昨日、終了したいわき市議会12月定例会では、追加提案も含めて今議会に提案された38議案と継続審査扱いとなっていた決算議案18議案が採決に付され、全議案が全会一致あるいは賛成多数で可決しました。日本共産党市議団は2議案に反対、2決算案を不認定としました。
私が討論に立ち、約28分間の討論。途中30分の制限時間をオーバーするかもと冷や冷やしながら、何とか全討論を終了することができました。良かった。
以下が討論の全文です。
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は議案第3号及び議案第5号に反対し、また、先の11月定例会から継続審議になっている決算議案であります議案33号及び議案議案第34号を不認定とする立場から討論いたします。
施設設置目的達成の障害になる限度額変更には問題あり
まず、議案第3号、いわき市健康・福祉プラザ条例の改正について申し上げます。
本案は、いわき市健康・福祉プラザの温泉利用型健康増進施設の年間利用料金の限度額を1人4万1,140円から6万2,000円に引き上げ、宿泊室の利用料金の限度額に加算する金額を休日の前日及び土曜日は1,500円などと追加する内容等となっています。
同プラザは1998年・平成10年4月に供用を開始しています。
同年3月定例会の一般質問で、当時の会派アクティブ21に所属していた清水市議は、ご結婚の報告をしながら、常磐地区の諸課題の一つとして同プラザの収支見通しと利用料金設定及び利用料金に入湯税が加算されていない理由を質していました。
入湯税に対する答弁で執行部はこう答えています。
いわき市健康・福祉プラザにつきましては、市民の健康増進、高齢者、障がい者と、これらの方々の養護者の居宅生活支援のための便宜に供与し、地域福祉の増進に資することを目的とした公共施設であること、
デイサービスセンターなど在宅福祉施設を備え、これまで入湯税を課税免除してきたいわき市常磐老人福祉センター及びいわき市母子休養ホーム白百合荘の代替機能を持つ施設であること、
利用料金は民間宿泊施設に比べ低廉で、施設内での飲食、遊興等についても限定されており、当該施設内における入湯行為に付随して行われる一連の行為は、現在の社会経済状況の中にあって、奢侈性が極めて希薄であること等を総合的に勘案した結果、
広く社会一般の利益の増進が図られるものであることから、入湯税を課税免除するものであります。
こういう内容でした。また、利用料金については次のように答えていました。
いわき市健康・福祉プラザは本市の代表的自然資源である温泉を活用した、高齢者や障がい者等を初めとする市民の健康と福祉の増進、世代間交流と触れ合いの場を提供する21世紀へ向けての総合的な拠点施設として建設を進めてきたところであります。
利用料金の設定に当たりましては、公共施設であることや類似施設の状況等を勘案し、施設としての採算性をも考慮しながら、多くの市民のみな様が気軽に利用できる料金設定としたところであり、その中で、高齢者、障がい者等には、その利用を促進する観点から、より低廉な料金としたところであります。
こういう答弁でした。
当時の清水市議は、この答弁では納得せず、「健常者から入湯税をなぜ取らないんだ」などの内容で再質問、再々質問を行い追及していますが、執行部は、「常磐老人福祉センターあるいは母子休養ホームの代替機能を持つ施設」であり、「お年寄りや障がい者のみなさんに御利用いただくためには、介護あるいは介助をされるみな様方にもあわせて御利用いただくようになる」などと、重ねて料金等への議員各位の理解を求める答弁を繰り返していました。
これらの答弁から明らかなように、この施設は福祉的な側面を強く打ち出しながら、市民の健康や地域福祉の増進に寄与する施設であり、
さらに、母子家庭の母親やその児童にレクリエーション、その他の休養のための便宜を提供し、宿泊施設もある上、低額な料金で利用できる施設で、プラザの供用と同時に廃止をされた母子休養ホーム「白百合荘」等の代替機能を持つ施設として、その活用方向を打ち出し、低額で利用できるとしてきたのです。
今回提案された限度額の増額改定は、ただちに料金の引き上げを意味するものではありませんが、プラザ設置にともなうこの議論から考えれば、限度額を引き上げ、値上げの幅を広げることを可能とする今回の提案には問題があるものと考えます。
今回の限度額改定を受けて、実際にどのような措置をとるのかは、現時点では不明ですが、委員会質疑では利用者アンケートを実施した際の項目に、利用料金に関する項目はなかったといいます。
福祉のために利用する施設にふさわしく、市民のみな様が気軽に利用し、その目的である健康と福祉の増進、世代間交流と触れ合いの場を提供する場とできるように、料金の設定についても、幅広く市民のみなさんの意見に依拠することが求められていると思います。
しかし、もし、限度額を引き上げて、これが利用料金の値上げにつながることになるならば、利用をためらう市民が出てくることが想定され、「健康と福祉の増進」等施設設置の目的及び母子休養ホーム等の代替機能が損なわれる恐れが生じてくると、残念ながら考えざるを得ないのです。
利用料金設定は、施設が設置された当初の目的を達成することを最優先に考えるべきであり、仮に将来的に施設の性格や利用目的が変更されることがあるとしても、その問題が十分に議論されていない現時点において、限度額を引き上げ、現在の4万1,140円を超えて引き上げをできる状況を作り出すことはしてはならないと思います。
仮に、現在の指定管理制度において、施設等の運営が厳しい状況があるならば、運営に必要な経費の負担を市民に求めるべきではなく、指定管理料の増額等、施設の目的を達成するにふさわしい市の負担を検討するべきと考えます。
以上のことから本案には問題がありますので、反対すべきと考えます。
海外の戦場で武力行使の自衛隊・新隊員激励の決算は問題
次に決算議案であります議案33号、平成28年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。
