ちどころのない船であってほしい。
 古代のこの時代、もの造りに対する考え方が、時代にふさわしい水準に進歩している。
 この事業を進めるアエネアスらの船舶の建造技術水準は、他の造船事業に携わる者らより抜きん出ていたと考えられる。
 この戦闘艇2艇の発注者が交易商人のテカリオンである。彼の未来志向の船舶であり、その試作意図で完成を見た戦闘艇2艇である。
 パリヌルスがこの時代に知られた船舶設計のナレッジをもって配慮、駆使して設計する。オキテスが建造管理能力を駆使して造作作業を進める。ドックスが卓抜した建造思考と技術、建造マインドをもって造船する。この三人とアエネアスとイリオネスが事業推進思想と意思を持って事にあたる。
 この五人が持てる能力を余すところなく駆使して、交易商人テカリオンの未来志向でもって完成させた戦闘艇であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1258

2018-04-04 08:01:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼めしが終わる、午後となる。
 建造の場にゾクゾク人が集まってくる、パリヌルスらが目論んだメンバーが顔をそろえる、イリオネスの姿も見える、ギアスと漕ぎかたの一同が戦闘艇の周りに詰めている。
 オキテスがイリオネスに声をかける。
 『おう、オキテスなんだ?』
 『軍団長、ご苦労です』
 『改まっているな』
 『はい!少しばかり緊張しています』
 『緊張しなければ言えないことなのか?』
 『はい、報告が1件、願い事が1件、それから今日の午後、戦闘艇を海に出し、艇体を海に浮かべた状態のバランスチエックをします。明日の完成を見込んでの作業です』
 『よし!聞く』
 『まず報告の件です。昨日、打ち合わせでの指示の件です。出張しての新舵構造の取り付けですが、三人で検討しました。出来る出来ないではなく、やります!』
 『おっ!そうか、そうでなければいかん』
 『次は願い事の件です。今月も余すところ10日です。会議開催が24日ですが、2日早めて22日に開催していただきたいと考えています。9月の建造艇数を三人で検討しています。その建造する艇数に関係して、用材の手配、従業人員計画等を一時も早く手配すべきと考えています』
 オキテスの言い分を聞いたイリオネスは、一瞬考える、口を開く。
 『おう、お前の言うことを理解した。会議開催を22日にすることに異議はない。その開催、承知した。建造する艇数を売り出しのことも考えて三か月くらいのことを構想して計画するのだ。いいな!』
 『了解しました。なおーーー』
 『まだ、何か用件があるのか?』
 『はい、22日午後ですが、完成戦闘艇のテスト航走を行います。乗艇よろしく願います』
 『おう、そうか、完成したのだな。了解した。建造計画案は、22日の会議に間に合うな?』
 『はい、間に合います』
 『おう、オキテス、お前の申し入れ、全て了承!』
 『ありがとうございます。午後の戦闘艇のバランスチエック、軍団長もぜひ立ち会ってください』
 『おうっ!』
 イリオネスとオキテスが建造現場へと向かう。
 建造現場では、ギアスの指示に従う漕ぎかた、作業員らが力を合わせて、掛け声よろしく戦闘艇を海へと運んでいる、パリヌルス、ドックスがその作業に気を配っている。
 戦闘艇が海に艇体を浮かべていく、青い空、きらめく陽射し、吹き渡る快い海風、波たち騒ぐ海にその雄姿を浮かべる、浜に集う一同の目線が2艇に集まる、彼らは目を見張る、浜を震わせる喊声をあげた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1257

2018-04-03 08:52:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスの意欲に満ちた目線が二人の目線と会う、張りのある声をかける。
 『ところで建造に関する諸準備だが戦闘艇及び新艇の建造計画を会議までに立案作成しようと考えている。建造用材の手配、建造に携わる者らの動員計画等を考えなければならない。それらに関する段取りが先行する』
 『そうだな、オキテス。この件の下案を考えろ。それをもって、俺とドックスが加わって計画案を作成する。その手順でどうだ』
 『解った!いいだろう。いつまでに何をどのように為さなければならないか、工程表を作成して事にあたる。それをするにあたって、戦闘艇を何艇、新艇を何艇といった建造する艇数の決定をしなければならない』
 『その通りだ。会議開催を早めて決定すべきを決定する。軍団長に上申することだ。オキテス、今日午後一番の仕事だ。お前に任せる。俺は戦闘艇の海に浮かべる作業に張り付いている』
 『おう、了解した』
 ドックスがオキテスに声をかける。
 『オキテス隊長、今日の午後の予定を伝えます。戦闘艇2艇、仕上げの最終段階にあります。戦闘艇を海に出し、艇のバランスチエックをやります。立ち会ってください』
 『おう、解った!』
 『明日に完成させます。その後にテスト航走、それをもって完成の運びとなります。そのあとのことを決めておいてください』
 『おう、ドックス、出来あがったか。いいぞ!段取りを組む。パリヌルス、ドックスの話を聞いてくれたか。戦闘艇が完成する。待って待ち望んだ日だ!完成に向けての最終段階の作業、パリヌルス、よろしく頼む』
 『おう、心得ている。言わずとも解っている』
 パリヌルスが身体をドックスに向ける。
 『ドックス、ご苦労だったな。完成に向けての最終作業につきっきりでそばにいる』
 『よろしく願います。以上、私からの報告及び検討用件の伝達を終えます。両隊長、私、現場に戻ります』
 ドックスが現場に戻ろうとする、何を思ったか、立ち止まり、パリヌルスに話しかける。
 『あ~あ、パリヌルス隊長、ギアス艇長および漕ぎかた一同の建造の場への動員よろしく願います』
 『おう、解っている。午後いちに彼らは建造の場に来ることになっている』
 ついで、パリヌルスがオキテスに声をかける。
 『オキテス隊長、今日の午後は忙しいぞ!俺は持ち場に行く、午後は建造の場に張り付く』
 オキテスは『おうっ!』と応えてドックスのいる現場に足を向ける。
 完成を間近かにした戦闘艇2艇の姿がある。
 ドックスがオキテスを迎える、二人は連れ立って、戦闘艇の各部を丹念に見て廻る、目線を合わせる、うなずき合う、艇を離れた地点から観察する、艇の全体像を眺め観る。
 『おう、ドックス、申し分のない出来あがりだ。バランスの不均衡は考えられないが、浮かべてみないとわからない、喫水と舳先から艇尾に到る船べりから海面の高さを確かめる。そして、漕ぎかた全員を乗せた状態の正常性を確かめてほしい。新艇に比べて艇重が重い、想定した海面からの船べりの高さを十分にチエックしてほしい』
 『解りました』
 『なあ~、ドックス、戦闘艇が海上を波を割って走る姿を想像する!現実と想像が一致するかな?』
 『それは、想像と一致します』
 『そうかな、なればいい!』