遠野地区内の小中学校統合の動きは2018年11月に市長を迎えた遠野地区まちづくり懇談会が始まりだった。懇談会で当時のPTA代表から小中学校の再編について意見を出したのだ。この問題提起を受けて、翌年、遠野地区のPTAを含む各種団体代表等による遠野地区あり方懇談会が発足し、下部組織として保護者を中心にした検討部会が組織された。
以後、保護者アンケートの実施や入遠野地区への説明会、また中間報告で出された保護者や地区住民の意見を踏まえながら検討を重ねて、小中学校をそれぞれ統合し、統合後の校舎は現在の上遠野小学校、上遠野中学校校舎を使用し、それぞれの名称を遠野小学校、遠野中学校とする意見集約がはかられた。
あり方懇談会も集約された意見を了承し、いわき市教委に①遠野地区小中学校の同時再編、②通学にかかる負担の軽減、③将来小中一貫校とし新校舎を整備――を要望した。
3月に入り市教委は、教育長先頭にあり方懇談会と検討部会、入遠野小中と上遠野小中それぞれの保護者説明会が行われ、27日に入遠野地区住民対象とした説明会、28日に上遠野地区住民対象の説明会が開かれた。
顧問を務めていたため通知をいただいた懇談会と検討会対象の説明会はうっかり失念し欠席したが、入遠野と上遠野両地区の住民説明会に参加し、市教委がまとめた要望への対応策への住民の意見を聞いてきた。
もともと学校再編が望まれた背景には、児童生徒の減少傾向が顕著にあらわれていたことがあった。
上遠野小で今年度141人の児童が2028年度93人になると見込まれている。28年度の2年生は8人となる見込みだ。入遠野小学校の場合、同様の比較で60人から21人に減少し、10年度には1年生(1人)と2年生(3人)で複式学級、同様に3年(4人)と4年生(2人)、5年(8人)と6年(3人)でそれぞれが複式学級となると見込まれている。
また中学校は、小学校と同様の比較で、上遠野中が73人から66人に減少、入遠野中で32人から28人に減少することが見込まれている。
保護者は、児童生徒の減少が社会性の涵養や学習の障がいになるかもしれないなどの危惧を持つ方も多く、教育環境充実のためには学校の統合しかないとう考えから意見を統一してきたものと思う。
要望を受けて市教委のまとめた対応策は、入遠野小学校と上遠野小学校、入遠野中学校と上遠野中学校をそれぞれ2024年度をめどに統合し、遠野小学校を新設し、当面上遠野小学校、上遠野中学校を校舎として使用し、通学費用については公共交通機関利用の場合は小学校で通学距離が4km以上、中学校で6km以上の場合、再編から5年間は全額補助し、小中一貫校や新校舎については今後検討するという内容だった。
説明を受けて、特に入遠野地区住民説明会では住民や保護者から様々な意見が出され、説明会は午後10時頃まで開かれていた。意見を大別すると、
①決定までの手続きに関する意見(手続き論)、
②まちづくりの視点からの意見、
③子どもの意見を聞くべきという意見、
④移転先学校の安全に関する意見、
⑤小規模学校の教育環境への不安と統合による教育環境充実と地域振興に関する意見、
となるだろう。
⑤の意見は①から④の意見が出される中で保護者と思われる方が発言した意見だった。
1人の保護者は、おおむね次のように語った。
「少ない人数では子どもが学校生活を通じた体験をつみにくくなる心配があり、少しでも良い環境で学ぶことができるよう今の子どもが少ない現状を残しておきたくない。学校の子どもが少なくなったのは大人の責任だと思うので、統合でより良い状況を残したい。学校は子ども達のためにあると思うので、子ども達のことを第1に考えて欲しい。」
また、別の女性も発言した。
「まだ子どもがいるので今再編をしなくても良いという意見もあるが、ではいつならいいのだろうか。子どもの教育環境を良くして遠野に残りたいと思っているから、合併してほしいといっている。」
聞こえにくかったので大胆な意訳があるかもしれないが、おおむねこの3年間、保護者達が検討を重ねながら共有してきた思いを代弁した発言だったと思う。
私自身は、学校再編の件にはあり方懇談会の顧問としてかかわり、議論の経過をほぼ聞いてきた。印象ではあるが、当初保護者の中にも統合に対する心配があったようだが、先進例の視察や話し合いを重ねる中で解消し、最後まで残ったのは通学に関する経済的負担への懸念だったと思う。私自身も、学校の統合に関しては、こうした現役の保護者のみなさんの思いを受け止めた結論を出すべきだと考えていたし、検討部会の中で意見も求められそのような趣旨で発言したこともあった。
