1969/04/09に生まれて

1969年4月9日に生まれた人間の記録簿。例えば・・・・

選挙バカの詩×12『Team M Smile』

2013-01-15 21:45:01 | 雑談の記録
「Team M Smile」は三原を支援する私設のクリエイター集団だ。総決起大会の冒頭、ステージ上の銀幕に映し出された三原候補のプロモーションビデオを作成した集団と言えば早いかもしれない。また、三原のホームページの「ミノルちゃんねんる」という動画サイトも作成するなど、現在はITによる後方支援を主な活動としているが、今後の「新しい」選挙においては、このチームの活躍の幅は格段に拡がることが予想される。
選挙事務所では、チームの代表を務める池尻氏をよく見かけた。本業を終えて事務所に来るのだが、黒の革パンにエンジ色の短めのコート、そして、大きめの角ばった黒革のアタッシュケースという姿は、我々のような野暮な同級生達とは一線を画する雰囲気があった。また、黒縁のメガネの奥の瞳には彼自身の決意の他にそれとは異質な影のようなものを感じさせる何かがあり、我々同級生との間には距離があった。
池尻氏は1972年生まれの39歳だった。事務所で勝山に紹介された。その後も幾度となく事務所で顔を合わせてはいたが、選挙情勢に関わること以外、多く語ることはなかった。
しかし、僕は大変な興味を持っていた。勝山からは「ミノルちゃんねる」の運営やプロモーションビデオの作成は無償と聞いていたことと、さらに、そのクオリティの高さに驚嘆していたのだった。
「、、これ、、タダで作ってんのか!?、、ウソッ!、、」
「、、ウソじゃねぇよ、マジだ、、けど、そうなんだよ、、こんなのフツー、タダじゃぁやんねぇよな、、こういう支援者がいるっていうことが、、なんか、スゲーと思うんよ、オレは、、」
三原のプロモーションビデオの動画を観ながら僕と勝山はそんな会話をしていた。そして我々のブースとは対角線に位置する玄関付近のブースでは、池尻氏を囲んだ議員団がノート型パソコンに釘付けになっていた。パソコンのスピーカーからはビデオのオリジナルBGMも聞こえてきた。
しばらくすると議員団の顔がパソコンから離れた。BGMも止んだ。視聴が終わったようだった。議員達の反応は様々だった。素直にそのビデオの出来栄えについて言及すれば良いものの、何か言いたげであり、不満箇所を故意に探しているようでもあった。しかし、遠目に見ていて最も判りやすい反応は「羨望」であった。それが、そのビデオに対する最大の賞賛として相応しい反応だった。


池尻氏と三原候補の出会いは2年前なのだが、池尻氏が抱いた第一印象は「冴えないヤツ」だった。その頃はまだ落選の影響が色濃く残っていたらしい。物事の判断過程が自己完結的で、他者からの提案を受け入れる余裕が三原には乏しかったのだ。
「、、あれじゃぁ、ダメですね、、」
始めての打ち合わせに同伴していた20代の女性スタッフが、事務所を出たところで池尻氏にそう言ったのだった。
「、、そうだね、でも、これって以外と普通のことなんだよね、、事業がうまくいってない経営者とかって、大体、あんな感じでさ、、自分の行動や判断に関して、全て理由づけするというか、あるいは直ぐに根拠を持ち込もうとするんだよね、、でも、、それって本人は見えているように思ってるだけで、、ま、言ってみれば自覚症状のない視野狭窄症ってとこだね、、」
そういう池尻氏は何者かと言えば、経営コンサルタントであり、デザイナーであり、プログラマーであり、カメラマンであり、そして、県北に位置する由緒ある神社の宮司である。武者返の石垣で有名な城が眺望できる老舗ホテルで執り行われる神前式では彼が祝詞を奏上しているのである。ただ、ここに至るまでの彼の人生は紆余曲折と表現する以外になく、テレビ局入社に始まり映画制作会社、デザイン会社勤務を経てパソコン教室経営など、成功の数と同じだけの失敗を経験しているところが氏の最大の強みであった。
池尻氏が三原候補と再び会ったのはその1年後なのだが、そのときの印象が前のそれとは違っていたことに驚いたと言う。
「、、、いや~、それがですね、、腰が座ってるというか、、全てを受け入れる姿勢とでも言えばいいのでしょうか、、とにかく、そのとき、思ったんですよね、、あっ、この人、今度は当選するだろうってね、、世論のカゼとかに関係なくですよ、、本当にそう思いましたよ、、実際、、」
氏は、さらに続けるのだった。
「、、だから、私、三原候補の伝説に乗っかろうって、、そういうふうに思ったんですよ、、説明は難しいんですが、この人は当選するって確信が持てたんですよね、、それに、もし、当選したらアイツに勝ったってことでしょ、、こりゃ伝説ものですよ、、あっ、でも、伝説を作るのは、我々のような裏方のシゴトなんですけどね、、」
氏は笑って僕に話してくれた。
三原の伝説は始まったばかりである。


続く、、、なお、本章については未完であるとhiratakuwaは考えているため、今後の追記分も御期待下さい。追記の際はお知らせいたします。
なお、この物語はフィクションであることをお忘れなく!
コメント
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