不認定とする第1の理由は、第2款総務費、1項総務管理費、12目諸費に自衛官募集事務費が盛り込まれ、自衛隊に入隊する若者たちの激励会が開催されている問題です。
この平成28年度決算は、自衛隊が海外の戦場で正当防衛以外の戦闘することを可能にした安全保障関連法が実際に動き出した中での決算でした。
この安保関連法には、圧倒的に多くの憲法学者が、現憲法の個別的自衛権という枠組みを大きく逸脱していると批判をする、集団的自衛権行使が可能だという安倍政権の憲法解釈のもと2015年・平成27年9月19日に強行可決をされました。
この可決を受け、翌2016年・平成28年3月29日に法律が施行され、同法で実施が可能になった「駆け付け警護」及び他国軍と共同で拠点を守る「宿営地の共同防護」の任務を付与された陸上自衛隊の交代部隊が、同年11月に国連平和維持活動、いわゆるPKOの任務を背負い南スーダンに派遣されるという経過をたどりました。南スーダンの自衛隊宿営地に砲弾が落下していたなど現地が戦闘状態にあったことを「発砲事案」などと言い換えて隠ぺいした上での派遣でした。
また、この安保関連法が施行され、日米共同方面隊指揮所演習である「ヤマザクラ73」に研修参加をするよう国が各自治体に案内を届けたという報道がありました。この案内は、安保関連法下での日米共同演習の内容を浸透させるものであり、案内をすることそのものに重大な問題があるものと考えますが、安保関連法後に、国が自治体をあげてこの安保関連法の体制を支える体制をシフトしていこうという意図を感じてなりません。
本市は、これまで、自衛隊の軍事演習には出席しておらず、災害対応の訓練には時間と場所の関係で可能であれば参加するという対応をしているといいます。その対応は至極まっとうなものであると考えます。今後とも、安保関連法下での自衛隊の武力行使には一線を画した対応を続けることが必要と考えます。
安保関連法以前の自衛隊は、イラク特措法のように、自衛隊員が武装勢力に攻撃された際に自らを守るための反撃しかできないとされてきました。元防衛官僚で、小泉純一郎政権下の内閣官房副長官補として自衛隊のイラク派遣のための法整備に携わった柳沢協二さんが、2015年5月19日、高知新聞のインタビューに概ね次のように語っていました。
あのイラク戦争を日本政府が支持したのは「日米同盟を維持するという国益のため」で、自衛隊派遣はアメリカとのお付き合いという意味が大きく、アメリカにも地元住民にもそこそこ格好をつけて、とにかく自衛隊を無事に帰ってこさせることが前提だったとして、犠牲者を出さないように、アメリカなどの多国籍軍と自衛隊は違うことをアピールし、銃を決して構えることなく、結果、一人の犠牲者も出さずに撤退した。
このような内容でした。そしてその柳沢氏は2013年に、本市で講演していました。このイラク特措法について、憲法の解釈の幅をぎりぎりまで広げたけれども、集団的自衛権行使につながる一線は越えなかったという趣旨の発言をしていました。
すなわち、当時の官僚たちの中では、駆け付け警護や宿営地の共同防護など集団的自衛権につながる行為は、憲法違反という認識が共有されていたことが示されているのです。この集団的自衛権の行使は、歴代の自民党政府も、現憲法下では否定してきたものでありました。
こうしたことを考える時、集団的自衛権を前提として、積極的に日本が戦争にかかわることに道を開いた安保法制は、いわばクーデター的な憲法解釈の変更で、事実上の改憲に道をつけたものとして、大きな問題があると考えざるをえません。
日本国憲法は、「恒久の平和を念願し、~平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し、~全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という理想を高く掲げ、本市が採択している非核平和都市宣言は、この日本国憲法の恒久平和の理想を盛り込んでいます。安保関連法とは全く対立する本市市民の理想がここに込められていると思います。
私は一般会計決算委員会の質疑で本市が行っている激励会で、安保関連法施行のもとで、入隊する若者にどのような激励をしているのか質問をしました。具体的な激励内容の答弁はなかったものの、少なくとも、災害救援や国民の命を守るという崇高な使命遂行に向かって、自衛隊員一人ひとりが現在の日本国憲法で厳密に規定される任務を、自分を大切に、良心の自由をもって遂行することを要請する内容で激励することこそ必要だと考えました。
委員会質疑の答弁では式次第についての説明をしていただきました。その中で、どのような激励が行われているのか、それは分かりませんが、この激励会が安保法制という枠組みのもと、若者たちを海外の戦場での武力行使の任務に送り出すという性格を持ったもとで、この決算を良とすることはできません。従って、本決算には問題があるものと考えます。
効果の検証なく公民館嘱託化推進は問題
第2の理由は、第10款教育費、5項社会教育費、2目公民館費に嘱託職員等の賃金が含まれ、公民館の嘱託化を進めている問題です。
公民館の嘱託化は、平成26年に策定された公民館運営指針に基づき進められていますが、決算委員会の質疑でも明らかになったように、その効果については、指針に盛られた公民館の役割に対する嘱託化の効果が十分に検証されることがないまま進んでいるという問題があります。
効果の検証としては、利用者等にアンケートを実施していますが、ここで得られる回答は、嘱託職員化にともなう公民館の人的配置の効果の一部分を検証するにすぎないものであり、まちづくりの支援等、中長期的にその効果を検証することが必要なものについては、全く評価されないままに、ある意味、あらかじめ定められたスケジュールに従って嘱託化がすすめられるという問題を感じております。
6年9カ月前の震災後、公民館職員が担った市民への対応を考慮すれば、公民館は正規職員で運営していくことが妥当という市民的な見方もあることから、今後の公民館活動と公民館の地域とのかかわりという観点から、また、まちづくりへの支援等、公民館運営指針に盛り込まれた公民館の役割の観点から、嘱託化が妥当なのか、それとも正規職員が妥当なのかを検証していくことが必要なものと考えます。
