
2/15 京都植物園
「サラバ!」 西 加奈子
久しぶりに長編をイッキ読み。
上下巻700ページ、中高年にはこの量を読み通すのはちょっとしんどいかもという書評があったけれど、ぜんぜん苦も無く、1冊3日ほどで読み切った。
小説は単なるエンタティンメントではないのね。
何となく、昔読んだ「ノルウェイの森」みたいな…って感じたけど、ぜんぜん似てへんね、きっと。
あまりにも膨大でちょっと感想がまとまらないけど、すごい本を読んだなと思う。
僕(歩あゆむ)と姉(貴子)、両親との家族の物語であり、僕の青春物語である。
歩は海外駐在員の父の赴任先のテヘランで生まれ、1歳半で帰国、再び小学校1年から5年までカイロで過ごし、帰国とともに両親が離婚して、大阪の母の実家の近くに越してくる。
サラバと は、日本語の「さらば」とアラビア語の「マッサラーマ(さようなら)」を掛けたもので、歩が友だちのヤコブと別れるときに2人で交わした言葉である。
かなり変わった姉の言動(部屋に閉じこもって部屋中に巻貝の絵を描く、得体のしれない宗教もどきに捕らわれる)に振り回され、自分のしたいこと優先の美人の母、仕事はしっかりできるが修行僧のような父、そんな家族の中にあって、歩はひたすら姉にかかわらないように、できるだけ気配を消して要領よく大きくなる。
20代前後は絶好調でモテまくり、そして、あることがきっかけでどん底に。

『子供にとって大切なものは食事から取る栄養だけではない。母や母に類するものや、やはり大人からの愛情である。愛情が足りないと、子供の心はほとんど死と同じ孤独を味わう』
児童心理の教科書にできそうなくらい、子どもの心があぶりだされている。
重くなりがちな家族のテーマが大阪弁全開の会話でホッとできたり。
僕、姉、父、母、の気持ちに少しずつ共感するものがあって胸にじんわり。
父と母はなぜ別れたのか。その理由にも涙がにじんでくるような。
家族以外の祖母や叔母、歩の友だちなど、多彩な人物がしっかりした存在感で立ちあがってくる。
孤独だった姉が再生して最後に僕に言う。
『「私が信じるものは私が決めるわ。あなたも信じるものを見つけなさい。他の誰かと比べてはだめ…」』
サラバ! は、日本語の「さらば」とアラビア語の「マッサラーマ(さようなら)」を掛けたもので、歩が友だちのヤコブと別れるときに2人で交わした言葉である。
タイトルは「サラバ!」なのに、あらすじや紹介のエジプトから勝手にイメージしてしばらく「サハラ!」だと思い込んでいたのがご愛嬌。
この1月に直木賞受賞したてで、図書館の予約は440件になっていて、8冊所蔵でも借りられるのは1年先では?
たぶん、私はその前に予約したので、早く読めました。