つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

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テラハ事件を考えてみる(2)

2020-06-02 15:51:47 | 日記

前回は【1】制作サイドの責任を考えた。

今回は、

【2】スタジオメンバーである山里亮太さんやYOUさんたちの責任

を考えてみたい。

 

テラハを一度も見たことがない、という方のために簡単に説明しておくと、テラハは、番組側で用意したシェアハウスで生活する男女の出演者と、彼らの様子を見ながらスタジオであれこれコメントをするスタジオメンバーで構成されていた。

直近のスタジオメンバーは、YOUさん、トリンドル玲奈さん、山里亮太さん、馬場園梓さん、葉山奨之さん、徳井義実さんらだった。

ただ、徳井さんは昨年10月に発覚した税金の無申告問題で芸能活動を自粛しておられたから、今回の事件が起きたときにはスタジオメンバーとしての出演はなかったと思う。

 

木村さんが命を絶った後、当然のごとく、SNS上の匿名軍団たちの誹謗中傷攻撃はこのスタジオメンバーに向けられるようになった。

報道を見る限り、スタジオメンバーの中で最も激しく攻撃されているのは山里さんらしい。

彼のTwitterをみると、木村さんの死について山里さんの責任を問う声と、彼を弁護するファンの方々の声、応援する声が入り乱れている印象を受ける。

なので以下では山里さんを中心に、スタジオメンバーの責任について考えてみようと思う。

 

その前に一言だけ。

山里さんのTwitter上に匿名で彼を口汚く罵るコメントを寄せているすべての方々へ。

仮に、あなたたちの意見が正鵠を射ていても、なんの説得力もないから。

山里さんに言いたいことがあるなら、多勢の陰に隠れて、なおかつ匿名でごちゃごちゃ言ってないで正々堂々と言おう。

あなたたちがやっていることは、同じように匿名の誹謗中傷で追い詰められ命を落とした木村さんに対してさえ失礼だ。

 

で、山里さんの責任である。

もちろん、ある。

 

これでまた山里ファンから集中攻撃を(おそらく匿名で)受けるんだろうけど、あるものはある。

 

テラハを一度でも見たことがある人は分かると思うけれど、スタジオメンバーの中では山里さんが木村さんたち出演者を「毒舌」でこきおろす、YOUさんたちが面白がってそれを煽る、徳井さんが出演者たちを弁護する、とそれぞれに与えられた役回りがあった。

これ一つとっても「テラハには構成台本や演出があった」とわかりそうなもんなのだが、まぁ、それはさておき。

徳井さんが出演していたころは、毒舌コメントと煽りと弁護がそれなりにバランスを保っていた。

おかしくなったのは徳井さんが出演を見合わせるようになってからだ。

この頃から山里さんの毒舌が暴走するようになる。

YOUさんたちはなんのかんの言ったところで「外野の煽り役」にすぎないので、誰も山里さんを止められない。

「素人の若者たちの恋愛風景」をイジる役回りの山里さんが、いつのまにか単なるイジメ役になってしまっていた。

前回の記事にも書いたが、テラハはしょせん、ゲスな大衆の「のぞき見趣味」に迎合した品のない番組だ。

出演者たちをバカにし、否定し、嘲(ののし)る山里さんの毒舌コメントがそれに輪をかけた。

SNSで炎上しない方がおかしいだろう。

しかも、山里さんとYOUさんは、

「自分がゴーサインを出すまでは(SNSで炎上させるのは)待って」(山里さん)

「ゴーサイン出ますから、それまで待って」(YOUさん)

と、SNS上での出演者批判を認める前提に立ったトークまでしていた(発言の細部までは自信が持てないが、意味は間違ってないはず)。

 

山里さん擁護派の主張を要約すれば、

「山里さんがこのような抑止発言をしたことで逆に炎上を防いでいた」

「山里さんとしては『今はまだSNS上で誹謗中傷するときではない』と暴走しそうな視聴者を諫(いさ)めていた」

というものだ。

あばたもエクボ、牽強付会(けんきょうふかい)とはこのことか。

 

よく考えよう。

山里さんのこの発言は、

「いつかはSNS上で出演者をけちょんけちょんに叩いてもいいときがくる」

ことを前提にしている。

だからこそ、「(いつかは)自分がゴーサインを出す」のだ。

実際、山里さんは「マジ、ネットでたたきますから!」という発言もしている。

 

山里さんがどれほどの方なのかは知らぬ。

山里さんがご自身をどれほどの大物と勘違いされておられたのかも知らない。

しかし、この一連の発言を聞いたゲスな大衆が、

「おぉ!テラハは・・・、いや、少なくとも山ちゃんは『SNSで気に入らない出演者をけちょんけちょんにすること』を認めてるんだ」

と暴走する可能性があるとは思わなかったか?