これらを十分に行っていないままに嘱託化をすすめているという点でも、本決算には問題があると考えます。
夫婦別姓の議論を脇においやるカードへの旧姓併記
第3の理由は、同じく第2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費に地方公共団体情報システム機構への事務委任負担金が含まれるなど、個人番号、いわゆるマイナンバー制度に関する決算が各費目に含まれている問題です。
このマイナンバー制度には、議案第5号、平成29年度いわき市一般会計補正予算第4号も関連しますので、一括して討論いたします。
この補正予算案には、第2款総務費、第3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に、個人番号カードいわゆるマイナンバーカード等に旧姓の併記ができるようにするために、既存の住基システムの改修を行う1,018万7,000円の予算が含まれています。
マイナンバーカード等への旧姓併記は希望する者に行われるものですが、このような措置をとる理由を総務省は次のようにしています。
「政府は誰もが活躍できる一億総活躍社会を作るための大きな目標である『希望出生率1.8』の実現に向け、『女性活躍』を中核と位置付けて取り組むこととしている。そのため、女性の一人ひとりが自らの希望に応じて活躍できる社会づくりが重要であるとし、希望する者に係るマイナンバーカード等への旧姓の併記等を可能とする。」
このような内容です。
女性活躍で希望出生率1.8の実現という短絡的な説明には疑問を感じますが、婚姻による改姓、すなわち名字の変更で9割にも及ぶ女性に、改姓で受ける不利益を、マイナンバーカード等への旧姓の併記によって軽減し、意欲をもって働いていただきたいという意図は分かります。
この旧姓併記の推進は、政府のもとに置かれた「すべての女性が輝く社会づくり本部」がまとめた「女性活躍加速のための重点方針 2017」の「女性活躍の視点に立った制度等の整備」という項目の中に盛り込まれていました。ここでは「社会における活動や個人の生き方が多様化する中で、働きたい女性が不便さを感じ、働く意欲が阻害されることのないよう、女性活躍の視点に立った制度等を整備していくことが重要である」としています。
現在、改姓による不利益を軽減することができるという理由から、婚姻後、旧姓を通称として利用することが広がっているといいます。国の考えは、この現象を追認するためだけにマイナンバーカードに旧姓を併記することができるようにしようということしかないように見えます。今回のシステム改修の提案もその延長線上のものとしか考えられないのです。
そしてこの旧姓併記の背景には、夫婦別姓を認めない民法の規定が違憲かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷がこの民法の規定を「合憲」と判断し、その理由の一つに、婚姻前の姓の通称使用が広まることによって、改姓による不利益は「一定程度は緩和され得る」としたことがあるものと思われます。
河北新報は今年11月1日付けの社説で、「政府が9月に、国家公務員を対象に旧姓使用を全面的に認めることを申し合わせた」とし「先行実施した特許庁や裁判官に続き、準備が整い次第運用が始まる」としながら、次のような指摘をしています。
「国は「働きたい女性が不便さを感じ、働く意欲が阻害されることのないよう、女性活躍の視点に立った制度」の整備と位置付ける。
しかし、姓名は「活躍」するかどうかにかかわらず尊重されるべき個人の尊厳の一つのはず。改姓するのは9割以上が女性という不平等が放置されているのは理不尽だ。
国家に都合のいい女性の働き方や家族のありようを前提とするのでなく、多くは妻となって姓が変わる者のみが負担する「自己喪失感」に向き合うことが求められる。
「個人の尊厳と両性の本質的平等」(憲法24条)に立ち返った制度を本格的に議論するべき時ではないか。」
この河北新報の指摘にあるように、国が取り組むべきことは、戦前の家父長制に基づく家制度が反映した夫婦同姓という現在の制度のあり方に対して、選択的夫婦別姓の導入など、憲法の理念に沿って現代社会にふさわしい家族制度の議論を大いにすすめることにあると思います。
また、国連の女子差別撤廃委員会が、選択的夫婦別姓の導入を要求した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の規定に沿うよう国内法を整備することを求めた勧告を2003年、2009年及び2016年に日本に対して行っています。同条約は1979年に130カ国の賛成で採択されていますが、日本はこの条約に賛成しており、選択的夫婦別姓の導入は、いわば日本の国際公約とも言えるものであります。
現在の家族制度が存在するもとで、婚姻後の通称使用を否定するものではありません。しかし、マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにしようという今回のシステム改定は、本来取り組むべき夫婦別姓という問題を脇に置いて議論が分かれる夫婦同姓の継続を前提にした措置であり、本来必要な姓のあり方の議論を回避するものになりかねないという点で問題があると思います。
制度の周知不足でスタートし未交付個人番号カード多数
また、決算案及び補正予算案に共通する問題として、これまでたびたび申し上げてまいりましたが、このマイナンバー制度では、運用するためのシステムやマイナポータルを通じて個人情報が漏洩する懸念や、利用拡大策として検討されているマイキープラットホーム構想が情報漏洩の懸念を拡大する問題などを含んでおります。
マイナンバーカードの利用拡大も具体的に検討されています。政府によってマイナンバーカード利活用推進ロードマップが策定され、同カードの身分証としての利用、行政サービスにおける利用、民間サービスにおける利用を推進するとともに、マイナポータルの利便性向上や同ポータルのアクセス手段の多様化を積極的に推進するとしています。