たしかに住民説明会で出された①②のような問題も考慮する必要があるとは考えていた。しかし、現在学校の運営に直接関わる保護者のみなさんの意見が何よりも大切と考えたからだ。
②の問題の地域づくりに学校を含む公共施設が大きく関わるのはもちろんだ。ずいぶん前、市議会議員だった時に、会派の視察で訪れた徳島県上勝町でも同様の話しを聞いた。料理に添えられる葉っぱや花、細工(つまもの)で全国のシュア7割(当時)を誇る彩りという事業を担っている方が話していた。たしか、山間地で人口減少が続く中、地域から公共施設が撤退する中、その空き施設を利用した介護事業や宿泊施設を設置して、地域の産業づくりにも貢献しているようだった。
その点から考えれば、公共施設の大きな一角を占める小中学校がなくなり、また登下校をはじめとした時間帯に子ども達の姿が見えなくなることは、入遠野地区にとってはマイナスとなるだろう。
しかし同時に、小中学校の存在は地域づくりの要素の一部にすぎないとも言える。小中学校の存続が、現在のあるいは将来の保護者達が教育環境に持つ懸念を凌駕する根本的な問題とも思えない。
入遠野地区には、公共施設としては入遠野公民館、指定管理者が運営する遠野オートキャンプ場があり、地域振興協議会が設置している遠野和紙づくりの拠点施設「学舎」などの施設もある。また空き校舎は、地域にふさわしい事業等を募集して、ふさわしい事業者に施設を貸し出すようにもなっていく。このような基盤を利用しながら、入遠野地区の振興を図っていくことも可能な状況となっていくと思う。
今度の小中学校の統合に関して、住民のみなさんが、人を呼ぶことができるまちづくりの意見をしていたことは良いきっかけになると思う。この機に、行政、地域住民が一体となって、そのような話し合いが始まっていけば幸いと思った。
ただ①の点は指摘通りだったとも思う。
1度、検討を重ねる中で方向性が定まってきた段階で、あらためて入遠野住民の説明会を開くことが必要ではないかと、個人的な場ではあったが問題提起したことがあった。
統合後には上遠野の校舎を利用するという方向で固まると、この問題の中心には入遠野住民の気持ちが大切になると考えた。また、入遠野住民に、1度行われていた説明会で、統合に反対する立場からの意見が出されていたこともあった。統合に賛成でも、反対でも、それぞれの考えを互いに共有しあい、できれば歩み寄る機会を持つことが、後のことを考えると必要だと思ったのだ。
結果的にその機会がないままに、検討部会(保護者が中心)やあり方懇談会で結論が出され、市教委に要望書を提出することになった。もちろん、要望書やその趣旨は、行政区を通した隣組の回覧で伝えてはいるが、この回覧を読んで意見を寄せる方もなかったようだ。回覧をすべての住民が読んだとも思えない。ここに意見がなかった原因があるかもしれない。
説明会でも「もっと幅広い話し合いが必要だった」という意見などが出されたが、懇談会設置の段階で、「まずは保護者の意見が大切だろう」という意見などもあり、その流れで進んでしまったことにも原因があったろう。
意見交換の場を設ける提案をもっと強く具申していれば、反対する方々にも理解を広めることができたかもしれないと考えると、自分の不甲斐なさを思い知るばかりだ。
今回の統合の議論の過程では、小中学校両校の子ども達がいっしょに学ぶ交流事業もそれぞれで2回ずつ行われた。子ども達へのアンケートでは、「いつもより多くの人と活動できる」との回答が、特に入遠野小では1回目45%から2回目60%へと増加し、入遠野中でも同様に20%から52%に、また「グループでの話し合いがたくさんできる」という回答が25%から52%に増えるなど、統合することのメリットが示された。
小学校、中学校、いわゆる義務教育の義務は保護者や国をはじめとした行政に課せられるもので、子ども達には教育を受ける権利がある。今回の統合の結論にいたる議論の中心は、教育を受けさせる義務を持つ保護者たちを中心に、子ども達により良い教育の環境を作り上げ教育を受けさせる義務を果たそうというものだったと思う。
この流れの中で考えれば、交流事業で示された子ども達の受け止め方は、統合を後押しするものになったと思う。
