伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

紙漉き

2023年07月14日 | 遠野町・地域
 通常、和紙漉きは冬場の作業だ。和紙漉きは、コウゾなどの繊維を混ぜ込んだ水を簀をはった簀桁をくみ上げて実施するが、水に繊維を均等に浮遊させるためのとろみをつけるネリ(トロロアオイの根から抽出)を加える。このネリは、高い気温により短時間で性質を失う。このため気温の高い夏場には向かない作業らしいのだ。

 そのため今回の紙漉きは、繊維は外国産のコウゾであるタイコウゾ5kgを使い、トロロアオイのネリの他に化学ネリと呼ばれるネリを使って実施した。

 先週から、タイ楮の煮熟や塵取り、打解をして紙漉きの準備をすすめ、予定していた10日(月曜日)は、朝一番にコウゾの皮をビーター(コウゾの繊維をほぐす機械)にかけて繊維化し、水をためた漉船(横1.8m奥行1.2m程度のキッチンのシンクのような物)に投入してかき混ぜ、さらに化学ネリを加えてかき混ぜ、紙漉きの準備を完了した。

 参加者が5枚程度で交代しながら紙漉き(流漉)を実施、夕方までに約40枚の菊判(ほぼ新聞紙見開き大)の紙を漉いた。



 漉いた紙を積み上げた物を紙床(しと)というが、これは1晩ほど置いて自然に水を抜く。翌11日に乾燥作業をした。
 一晩置いた紙床を圧搾機にかけて水を切り、やや湿った程度の紙床になったら、紙床から1枚1枚紙を剥ぎ取り、乾燥機に貼り付けて乾かしていく。乾燥機はおおよそ温度がおおよそ45度程度あり、これもなかなか暑さを感じる作業。額には汗がにじんでくる。




 紙漉きは19日も実施し、翌20日に乾燥作業をした。合わせてほぼ100枚の紙を漉いた。紙漉きそのものはだいぶ上達したと思う。ただ乾燥工程がうまくいっていない。
 紙の乾燥が不均等で、未乾燥の部分があるうちにパリパリと紙がはがれてくる。こうなるとはがれた部分が波打ち、きれいな紙が出来上がらない。

 原因は乾燥温度が高すぎることにあるようだ。夏のこの季節、気を付けていないと乾燥機の温度があっという間に上昇する。これに気が付かないで乾燥を進めていると、先のような状況に陥ってしまうのだ。

 19日の作業の時も温度が45度あった。40度程度に温度を下げたいと思って、水をかけて冷やした。しかし、温度はなかなか下がらない。やむを得ず作業を進めたが、温度が下がった最後の頃は、安定して良い紙に仕上がったと思う。今後の教訓にするしかない。

 さて、19日の乾燥作業時、温めた乾燥機にバッタがしがみついていた。ヒメギス(長翅型)だ。この時の温度もだいたい45度。“熱いだろうが”と思いながら捕獲を試み、捕獲後は戸外に放したが、捕獲までのしばらくの間元気に逃げ回っていた。以外と熱には強いようだ。

 またほぼ連日、室内にオオシロカラトンボが侵入してきた。



 翅の根元の色づき具合から同じ個体のようだ。逃がしても逃がしても侵入してくるのはどうして。

 紙漉き作業を進めたうち3日間は、いずれの日も午後から雷雨があった。
 和紙工房「学舎」には、鉄の屋根を雨が打つ音が響き渡り、時折ドーンと雷音が響いた。比較的短時間のうちにひどい気象状況は改善されたが、それが始まる前、空には入道雲が立ち上がり、暗い雲が空を覆った。

 学舎の前で撮影した。





 そういえば13日に学舎に出かける途上で、咲き誇るヤマユリに気づいた。この日朝に近所で1輪だけ咲くヤマユリに気づいていた。まさかこんなに咲いていたなんて・・ここ数日、通りがかっているのに全く気づいていなかった。

 ヤブカンゾウが群生している畦もある。



 ここでゴイサギを見かけた時、この花の群生に気づいた。
 「見ようとしなければ 何も 見えはしないのです」(イルカ「風に乗せて」より)。その通りだと思う。


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