民間サービスにおける利用では、インターネットバンキングの認証や医療・健康情報へのアクセス、イベント会場等へのチケットレス入場、オリンピック等における入場管理、ポイントカード等民間サービスにおける利用などが掲げられています。こうして活用の幅が広がれば広がるほど、従前から指摘してきた不正アクセスのルートの増加につながりかないと懸念されるところであります。
また、個人情報の漏洩は、ヒューマンエラーとしても発生する懸念を指摘してきました。
実際、個人情報保護のための国の監督機関である個人情報保護委員会が10月に発表した、今年度上半期の活動実績によると、前年同時期に66件だった個人番号の漏えいが4倍を超える273件に拡大しており、このうちの過半数に当たる152件は個人番号を記載した住民税の決定通知書の誤った送付、すなわち誤送付等が原因だったとされています。1件当たりの漏えい人数は明らかにされておらず、どれだけの被害者がいるかは分かっておりません。
こうした個人情報の漏えいとその悪用の被害に住民を導きかねない個人番号制度には問題があり、ただちに廃止すべきですし、本市は個人番号制度を活用するべきではないと考えます。
また、決算委員会の審議の中で、本市におけるマイナンバーカードの未交付数が本年3月末で5,969件に上り、うち200件程度が新規発行分ということではありますが、それを差し引いても、長期にわたり多数の未交付カードが残されている実態が明らかになりました。
その未交付カードは、第1回目の個人番号の通知の際に、マイナンバーカードの発行申請書と返信用封筒を同封したため、認識が薄いままにカード発行を申請した、すなわち必要のないカードの申請がされたために発生しているという背景があると思われます。
ここには、個人番号制度が、どんな制度なのか、住民の中に不徹底なまま、スタートありきで制度を開始したという問題が含まれていると考えられ、この面にも大きな問題があったと言わざるを得ません。
個人番号制度は本市が活用の是非を判断できるものであり、本市としては活用をやめることをあらためて求めたいと思います。
従って議案33号、平成28年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定については不認定とし、議案第5号、平成29年度いわき市一般会計補正予算・第4号には反対すべきものと考えます。
被保険者資格証明書交付の決算はいのちと健康にかかわる
最後に議案第34号、平成28年度いわき市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。
この決算には、被保険者資格証明書の発行にかかわる経費が含まれています。
被保険者資格証明書は、国民健康保険に加入していることを示すだけで、通院などの際、医療機関の窓口で医療費の全額を負担し、その後に窓口で保険負担分の7割の払い戻しを受けるための手続きをとるという形で運用されるために、患者を病院から遠ざけてしまいかねないという問題点をかねてから指摘されていました。
本市の被保険者資格証明書の発行数は毎年1,000件を超えています。こうした被保険者資格証明書を持たされた方が残念ながら命を落とす事例が全国的に散見されています。
これまでもたびたび引用してきましたが、全日本民医連が昨年1年間を期間に、全国641の加盟事業所の患者、利用者を対象にして、「2016年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」を実施しました。
調査では、国保税やその他保険料滞納などの理由で無保険もしくは資格証明書・短期保険証となったために病状が悪化し死亡に至ったと考えられる事例、及び正規保険証を持ちながらも、経済的事由で受診が遅れ死亡に至ったと考えられる事例を調査しています。その結果では、該当する事例が58例あり、そのうち34件が資格証明書など健康保険証の制約があった方でした。
同調査による同様の事例は、2010年・平成22年と11年の42件をピークに、ここ数年は35件前後で推移しています。これは、被保険者資格証の発行など保険証に制約をかけることが健康に害を及ぼす危険性を示していると考えられます。
また同時に2008年・平成20年以前は数件に過ぎなかった経済的自由による死亡事例が近年20件を超え、場合によっては30件に迫っている状況は、アベノミクスによる国民の貧困の進行が命と健康に重大な影響を及ぼしている実態を見ることができます。
もともと国保税の滞納は、国保税が高すぎる状態が続いているところにあります。高すぎる国保税になっている原因には、1984年の医療費亡国論を背景にして、医療費の抑制に国が乗り出し、国保会計に対する国の負担方式を医療費の50%から給付費の50%に変更するなど、国が国保に支出するお金を絞ったところにありました。
こうした国のあり方に地方自治体の現場から声をあげていくことが、今後とも大切だと思います。
同時に、本市は、震災以降多額の繰越金を出しており、決算案である平成28年度には平成27年度から約27億2,100万円が繰り越され、その28年度は翌29年度に27億3,929万円余を繰越しました。
この状況は、国保税の引き下げが可能であるこが示されており、本格的にここに取り組んでいくことが求められていたと思います。来年度には国保制度が都道府県単位での運営に移行されることになっています。本市においては、病気になった際に、資格証世帯からの申し出によって、短期被保険者証を交付することに取り扱いが改善されておりますが、安心して国保制度を活用できるようにするために、国保税の引き下げのための本市独自の努力に加え、国の負担増加を求めるなどの取り組みを強めながら、被保険者資格証明書の発行はただちにやめることが必要だったと考えます。
従って被保険者資格証明書を発行した議案34号、平成28年度国民健康保険事業歳入歳出決算の認定については問題がありますので、不認定とすべきです。
