昨日のことですが、交易社団法人いわき法人会が主催する姜尚中(かんさんじゅん)氏の講演会が開かれたので、あらかじめ申し込みをした上で聴講してきました。
同氏は、テレビのコメンテーターなどでお馴染みですが、東京大学大学院で教授などを務め同大名誉教授となり、昨年1月から熊本県立劇場の館長及び理事長を務めています。専門分野政治学と政治思想史です。
演題は「雲本地震後の日本の政治とアベノミクスの今後」。テレビのコメンテーターとしたのお話は何度も伺ったことがありますが、どんなお話をするのだろうかと半ばミーハーな気分で申し込んでみました。
講師紹介を受けて姜さんは、物静かでたんたんとした、テレビでコメントする時と同じような口調で話し始めました。
まず、トランプ大統領が就任することで政治状況が大きく変わってくるということから演題を変更することを告げ、「2016年への視座・世界潮流と日本」という演題で話しはじめました。
トランプ氏が大統領選挙で勝利した背景から入った姜さんは、リーマンショックなどを例にあげながら、経済のグローバル化のもとで世界の経済の動向がすぐにくらしを直撃する状況になり、米国では奨学金の支払いで大学卒業をしても破産に追い込まれる現実があることなどがあるために、ウォール街とつながっているとみられるクリントン氏ではなくトランプ氏に夢を託したと説明。新大統領の誕生には、国民の政治への強い不満があったことを指摘しました。
当選したトランプ氏は、大統領就任にともなってTPPからの離脱を表明していることから、今後日米2国間での貿易協定にむけた協議がすすむことになる可能性があるとしました。ここではTPP以上に厳しい条件で協定を締結することになる危険性があり、輸出企業にとってより厳しい状況になるかもしれないとしました。
そして、トランプ氏の登場で自由貿易体制崩壊の危険があり、トランプ氏のいうように企業の生産拠点が米国に移動することになれば、賃金などのコストが増加し企業利益が薄くなる結果、そのしわ寄せが部品製造などの中小企業に及ぶ可能性があることを指摘しました。
また、英国のEU離脱に続き、ドイツやフランスなどで右翼的潮流の政党が伸びている中で、これらの国にも離脱の動きが広がることで、EUそのものの崩壊の可能性にも話が及びました。
次に姜さんは日米関係に話をすすめました。
トランプ氏の登場で対日関係も変わるといます。
日本は在在日米軍経費の7割から8割を負担しているにもかかわらず、もっと負担を増やせと要求しています。この圧力を受けて政府は(1)自衛力を高める(2)貿易通商条約で米いいなりにする、という選択をせざるを得なくなる可能性があり、「米国が自由貿易を守り、日本を守ってくれるという先入観は捨てなければならないかもしれない」といいます。
また、これまで一つの中国の立場から台湾は中国の一部とみていた米国が、台湾に米軍の機能を置くことで中国への牽制力にするなども想定され、これからの世界情勢では「なんでもあり」の状況があるとも話しました。
さらに、英国では「英国はEUに巨額な拠出金を払っている」というウソを信じてEU離脱が多数になったり、日本はもうかっているという一方的な決めつけをトランプ氏がしたりするように世界をポピュリズムが席巻してあることと、ISが掃討されるシリアやイラクなどイスラム教シーア派が台頭することになるなど中東情勢のきびしさを紹介し、「今年はなんでもありの年」になると説明しました。
こうした中で地域の経済には、地域、地場の産業がすっかりスクラムを組んで対処する準備をすすめていくことが大切だと強調。地方の声をくみ取って政治に反映する政治家が昔はいたものの現在はみられず、今後、このような政治家の登場を期待したいとし、「政治は苦しみの軽減と民の暮らしを支えていくことを忘れてはならない」と講演を結びました。
国と国との関係の中から世界の動きを紡ぎだすお話は、なるほどの思いを持って聞きました。
ただ少し残念だったのが、会場から出た質問に答えた時です。
会場からは、一つは消費税増税ではなく所得税による負担を増やすべきではないか、ということと・・あれ二つ目は・・年金制度の問題など将来に対する不安がぬぐえないのだが・・という30代の女性の話だったかな・・。
これらへの答えが、例えば消費税の問題は、おおむね支出のあり方を決めてから直間比率も含めて税の負担のあり方を検討すべきという答えだったのですけど、ちょっと中途半端感をぬぐえない回答になったことでした。このモヤモヤ感が、将来に期待を持てない思いを増幅させるのかな、という思いが浮かびました。
ま、それでもこうして貴重なお話を直接聞く機会を得られたことは、幸あることではあります。
企画し、呼びかけをされた法人会のみなさんに感謝です。