ただ今回1つの結論が出たとしても、今後も少子化は続くし、今回の措置をもって子どものより良い教育環境が完成するわけではない。今後も、教育のみならず地域づくり等、検討しながら、地域の魅力を高める実践が必要になるのだろう。
以後、保護者アンケートの実施や入遠野地区への説明会、また中間報告で出された保護者や地区住民の意見を踏まえながら検討を重ねて、小中学校をそれぞれ統合し、統合後の校舎は現在の上遠野小学校、上遠野中学校校舎を使用し、それぞれの名称を遠野小学校、遠野中学校とする意見集約がはかられた。
あり方懇談会も集約された意見を了承し、いわき市教委に①遠野地区小中学校の同時再編、②通学にかかる負担の軽減、③将来小中一貫校とし新校舎を整備――を要望した。
3月に入り市教委は、教育長先頭にあり方懇談会と検討部会、入遠野小中と上遠野小中それぞれの保護者説明会が行われ、27日に入遠野地区住民対象とした説明会、28日に上遠野地区住民対象の説明会が開かれた。
顧問を務めていたため通知をいただいた懇談会と検討会対象の説明会はうっかり失念し欠席したが、入遠野と上遠野両地区の住民説明会に参加し、市教委がまとめた要望への対応策への住民の意見を聞いてきた。
もともと学校再編が望まれた背景には、児童生徒の減少傾向が顕著にあらわれていたことがあった。
上遠野小で今年度141人の児童が2028年度93人になると見込まれている。28年度の2年生は8人となる見込みだ。入遠野小学校の場合、同様の比較で60人から21人に減少し、10年度には1年生(1人)と2年生(3人)で複式学級、同様に3年(4人)と4年生(2人)、5年(8人)と6年(3人)でそれぞれが複式学級となると見込まれている。
また中学校は、小学校と同様の比較で、上遠野中が73人から66人に減少、入遠野中で32人から28人に減少することが見込まれている。
保護者は、児童生徒の減少が社会性の涵養や学習の障がいになるかもしれないなどの危惧を持つ方も多く、教育環境充実のためには学校の統合しかないとう考えから意見を統一してきたものと思う。
要望を受けて市教委のまとめた対応策は、入遠野小学校と上遠野小学校、入遠野中学校と上遠野中学校をそれぞれ2024年度をめどに統合し、遠野小学校を新設し、当面上遠野小学校、上遠野中学校を校舎として使用し、通学費用については公共交通機関利用の場合は小学校で通学距離が4km以上、中学校で6km以上の場合、再編から5年間は全額補助し、小中一貫校や新校舎については今後検討するという内容だった。
説明を受けて、特に入遠野地区住民説明会では住民や保護者から様々な意見が出され、説明会は午後10時頃まで開かれていた。意見を大別すると、
①決定までの手続きに関する意見(手続き論)、
②まちづくりの視点からの意見、
③子どもの意見を聞くべきという意見、
④移転先学校の安全に関する意見、
⑤小規模学校の教育環境への不安と統合による教育環境充実と地域振興に関する意見、
となるだろう。
⑤の意見は①から④の意見が出される中で保護者と思われる方が発言した意見だった。
1人の保護者は、おおむね次のように語った。
「少ない人数では子どもが学校生活を通じた体験をつみにくくなる心配があり、少しでも良い環境で学ぶことができるよう今の子どもが少ない現状を残しておきたくない。学校の子どもが少なくなったのは大人の責任だと思うので、統合でより良い状況を残したい。学校は子ども達のためにあると思うので、子ども達のことを第1に考えて欲しい。」
また、別の女性も発言した。
「まだ子どもがいるので今再編をしなくても良いという意見もあるが、ではいつならいいのだろうか。子どもの教育環境を良くして遠野に残りたいと思っているから、合併してほしいといっている。」
聞こえにくかったので大胆な意訳があるかもしれないが、おおむねこの3年間、保護者達が検討を重ねながら共有してきた思いを代弁した発言だったと思う。
私自身は、学校再編の件にはあり方懇談会の顧問としてかかわり、議論の経過をほぼ聞いてきた。印象ではあるが、当初保護者の中にも統合に対する心配があったようだが、先進例の視察や話し合いを重ねる中で解消し、最後まで残ったのは通学に関する経済的負担への懸念だったと思う。私自身も、学校の統合に関しては、こうした現役の保護者のみなさんの思いを受け止めた結論を出すべきだと考えていたし、検討部会の中で意見も求められそのような趣旨で発言したこともあった。
たしかに住民説明会で出された①②のような問題も考慮する必要があるとは考えていた。しかし、現在学校の運営に直接関わる保護者のみなさんの意見が何よりも大切と考えたからだ。
