★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

スピカ望遠鏡の双眼計画その2

2023-06-27 06:00:00 | 双眼鏡・双眼望遠鏡
 前回のブログ記事 【 スピカ望遠鏡の双眼計画その1 】からの続きです。


 スピカ望遠鏡を双眼にするための部品が6月下旬に完成しました。

 金色の金属片6枚は、鏡筒補強用の0.5mm厚の真鍮板で、ボール紙製の鏡筒の平行調整ネジが当たる部分に貼ります。
 下のカラフルな4枚のプラスチック板は目幅微調整用のシムです。詳細は後述。
 


 双眼部品を組み立てました。持ち運びしやすいよう取っ手を付けています。
 左目の鏡筒を固定式に、右目の鏡筒を平行調整できるように対物レンズ側はオーソドックスな120度おきの3点支持、接眼レンズ側は調整がしやすいようバネを使ったXY調整方式(2点調整方式)にしてあります。


 これまで平行度や目幅が合っていない多くの双眼望遠鏡を見てきたことから、双眼スタイルを希望した横山さんには、
 ①目幅の合わせ方 ②平行度の合わせ方 ③像の傾きの合わせ方 についてアドバイスしました。

 ①の目幅調整については、目幅固定方式を採用したので本来は調整が不要なのですが、遠方瞳孔間隔(PD)の測定誤差や、人間が誰でも持っている多少の斜視の影響などを考慮し、目幅を微調整できるシムを用意しました。双眼視に慣れてくると、目幅の僅かなズレが気になってくるはずです。
 初期値は眼鏡店が測定したYさんのPDになるよう3mm厚のアルミ板を介していますが、0.5mm単位で変更できるように厚さ0.5mmシム(黒色)・厚さ1.0mmシム(水色)・厚さ1.5mmシム(黄色)・厚さ2.0mmシム(緑色)の4枚を用意しました。このシムは住宅建設用の万能パッキンを流用しています。

 ②の平行度調整については、特徴のある対象物をスピカ双眼鏡の視野内に導入し、平行視に慣れていない初心者は接眼鏡の見口から20cm以上目を離して覗きます。遠方を見るような感じで覗くと左右の像が一致しないことが殆どなので、右眼の平行調整ネジで一致するよう調整します。平行視に慣れてくると、接眼鏡の見口から目を離さずに調整できるようになります。
 なお、上下の調整は比較的簡単です。左右の目は上下の像のズレに敏感だからです。それに対し、左右のズレには鈍感です。なぜなら、目には輻輳という自然な動きがあり、近いものを見るときには自然に左右の目が寄り目になるからです。見口を遠くから見るようにすると輻輳が防げます。

 ③の像の倒れ調整については、天頂ミラーを併用するため、左右の天頂ミラーが同一平面上でないと、左右で像が傾く現象が発生します。そこで遠方の建物壁タイルやアンテナなどを覗き左右の傾きがないよう調整します。

 再度②と③の調整を繰り返して調整完了です。このように書くと難しいように感じるかもしれませんが、慣れると数分で調整が完了します。
 これくらいしないと、双眼鏡を長時間見るのは目に無理な緊張を強いてしまい、頭痛の原因になります。
 なお、①と②と③の調整は連動し、より正確な調整には時間と習熟が必要ですが、まずは試してみることが大事です。


 完成した双眼スピカ望遠鏡です。
 きちんと調整された双眼望遠鏡は、単眼よりも良く見えます。人間が眼球を2個持っていることの生理的なものが影響しているのでしょうね。
 特に、月や土星などは立体的に感じます。錯覚とはわかっていてもそう見えてしまうのが不思議です。横山さん、双眼ライフを楽しんでくださいね。


◆ 参 考 ◆
 日本産業規格(旧日本工業規格→2019年7月の法令改正で名称が変更)JIS B7121:2007 により、双眼鏡の平行度許容値が定められています。
 上下(光軸の上下発散)は角度の30分角、左右の寄り眼(光軸の左右収束)は角度の90分角、左右の開き眼(光軸の左右発散)は角度の30分角となっていて、これを使用倍率で割った直が許容値です。
 市販されている安価な双眼鏡を販売店で実際に覗いてみたところ、許容値どころか大幅にズレている製品が結構あることに驚かされます。よく調整された安価な双眼鏡は稀です。

 スピカ望遠鏡に付属している接眼鏡の12mmだと倍率は35倍を得られるので、上下の開き具合の許容誤差は僅か1分角以内(左右は3分角以内)という厳しい値となります。
 調整ベース長が80mmなので角度の1分角は約0.00029mmに相当します。この光軸調整をM3ネジ(ピッチ0.5mm)で行うため、
 360度×(0.00029/0.5)=0.2度 つまり、1分角の微調整だとM3ネジを0.2度ほどの微小角を回す繊細さが必要になります。調整ベース長をもっと長く取れば調整が楽なのですが、スピカ望遠鏡のシンプルさを優先させました。微調整、ちょっと難しいかもしれません。

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