三流読書人

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ドングリ小屋住人 

親殺しの少年 一筋の光明

2006年03月21日 08時25分22秒 | 教育 
《 両親を殺した16歳の少年を「引き取って育てたい」とおじ夫婦が申し出た。「今は底なし沼に沈んでいて、ロープが垂れてきているんだけどつかめない」と少年がためらっている。裁判の中からこの逸話を拾い出した産経新聞の記事(3日東京版)が印象に残っている。親殺しになりはてた少年の哀切、地獄に分け入って少年に手を差し伸べるおじ夫婦の慈愛、勇気、高潔にうたれる。
 両親は東京都板橋区にある会社の社員寮の管理人だった。昨年6月、少年は父の頭を鉄アレイでなぐり、母を包丁でメッタ突きにし、タイマーでガス爆発を起こして逃げた。当時の新聞に「パソコンやテレビゲームが好きで殺りくシーンを好んだ」という同級生の証言が載っている。
 逮捕後の本人の供述によれば「オレより頭が悪い」といつもバカにする父を憎んでいた。母の口癖は「死にたい」だった。裁判でおじは「家庭環境に問題があった温かい家庭の味を味わわせてやりたい」と語り、少年は泣いた。
 少年事件の場合、裁判所の量刑判断は成人の場合よりも甘くなる。容疑者が少年なら報道は匿名だ。更正に配慮するからだが、実態を見ない安直な手加減が再犯の温床になっているという批判が根強い。裁判や報道の惰性を突いて鋭いが、家庭の不和から子どもがゲーム依存を強め、仮想と現実の境界を見失っていくというような根深い問題に厳罰化だけで対応できるか。そういう深層に差した一筋の光明が冒頭の逸話だ。容易ならざる道のりだろうが、この逸話に涙する情緒を共有する日本社会でありたいと思う。》

『毎日新聞』3月20日付 コラム「発信箱」一筋の光明 山田孝男(編集局)より

 このコラム最後の一行「この逸話に涙する情緒を共有する日本でありたい」に共感し、紹介しました。