以上、討論してまいりましたが、みな様のご賛同を心からお願いして私の討論といたします。ご清聴ありがとうございます。
私が討論に立ち、約28分間の討論。途中30分の制限時間をオーバーするかもと冷や冷やしながら、何とか全討論を終了することができました。良かった。
以下が討論の全文です。
2017年12月定例会・反対討論
10番、日本共産党いわき市議団の伊藤浩之です。
私は議案第3号及び議案第5号に反対し、また、先の11月定例会から継続審議になっている決算議案であります議案33号及び議案議案第34号を不認定とする立場から討論いたします。
施設設置目的達成の障害になる限度額変更には問題あり
まず、議案第3号、いわき市健康・福祉プラザ条例の改正について申し上げます。
本案は、いわき市健康・福祉プラザの温泉利用型健康増進施設の年間利用料金の限度額を1人4万1,140円から6万2,000円に引き上げ、宿泊室の利用料金の限度額に加算する金額を休日の前日及び土曜日は1,500円などと追加する内容等となっています。
同プラザは1998年・平成10年4月に供用を開始しています。
同年3月定例会の一般質問で、当時の会派アクティブ21に所属していた清水市議は、ご結婚の報告をしながら、常磐地区の諸課題の一つとして同プラザの収支見通しと利用料金設定及び利用料金に入湯税が加算されていない理由を質していました。
入湯税に対する答弁で執行部はこう答えています。
いわき市健康・福祉プラザにつきましては、市民の健康増進、高齢者、障がい者と、これらの方々の養護者の居宅生活支援のための便宜に供与し、地域福祉の増進に資することを目的とした公共施設であること、
デイサービスセンターなど在宅福祉施設を備え、これまで入湯税を課税免除してきたいわき市常磐老人福祉センター及びいわき市母子休養ホーム白百合荘の代替機能を持つ施設であること、
利用料金は民間宿泊施設に比べ低廉で、施設内での飲食、遊興等についても限定されており、当該施設内における入湯行為に付随して行われる一連の行為は、現在の社会経済状況の中にあって、奢侈性が極めて希薄であること等を総合的に勘案した結果、
広く社会一般の利益の増進が図られるものであることから、入湯税を課税免除するものであります。
こういう内容でした。また、利用料金については次のように答えていました。
いわき市健康・福祉プラザは本市の代表的自然資源である温泉を活用した、高齢者や障がい者等を初めとする市民の健康と福祉の増進、世代間交流と触れ合いの場を提供する21世紀へ向けての総合的な拠点施設として建設を進めてきたところであります。
利用料金の設定に当たりましては、公共施設であることや類似施設の状況等を勘案し、施設としての採算性をも考慮しながら、多くの市民のみな様が気軽に利用できる料金設定としたところであり、その中で、高齢者、障がい者等には、その利用を促進する観点から、より低廉な料金としたところであります。
こういう答弁でした。
当時の清水市議は、この答弁では納得せず、「健常者から入湯税をなぜ取らないんだ」などの内容で再質問、再々質問を行い追及していますが、執行部は、「常磐老人福祉センターあるいは母子休養ホームの代替機能を持つ施設」であり、「お年寄りや障がい者のみなさんに御利用いただくためには、介護あるいは介助をされるみな様方にもあわせて御利用いただくようになる」などと、重ねて料金等への議員各位の理解を求める答弁を繰り返していました。
これらの答弁から明らかなように、この施設は福祉的な側面を強く打ち出しながら、市民の健康や地域福祉の増進に寄与する施設であり、
さらに、母子家庭の母親やその児童にレクリエーション、その他の休養のための便宜を提供し、宿泊施設もある上、低額な料金で利用できる施設で、プラザの供用と同時に廃止をされた母子休養ホーム「白百合荘」等の代替機能を持つ施設として、その活用方向を打ち出し、低額で利用できるとしてきたのです。
今回提案された限度額の増額改定は、ただちに料金の引き上げを意味するものではありませんが、プラザ設置にともなうこの議論から考えれば、限度額を引き上げ、値上げの幅を広げることを可能とする今回の提案には問題があるものと考えます。
今回の限度額改定を受けて、実際にどのような措置をとるのかは、現時点では不明ですが、委員会質疑では利用者アンケートを実施した際の項目に、利用料金に関する項目はなかったといいます。
福祉のために利用する施設にふさわしく、市民のみな様が気軽に利用し、その目的である健康と福祉の増進、世代間交流と触れ合いの場を提供する場とできるように、料金の設定についても、幅広く市民のみなさんの意見に依拠することが求められていると思います。
しかし、もし、限度額を引き上げて、これが利用料金の値上げにつながることになるならば、利用をためらう市民が出てくることが想定され、「健康と福祉の増進」等施設設置の目的及び母子休養ホーム等の代替機能が損なわれる恐れが生じてくると、残念ながら考えざるを得ないのです。
利用料金設定は、施設が設置された当初の目的を達成することを最優先に考えるべきであり、仮に将来的に施設の性格や利用目的が変更されることがあるとしても、その問題が十分に議論されていない現時点において、限度額を引き上げ、現在の4万1,140円を超えて引き上げをできる状況を作り出すことはしてはならないと思います。
仮に、現在の指定管理制度において、施設等の運営が厳しい状況があるならば、運営に必要な経費の負担を市民に求めるべきではなく、指定管理料の増額等、施設の目的を達成するにふさわしい市の負担を検討するべきと考えます。
以上のことから本案には問題がありますので、反対すべきと考えます。
海外の戦場で武力行使の自衛隊・新隊員激励の決算は問題
次に決算議案であります議案33号、平成28年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。
不認定とする第1の理由は、第2款総務費、1項総務管理費、12目諸費に自衛官募集事務費が盛り込まれ、自衛隊に入隊する若者たちの激励会が開催されている問題です。