同氏は、テレビのコメンテーターなどでお馴染みですが、東京大学大学院で教授などを務め同大名誉教授となり、昨年1月から熊本県立劇場の館長及び理事長を務めています。専門分野政治学と政治思想史です。
演題は「雲本地震後の日本の政治とアベノミクスの今後」。テレビのコメンテーターとしたのお話は何度も伺ったことがありますが、どんなお話をするのだろうかと半ばミーハーな気分で申し込んでみました。
講師紹介を受けて姜さんは、物静かでたんたんとした、テレビでコメントする時と同じような口調で話し始めました。
まず、トランプ大統領が就任することで政治状況が大きく変わってくるということから演題を変更することを告げ、「2016年への視座・世界潮流と日本」という演題で話しはじめました。
トランプ氏が大統領選挙で勝利した背景から入った姜さんは、リーマンショックなどを例にあげながら、経済のグローバル化のもとで世界の経済の動向がすぐにくらしを直撃する状況になり、米国では奨学金の支払いで大学卒業をしても破産に追い込まれる現実があることなどがあるために、ウォール街とつながっているとみられるクリントン氏ではなくトランプ氏に夢を託したと説明。新大統領の誕生には、国民の政治への強い不満があったことを指摘しました。
当選したトランプ氏は、大統領就任にともなってTPPからの離脱を表明していることから、今後日米2国間での貿易協定にむけた協議がすすむことになる可能性があるとしました。ここではTPP以上に厳しい条件で協定を締結することになる危険性があり、輸出企業にとってより厳しい状況になるかもしれないとしました。
そして、トランプ氏の登場で自由貿易体制崩壊の危険があり、トランプ氏のいうように企業の生産拠点が米国に移動することになれば、賃金などのコストが増加し企業利益が薄くなる結果、そのしわ寄せが部品製造などの中小企業に及ぶ可能性があることを指摘しました。
また、英国のEU離脱に続き、ドイツやフランスなどで右翼的潮流の政党が伸びている中で、これらの国にも離脱の動きが広がることで、EUそのものの崩壊の可能性にも話が及びました。
次に姜さんは日米関係に話をすすめました。
トランプ氏の登場で対日関係も変わるといます。
日本は在在日米軍経費の7割から8割を負担しているにもかかわらず、もっと負担を増やせと要求しています。この圧力を受けて政府は(1)自衛力を高める(2)貿易通商条約で米いいなりにする、という選択をせざるを得なくなる可能性があり、「米国が自由貿易を守り、日本を守ってくれるという先入観は捨てなければならないかもしれない」といいます。
また、これまで一つの中国の立場から台湾は中国の一部とみていた米国が、台湾に米軍の機能を置くことで中国への牽制力にするなども想定され、これからの世界情勢では「なんでもあり」の状況があるとも話しました。
さらに、英国では「英国はEUに巨額な拠出金を払っている」というウソを信じてEU離脱が多数になったり、日本はもうかっているという一方的な決めつけをトランプ氏がしたりするように世界をポピュリズムが席巻してあることと、ISが掃討されるシリアやイラクなどイスラム教シーア派が台頭することになるなど中東情勢のきびしさを紹介し、「今年はなんでもありの年」になると説明しました。
こうした中で地域の経済には、地域、地場の産業がすっかりスクラムを組んで対処する準備をすすめていくことが大切だと強調。地方の声をくみ取って政治に反映する政治家が昔はいたものの現在はみられず、今後、このような政治家の登場を期待したいとし、「政治は苦しみの軽減と民の暮らしを支えていくことを忘れてはならない」と講演を結びました。
国と国との関係の中から世界の動きを紡ぎだすお話は、なるほどの思いを持って聞きました。
ただ少し残念だったのが、会場から出た質問に答えた時です。
会場からは、一つは消費税増税ではなく所得税による負担を増やすべきではないか、ということと・・あれ二つ目は・・年金制度の問題など将来に対する不安がぬぐえないのだが・・という30代の女性の話だったかな・・。
これらへの答えが、例えば消費税の問題は、おおむね支出のあり方を決めてから直間比率も含めて税の負担のあり方を検討すべきという答えだったのですけど、ちょっと中途半端感をぬぐえない回答になったことでした。このモヤモヤ感が、将来に期待を持てない思いを増幅させるのかな、という思いが浮かびました。
ま、それでもこうして貴重なお話を直接聞く機会を得られたことは、幸あることではあります。
企画し、呼びかけをされた法人会のみなさんに感謝です。
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