②の問題の地域づくりに学校を含む公共施設が大きく関わるのはもちろんだ。ずいぶん前、市議会議員だった時に、会派の視察で訪れた徳島県上勝町でも同様の話しを聞いた。料理に添えられる葉っぱや花、細工(つまもの)で全国のシュア7割(当時)を誇る彩りという事業を担っている方が話していた。たしか、山間地で人口減少が続く中、地域から公共施設が撤退する中、その空き施設を利用した介護事業や宿泊施設を設置して、地域の産業づくりにも貢献しているようだった。
その点から考えれば、公共施設の大きな一角を占める小中学校がなくなり、また登下校をはじめとした時間帯に子ども達の姿が見えなくなることは、入遠野地区にとってはマイナスとなるだろう。
しかし同時に、小中学校の存在は地域づくりの要素の一部にすぎないとも言える。小中学校の存続が、現在のあるいは将来の保護者達が教育環境に持つ懸念を凌駕する根本的な問題とも思えない。
入遠野地区には、公共施設としては入遠野公民館、指定管理者が運営する遠野オートキャンプ場があり、地域振興協議会が設置している遠野和紙づくりの拠点施設「学舎」などの施設もある。また空き校舎は、地域にふさわしい事業等を募集して、ふさわしい事業者に施設を貸し出すようにもなっていく。このような基盤を利用しながら、入遠野地区の振興を図っていくことも可能な状況となっていくと思う。
今度の小中学校の統合に関して、住民のみなさんが、人を呼ぶことができるまちづくりの意見をしていたことは良いきっかけになると思う。この機に、行政、地域住民が一体となって、そのような話し合いが始まっていけば幸いと思った。
ただ①の点は指摘通りだったとも思う。
1度、検討を重ねる中で方向性が定まってきた段階で、あらためて入遠野住民の説明会を開くことが必要ではないかと、個人的な場ではあったが問題提起したことがあった。
統合後には上遠野の校舎を利用するという方向で固まると、この問題の中心には入遠野住民の気持ちが大切になると考えた。また、入遠野住民に、1度行われていた説明会で、統合に反対する立場からの意見が出されていたこともあった。統合に賛成でも、反対でも、それぞれの考えを互いに共有しあい、できれば歩み寄る機会を持つことが、後のことを考えると必要だと思ったのだ。
結果的にその機会がないままに、検討部会(保護者が中心)やあり方懇談会で結論が出され、市教委に要望書を提出することになった。もちろん、要望書やその趣旨は、行政区を通した隣組の回覧で伝えてはいるが、この回覧を読んで意見を寄せる方もなかったようだ。回覧をすべての住民が読んだとも思えない。ここに意見がなかった原因があるかもしれない。
説明会でも「もっと幅広い話し合いが必要だった」という意見などが出されたが、懇談会設置の段階で、「まずは保護者の意見が大切だろう」という意見などもあり、その流れで進んでしまったことにも原因があったろう。
意見交換の場を設ける提案をもっと強く具申していれば、反対する方々にも理解を広めることができたかもしれないと考えると、自分の不甲斐なさを思い知るばかりだ。
今回の統合の議論の過程では、小中学校両校の子ども達がいっしょに学ぶ交流事業もそれぞれで2回ずつ行われた。子ども達へのアンケートでは、「いつもより多くの人と活動できる」との回答が、特に入遠野小では1回目45%から2回目60%へと増加し、入遠野中でも同様に20%から52%に、また「グループでの話し合いがたくさんできる」という回答が25%から52%に増えるなど、統合することのメリットが示された。
小学校、中学校、いわゆる義務教育の義務は保護者や国をはじめとした行政に課せられるもので、子ども達には教育を受ける権利がある。今回の統合の結論にいたる議論の中心は、教育を受けさせる義務を持つ保護者たちを中心に、子ども達により良い教育の環境を作り上げ教育を受けさせる義務を果たそうというものだったと思う。
この流れの中で考えれば、交流事業で示された子ども達の受け止め方は、統合を後押しするものになったと思う。
ただ今回1つの結論が出たとしても、今後も少子化は続くし、今回の措置をもって子どものより良い教育環境が完成するわけではない。今後も、教育のみならず地域づくり等、検討しながら、地域の魅力を高める実践が必要になるのだろう。
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