この平成28年度決算は、自衛隊が海外の戦場で正当防衛以外の戦闘することを可能にした安全保障関連法が実際に動き出した中での決算でした。
この安保関連法には、圧倒的に多くの憲法学者が、現憲法の個別的自衛権という枠組みを大きく逸脱していると批判をする、集団的自衛権行使が可能だという安倍政権の憲法解釈のもと2015年・平成27年9月19日に強行可決をされました。
この可決を受け、翌2016年・平成28年3月29日に法律が施行され、同法で実施が可能になった「駆け付け警護」及び他国軍と共同で拠点を守る「宿営地の共同防護」の任務を付与された陸上自衛隊の交代部隊が、同年11月に国連平和維持活動、いわゆるPKOの任務を背負い南スーダンに派遣されるという経過をたどりました。南スーダンの自衛隊宿営地に砲弾が落下していたなど現地が戦闘状態にあったことを「発砲事案」などと言い換えて隠ぺいした上での派遣でした。
また、この安保関連法が施行され、日米共同方面隊指揮所演習である「ヤマザクラ73」に研修参加をするよう国が各自治体に案内を届けたという報道がありました。この案内は、安保関連法下での日米共同演習の内容を浸透させるものであり、案内をすることそのものに重大な問題があるものと考えますが、安保関連法後に、国が自治体をあげてこの安保関連法の体制を支える体制をシフトしていこうという意図を感じてなりません。
本市は、これまで、自衛隊の軍事演習には出席しておらず、災害対応の訓練には時間と場所の関係で可能であれば参加するという対応をしているといいます。その対応は至極まっとうなものであると考えます。今後とも、安保関連法下での自衛隊の武力行使には一線を画した対応を続けることが必要と考えます。
安保関連法以前の自衛隊は、イラク特措法のように、自衛隊員が武装勢力に攻撃された際に自らを守るための反撃しかできないとされてきました。元防衛官僚で、小泉純一郎政権下の内閣官房副長官補として自衛隊のイラク派遣のための法整備に携わった柳沢協二さんが、2015年5月19日、高知新聞のインタビューに概ね次のように語っていました。
あのイラク戦争を日本政府が支持したのは「日米同盟を維持するという国益のため」で、自衛隊派遣はアメリカとのお付き合いという意味が大きく、アメリカにも地元住民にもそこそこ格好をつけて、とにかく自衛隊を無事に帰ってこさせることが前提だったとして、犠牲者を出さないように、アメリカなどの多国籍軍と自衛隊は違うことをアピールし、銃を決して構えることなく、結果、一人の犠牲者も出さずに撤退した。
このような内容でした。そしてその柳沢氏は2013年に、本市で講演していました。このイラク特措法について、憲法の解釈の幅をぎりぎりまで広げたけれども、集団的自衛権行使につながる一線は越えなかったという趣旨の発言をしていました。
すなわち、当時の官僚たちの中では、駆け付け警護や宿営地の共同防護など集団的自衛権につながる行為は、憲法違反という認識が共有されていたことが示されているのです。この集団的自衛権の行使は、歴代の自民党政府も、現憲法下では否定してきたものでありました。
こうしたことを考える時、集団的自衛権を前提として、積極的に日本が戦争にかかわることに道を開いた安保法制は、いわばクーデター的な憲法解釈の変更で、事実上の改憲に道をつけたものとして、大きな問題があると考えざるをえません。
日本国憲法は、「恒久の平和を念願し、~平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し、~全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という理想を高く掲げ、本市が採択している非核平和都市宣言は、この日本国憲法の恒久平和の理想を盛り込んでいます。安保関連法とは全く対立する本市市民の理想がここに込められていると思います。
私は一般会計決算委員会の質疑で本市が行っている激励会で、安保関連法施行のもとで、入隊する若者にどのような激励をしているのか質問をしました。具体的な激励内容の答弁はなかったものの、少なくとも、災害救援や国民の命を守るという崇高な使命遂行に向かって、自衛隊員一人ひとりが現在の日本国憲法で厳密に規定される任務を、自分を大切に、良心の自由をもって遂行することを要請する内容で激励することこそ必要だと考えました。
委員会質疑の答弁では式次第についての説明をしていただきました。その中で、どのような激励が行われているのか、それは分かりませんが、この激励会が安保法制という枠組みのもと、若者たちを海外の戦場での武力行使の任務に送り出すという性格を持ったもとで、この決算を良とすることはできません。従って、本決算には問題があるものと考えます。
効果の検証なく公民館嘱託化推進は問題
第2の理由は、第10款教育費、5項社会教育費、2目公民館費に嘱託職員等の賃金が含まれ、公民館の嘱託化を進めている問題です。
公民館の嘱託化は、平成26年に策定された公民館運営指針に基づき進められていますが、決算委員会の質疑でも明らかになったように、その効果については、指針に盛られた公民館の役割に対する嘱託化の効果が十分に検証されることがないまま進んでいるという問題があります。
効果の検証としては、利用者等にアンケートを実施していますが、ここで得られる回答は、嘱託職員化にともなう公民館の人的配置の効果の一部分を検証するにすぎないものであり、まちづくりの支援等、中長期的にその効果を検証することが必要なものについては、全く評価されないままに、ある意味、あらかじめ定められたスケジュールに従って嘱託化がすすめられるという問題を感じております。
6年9カ月前の震災後、公民館職員が担った市民への対応を考慮すれば、公民館は正規職員で運営していくことが妥当という市民的な見方もあることから、今後の公民館活動と公民館の地域とのかかわりという観点から、また、まちづくりへの支援等、公民館運営指針に盛り込まれた公民館の役割の観点から、嘱託化が妥当なのか、それとも正規職員が妥当なのかを検証していくことが必要なものと考えます。