テラハの視聴者はキリストと聖母マリアだけだとでも思っていたか?

それとも自分の煽りを真に受けて暴走するようなバカはいないと信じていたか?

あるいは、自分が「待て」と言えば、バカどもはそれに従うと本気で思っていたか?

自分の言葉に煽られたバカどもが暴走することなど微塵も考えなかったというのなら、山里さんたちスタジオメンバーは、この先、言葉を道具として芸能界で生きていく資格はない。

彼らはタレントですらない。

Talentには「才能」という意味もある。

自分の発する言葉がどのように解釈されるのか、その可能性を想像して言葉を選べない人間に「言葉芸の才能」があるとは私は思えない。

 

あと。

山里さん擁護派の主張には、

「番組の演出上、山里さんには出演者をイジる役回りが与えられていた。山里さんは自分に与えられた仕事に忠実だっただけだ」

というのもある。

実際、山里さんは出演者たちの弁護役である徳井さんがスタジオを去って以来、ご自身のコメントが行き過ぎてしまうことに危機感を覚え、徳井さん(のような役回り)の復帰を望んでいた、という。

笑止。

 

テラハには詳細な「台本」はなかったんだろ?

番組制作スタッフが山里さんに与えていたのは、「山里さんの芸風である(あった)『負け組の僻(ひが)み目線での毒舌コメント』を出演者たちに向ける」というもの以上ではなかったはずだ。

「毒舌コメント」「ひがみコメント」はいい。

そういう芸風も(私は大嫌いだが)ありだろう。

しかし、それを「お笑いの芸」にできるのは、「負け組」であり「僻んで世の中を見るだろう」と思ってもらえる人間だけだ。

お笑い芸人として成功し、自身のMC番組を複数抱え、美人女優とも結婚し、ようするに下世話な世間的評価からは「勝ち組」であり「負け犬どもから僻(ひが)まれる」側になった山里さんのコメントは、もはや「イジり」でも「毒舌」でもない。

それは「イジメ」であり、単なる「毒」でしかない。

 

山里さんの発言を聞いたり、彼のTwitterを拝見している限り、彼がバカだとはどうしても思えない。

なのに、何故、自分の芸風を軌道修正できなかったのか?

きっちりとした台本がないのであれば、制作スタッフの意向を踏まえつつ、自分の役回りから外れないようにしつつ、言葉を軌道修正できたはずだ。

天下のフジテレビ様の演出だろうと、徳井さんがいなくなったことによるスタジオメンバーのバランス崩壊に気づいていたのであれば、

「徳井さんがいない現状、従来の演出や役回りでは出演者たちに対する一方的な否定・イジメになってしまう」

と何故、声をあげられなかったか。

ダメなものはダメ。

人を傷つけてまで名声や金が欲しいとは思わない。

と何故、胸を張って言えなかったか。

 

成功体験が続きすぎて調子に乗ってはいなかったか。

天狗になってはいなかったか。

「誹謗中傷を受ける側」だったのなら、その辛さや苦しみを誰よりも知っているのなら、自分がそれを煽る側に立たざるを得なくなったとき、せめてカメラが回っていない場所で、2倍3倍のフォローを、あなたにイジメられ、誹謗中傷を煽られて苦しんでいる出演者たちにしてあげられなかったか。

山里さんだけではない。

スタジオメンバー全員が、番組スタッフの下劣極まる演出に異を唱え、是正させ、素人出演者たちを守る機会と力を持っていた。

なのに彼らはそれをしなかった。

 

何度でも言う。

彼らに責任はある。

 

それはプロフェッショナルなタレントとしての職業倫理上の責任だ。

だから責任の取り方は六法全書には書かれていない。

山里さんは、今回の事件について「一生考え続けます」とコメントされた。

足りない。

考えるだけではなく、二度と同じエラーをしないための行動を。

今度同じことがあったときは、相手がフジテレビの社長であっても、「だめです。そんな下劣な演出は受け入れられません。」と声をあげる勇気を。

匿名でしか人を攻撃できない、卑劣な意気地なしどもから第二の木村花さんを守るためには、考えて、勇気を持って行動するしかない。

 

プロフェッショナルなタレントとして木村花さんの死に責任を取り続ける、というのはそういうことだと思う。

次回は【3】誹謗中傷投稿をしていた臆病者たちの責任について考えてみる。

 

 

 



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