東電福島第一が事故を起こした後、事故炉に流れ込む地下水で汚染水が増え続けていると考えられていたことから、地下水の流入を防止するための手法が検討されていた。そして、出された結論が凍土遮水壁。いま、措置されている対応策の1つだ。
地下に冷凍液を循環する管をを埋めて周辺土壌を凍結し、地下水の流入を阻止しようという計画だ。この措置をとった結果、日量540トンだった汚染水が100トン程度まで減少することができたと報道されている。それでも地下水が増え続けていることに違いはない。
汚染水を減らす対策は、凍土遮水壁の他、モニタリング井戸でくみ上げた山側から流れてくる地下水や事故原発周辺のサブドレンかくみ上げた地下水の放射性物質の線量を確認後、トリチウムについては1,500ベクレル以下に薄めて海洋放出するなどの措置がとられてきた。トリチウムを最大1,500ベクレル放出する地下水バイパスなどには、風評被害再燃や拡大の懸念から関係者はじめ被災地から反発の声が上がっていたし、凍土遮水壁には十分に機能しないのではないかという指摘がされていた。
山側の地下水を放出する地下水バイパスは2014年5月から実施されているが、同月、いわき市議会東日本大震災復興特別委員会で第一原発の事故処理の状況を視察した際、案内で随行した東電職員に凍土遮水壁の懸念について質問したことがある。なぜ凍土遮水壁なのか。
その時の説明では、遮水効果を高めるために事故炉に近い場所で遮水したいということなどとともに、「新技術が国の補助対象」となっているとの説明があった。凍土による遮水は、地下のトンネル掘削などで地下水の漏出を止めるために使われていた技術だが、第一原発の遮水壁のように大規模な例はないと聞いていた。なので、凍土遮水壁が新規技術かどうかに疑問はあったものの、コンクリートの打設や鉄板の打ち込みなど一般的な土木工事ではないということから「新技術」ととらえることも可能かもしれないとも考えた。
しかし、汚染水の増加を確実に防ぐという観点から考えると、効果が不確かな新技術より効果が確認された技術の方が適切だという思いもあった。凍土遮水壁には国費が345億円投入されているという。近い場所での遮水や作業員の被ばく量低減などの理由ももちろんあるだろう。しかし、東電ではなく国費がこれだけ投入される。そこにこそ凍土遮水壁導入の主要な動機があったのだろう。
凍土遮水壁は運用してしばらくは、水の流れがあるために凍らないとか、配管が密な部分が凍らないなどの不具合があり、遮水効果は不十分な物だった。その後、改善をされたが、それでも日量100トン程度の汚染水が増え続けてきた。汚染水から放射性核種除去装置ALPSで核種を取り除いた処理水がたまり続ける中、汚染度が高い汚染水は再処理をした上で、取り除くことが困難なトリチウムを地下水バイパス等と同じく1500ベクレル以下になるよう薄めて、今春から夏にかけての時期に海洋放出を始めようとしている。これに対する被災地あるいは関係者の反対の声は強い。
鋼鉄止水壁や地盤固化などによる汚染水低減策の検討は、こうしたことが背景にあるのだろう。この記事を読んで思うのは、処理水の海洋放出で、反対する声を沈静化させる材料としてこの検討が浮上したのではないか、ということだった。
こう考えると、政府や東電の対応はいつも後手後手の感がある。
処理水の海洋放出に関しても、事故対応の現況や放射性核種への対応や特にトリチウムの化学的性質や人体の影響、運転する原発からは日常的に排出してきた歴史と現状、こうしたものを早い時期から国民的規模に説明して風評被害を極力抑制できる国民的合意を広げることが重要だったと思う。にもかかわらず、現実に一定の取り組み強化が図られたのは昨年の秋から初冬にかけてのことだった。海洋放出を決定して、実施時期のスケジュールにあわせてのアリバイづくり的な取り組みに止まったとしか見えない。
地下水流入の抑制に関しても、凍土遮水壁などの検討がされていた段階で、従来の考え方に基づいて「新技術」だけにお金を出すのではなくより効果の高い方策を検討してそれに対し補助金を出す仕組みを作れば良かっただけだった。新技術に補助金という対応で、結果として地下水抑制の地下構造物に二重に費用をかける。その場しのぎの判断が、無駄を生んでいるような印象をぬぐい去ることができない。
事故原発を撤去するまで、これからも40年、50年と続くころを考えれば、そのスムーズな進行のためにも、国・東電には事故処理の方策を慎重に、かつ大胆に進めることが求められていると思う。そして、その基本には被災者や被災地の安寧の生活と生業を維持あるいは取り戻すことが座らなければならないと思う。