これらを十分に行っていないままに嘱託化をすすめているという点でも、本決算には問題があると考えます。
夫婦別姓の議論を脇においやるカードへの旧姓併記
第3の理由は、同じく第2款総務費、3項戸籍住民基本台帳費に地方公共団体情報システム機構への事務委任負担金が含まれるなど、個人番号、いわゆるマイナンバー制度に関する決算が各費目に含まれている問題です。
このマイナンバー制度には、議案第5号、平成29年度いわき市一般会計補正予算第4号も関連しますので、一括して討論いたします。
この補正予算案には、第2款総務費、第3項戸籍住民基本台帳費、1目戸籍住民基本台帳費に、個人番号カードいわゆるマイナンバーカード等に旧姓の併記ができるようにするために、既存の住基システムの改修を行う1,018万7,000円の予算が含まれています。
マイナンバーカード等への旧姓併記は希望する者に行われるものですが、このような措置をとる理由を総務省は次のようにしています。
「政府は誰もが活躍できる一億総活躍社会を作るための大きな目標である『希望出生率1.8』の実現に向け、『女性活躍』を中核と位置付けて取り組むこととしている。そのため、女性の一人ひとりが自らの希望に応じて活躍できる社会づくりが重要であるとし、希望する者に係るマイナンバーカード等への旧姓の併記等を可能とする。」
このような内容です。
女性活躍で希望出生率1.8の実現という短絡的な説明には疑問を感じますが、婚姻による改姓、すなわち名字の変更で9割にも及ぶ女性に、改姓で受ける不利益を、マイナンバーカード等への旧姓の併記によって軽減し、意欲をもって働いていただきたいという意図は分かります。
この旧姓併記の推進は、政府のもとに置かれた「すべての女性が輝く社会づくり本部」がまとめた「女性活躍加速のための重点方針 2017」の「女性活躍の視点に立った制度等の整備」という項目の中に盛り込まれていました。ここでは「社会における活動や個人の生き方が多様化する中で、働きたい女性が不便さを感じ、働く意欲が阻害されることのないよう、女性活躍の視点に立った制度等を整備していくことが重要である」としています。
現在、改姓による不利益を軽減することができるという理由から、婚姻後、旧姓を通称として利用することが広がっているといいます。国の考えは、この現象を追認するためだけにマイナンバーカードに旧姓を併記することができるようにしようということしかないように見えます。今回のシステム改修の提案もその延長線上のものとしか考えられないのです。
そしてこの旧姓併記の背景には、夫婦別姓を認めない民法の規定が違憲かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷がこの民法の規定を「合憲」と判断し、その理由の一つに、婚姻前の姓の通称使用が広まることによって、改姓による不利益は「一定程度は緩和され得る」としたことがあるものと思われます。
河北新報は今年11月1日付けの社説で、「政府が9月に、国家公務員を対象に旧姓使用を全面的に認めることを申し合わせた」とし「先行実施した特許庁や裁判官に続き、準備が整い次第運用が始まる」としながら、次のような指摘をしています。
「国は「働きたい女性が不便さを感じ、働く意欲が阻害されることのないよう、女性活躍の視点に立った制度」の整備と位置付ける。
しかし、姓名は「活躍」するかどうかにかかわらず尊重されるべき個人の尊厳の一つのはず。改姓するのは9割以上が女性という不平等が放置されているのは理不尽だ。
国家に都合のいい女性の働き方や家族のありようを前提とするのでなく、多くは妻となって姓が変わる者のみが負担する「自己喪失感」に向き合うことが求められる。
「個人の尊厳と両性の本質的平等」(憲法24条)に立ち返った制度を本格的に議論するべき時ではないか。」
この河北新報の指摘にあるように、国が取り組むべきことは、戦前の家父長制に基づく家制度が反映した夫婦同姓という現在の制度のあり方に対して、選択的夫婦別姓の導入など、憲法の理念に沿って現代社会にふさわしい家族制度の議論を大いにすすめることにあると思います。
また、国連の女子差別撤廃委員会が、選択的夫婦別姓の導入を要求した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の規定に沿うよう国内法を整備することを求めた勧告を2003年、2009年及び2016年に日本に対して行っています。同条約は1979年に130カ国の賛成で採択されていますが、日本はこの条約に賛成しており、選択的夫婦別姓の導入は、いわば日本の国際公約とも言えるものであります。
現在の家族制度が存在するもとで、婚姻後の通称使用を否定するものではありません。しかし、マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにしようという今回のシステム改定は、本来取り組むべき夫婦別姓という問題を脇に置いて議論が分かれる夫婦同姓の継続を前提にした措置であり、本来必要な姓のあり方の議論を回避するものになりかねないという点で問題があると思います。
制度の周知不足でスタートし未交付個人番号カード多数
また、決算案及び補正予算案に共通する問題として、これまでたびたび申し上げてまいりましたが、このマイナンバー制度では、運用するためのシステムやマイナポータルを通じて個人情報が漏洩する懸念や、利用拡大策として検討されているマイキープラットホーム構想が情報漏洩の懸念を拡大する問題などを含んでおります。
マイナンバーカードの利用拡大も具体的に検討されています。政府によってマイナンバーカード利活用推進ロードマップが策定され、同カードの身分証としての利用、行政サービスにおける利用、民間サービスにおける利用を推進するとともに、マイナポータルの利便性向上や同ポータルのアクセス手段の多様化を積極的に推進するとしています。
民間サービスにおける利用では、インターネットバンキングの認証や医療・健康情報へのアクセス、イベント会場等へのチケットレス入場、オリンピック等における入場管理、ポイントカード等民間サービスにおける利用などが掲げられています。こうして活用の幅が広がれば広がるほど、従前から指摘してきた不正アクセスのルートの増加につながりかないと懸念されるところであります。
また、個人情報の漏洩は、ヒューマンエラーとしても発生する懸念を指摘してきました。
実際、個人情報保護のための国の監督機関である個人情報保護委員会が10月に発表した、今年度上半期の活動実績によると、前年同時期に66件だった個人番号の漏えいが4倍を超える273件に拡大しており、このうちの過半数に当たる152件は個人番号を記載した住民税の決定通知書の誤った送付、すなわち誤送付等が原因だったとされています。1件当たりの漏えい人数は明らかにされておらず、どれだけの被害者がいるかは分かっておりません。
こうした個人情報の漏えいとその悪用の被害に住民を導きかねない個人番号制度には問題があり、ただちに廃止すべきですし、本市は個人番号制度を活用するべきではないと考えます。
また、決算委員会の審議の中で、本市におけるマイナンバーカードの未交付数が本年3月末で5,969件に上り、うち200件程度が新規発行分ということではありますが、それを差し引いても、長期にわたり多数の未交付カードが残されている実態が明らかになりました。
その未交付カードは、第1回目の個人番号の通知の際に、マイナンバーカードの発行申請書と返信用封筒を同封したため、認識が薄いままにカード発行を申請した、すなわち必要のないカードの申請がされたために発生しているという背景があると思われます。
ここには、個人番号制度が、どんな制度なのか、住民の中に不徹底なまま、スタートありきで制度を開始したという問題が含まれていると考えられ、この面にも大きな問題があったと言わざるを得ません。
個人番号制度は本市が活用の是非を判断できるものであり、本市としては活用をやめることをあらためて求めたいと思います。
従って議案33号、平成28年度いわき市一般会計歳入歳出決算の認定については不認定とし、議案第5号、平成29年度いわき市一般会計補正予算・第4号には反対すべきものと考えます。
被保険者資格証明書交付の決算はいのちと健康にかかわる
最後に議案第34号、平成28年度いわき市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定について申し上げます。
この決算には、被保険者資格証明書の発行にかかわる経費が含まれています。
被保険者資格証明書は、国民健康保険に加入していることを示すだけで、通院などの際、医療機関の窓口で医療費の全額を負担し、その後に窓口で保険負担分の7割の払い戻しを受けるための手続きをとるという形で運用されるために、患者を病院から遠ざけてしまいかねないという問題点をかねてから指摘されていました。
本市の被保険者資格証明書の発行数は毎年1,000件を超えています。こうした被保険者資格証明書を持たされた方が残念ながら命を落とす事例が全国的に散見されています。
これまでもたびたび引用してきましたが、全日本民医連が昨年1年間を期間に、全国641の加盟事業所の患者、利用者を対象にして、「2016年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」を実施しました。
調査では、国保税やその他保険料滞納などの理由で無保険もしくは資格証明書・短期保険証となったために病状が悪化し死亡に至ったと考えられる事例、及び正規保険証を持ちながらも、経済的事由で受診が遅れ死亡に至ったと考えられる事例を調査しています。その結果では、該当する事例が58例あり、そのうち34件が資格証明書など健康保険証の制約があった方でした。
同調査による同様の事例は、2010年・平成22年と11年の42件をピークに、ここ数年は35件前後で推移しています。これは、被保険者資格証の発行など保険証に制約をかけることが健康に害を及ぼす危険性を示していると考えられます。
また同時に2008年・平成20年以前は数件に過ぎなかった経済的自由による死亡事例が近年20件を超え、場合によっては30件に迫っている状況は、アベノミクスによる国民の貧困の進行が命と健康に重大な影響を及ぼしている実態を見ることができます。
もともと国保税の滞納は、国保税が高すぎる状態が続いているところにあります。高すぎる国保税になっている原因には、1984年の医療費亡国論を背景にして、医療費の抑制に国が乗り出し、国保会計に対する国の負担方式を医療費の50%から給付費の50%に変更するなど、国が国保に支出するお金を絞ったところにありました。
こうした国のあり方に地方自治体の現場から声をあげていくことが、今後とも大切だと思います。
同時に、本市は、震災以降多額の繰越金を出しており、決算案である平成28年度には平成27年度から約27億2,100万円が繰り越され、その28年度は翌29年度に27億3,929万円余を繰越しました。
この状況は、国保税の引き下げが可能であるこが示されており、本格的にここに取り組んでいくことが求められていたと思います。来年度には国保制度が都道府県単位での運営に移行されることになっています。本市においては、病気になった際に、資格証世帯からの申し出によって、短期被保険者証を交付することに取り扱いが改善されておりますが、安心して国保制度を活用できるようにするために、国保税の引き下げのための本市独自の努力に加え、国の負担増加を求めるなどの取り組みを強めながら、被保険者資格証明書の発行はただちにやめることが必要だったと考えます。
従って被保険者資格証明書を発行した議案34号、平成28年度国民健康保険事業歳入歳出決算の認定については問題がありますので、不認定とすべきです。
以上、討論してまいりましたが、みな様のご賛同を心からお願いして私の討論といたします。ご清聴ありがとうございます。
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