さて、国・東電は、今後どんな方向に動いていくのか。
地下に冷凍液を循環する管をを埋めて周辺土壌を凍結し、地下水の流入を阻止しようという計画だ。この措置をとった結果、日量540トンだった汚染水が100トン程度まで減少することができたと報道されている。それでも地下水が増え続けていることに違いはない。
汚染水を減らす対策は、凍土遮水壁の他、モニタリング井戸でくみ上げた山側から流れてくる地下水や事故原発周辺のサブドレンかくみ上げた地下水の放射性物質の線量を確認後、トリチウムについては1,500ベクレル以下に薄めて海洋放出するなどの措置がとられてきた。トリチウムを最大1,500ベクレル放出する地下水バイパスなどには、風評被害再燃や拡大の懸念から関係者はじめ被災地から反発の声が上がっていたし、凍土遮水壁には十分に機能しないのではないかという指摘がされていた。
山側の地下水を放出する地下水バイパスは2014年5月から実施されているが、同月、いわき市議会東日本大震災復興特別委員会で第一原発の事故処理の状況を視察した際、案内で随行した東電職員に凍土遮水壁の懸念について質問したことがある。なぜ凍土遮水壁なのか。
その時の説明では、遮水効果を高めるために事故炉に近い場所で遮水したいということなどとともに、「新技術が国の補助対象」となっているとの説明があった。凍土による遮水は、地下のトンネル掘削などで地下水の漏出を止めるために使われていた技術だが、第一原発の遮水壁のように大規模な例はないと聞いていた。なので、凍土遮水壁が新規技術かどうかに疑問はあったものの、コンクリートの打設や鉄板の打ち込みなど一般的な土木工事ではないということから「新技術」ととらえることも可能かもしれないとも考えた。
しかし、汚染水の増加を確実に防ぐという観点から考えると、効果が不確かな新技術より効果が確認された技術の方が適切だという思いもあった。凍土遮水壁には国費が345億円投入されているという。近い場所での遮水や作業員の被ばく量低減などの理由ももちろんあるだろう。しかし、東電ではなく国費がこれだけ投入される。そこにこそ凍土遮水壁導入の主要な動機があったのだろう。
凍土遮水壁は運用してしばらくは、水の流れがあるために凍らないとか、配管が密な部分が凍らないなどの不具合があり、遮水効果は不十分な物だった。その後、改善をされたが、それでも日量100トン程度の汚染水が増え続けてきた。汚染水から放射性核種除去装置ALPSで核種を取り除いた処理水がたまり続ける中、汚染度が高い汚染水は再処理をした上で、取り除くことが困難なトリチウムを地下水バイパス等と同じく1500ベクレル以下になるよう薄めて、今春から夏にかけての時期に海洋放出を始めようとしている。これに対する被災地あるいは関係者の反対の声は強い。
鋼鉄止水壁や地盤固化などによる汚染水低減策の検討は、こうしたことが背景にあるのだろう。この記事を読んで思うのは、処理水の海洋放出で、反対する声を沈静化させる材料としてこの検討が浮上したのではないか、ということだった。
こう考えると、政府や東電の対応はいつも後手後手の感がある。
処理水の海洋放出に関しても、事故対応の現況や放射性核種への対応や特にトリチウムの化学的性質や人体の影響、運転する原発からは日常的に排出してきた歴史と現状、こうしたものを早い時期から国民的規模に説明して風評被害を極力抑制できる国民的合意を広げることが重要だったと思う。にもかかわらず、現実に一定の取り組み強化が図られたのは昨年の秋から初冬にかけてのことだった。海洋放出を決定して、実施時期のスケジュールにあわせてのアリバイづくり的な取り組みに止まったとしか見えない。
地下水流入の抑制に関しても、凍土遮水壁などの検討がされていた段階で、従来の考え方に基づいて「新技術」だけにお金を出すのではなくより効果の高い方策を検討してそれに対し補助金を出す仕組みを作れば良かっただけだった。新技術に補助金という対応で、結果として地下水抑制の地下構造物に二重に費用をかける。その場しのぎの判断が、無駄を生んでいるような印象をぬぐい去ることができない。
事故原発を撤去するまで、これからも40年、50年と続くころを考えれば、そのスムーズな進行のためにも、国・東電には事故処理の方策を慎重に、かつ大胆に進めることが求められていると思う。そして、その基本には被災者や被災地の安寧の生活と生業を維持あるいは取り戻すことが座らなければならないと思う。
さて、国・東電は、今後どんな方向に動いていくのか。
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