伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

被災地と国の政策の食い違いが明白になった課題検討/議長会研究フォーラム

2015年11月19日 | 政治
 全国市議会議長会研究フォーラムin福島の2日目、前日と同じ福島県文化センターで「震災復興と議会~議会からの報告」と題したパネルディスカッションが行われました。

 コーディネーターは東北大学情報科学研究科准教授の河村和徳氏がつとめ、
伊藤明彦氏(陸前高田市議会議長)、
熊谷伸一氏(気仙沼市議会議長)、
平田 武氏(南相馬市議会議長)、
の3氏が事例報告を行い、会場からの質問に答えました。



 3氏からはそれぞれの市の被災と復旧・復興の取り組みの状況と、その間の市議会の取り組みが報告されました。

 議会報告会や懇談会繰り返し開いて住民の要望をまとめ、災害対応にてんやわんやの市に届けたなどの状況が報告されました。この中で南相馬市の報告が他の2市とは比べても異彩を放ちました。

 大船渡市、気仙沼市は、基本的に震災・津波で被害への対応で、まちの復旧・復興の手法に多少の違いはあれ、義捐金の配分等被災者の対応に大きな違いはありません。

 ところが、原発事故で放射性物質に汚染された福島県の南相馬市では、20km、30kmという距離による賠償格差など、震災被害に見られない格差が持ち込まれ対応が難しい上、20km圏内は立ち入ることができず「(復旧・復興に)一歩を踏み出せないでいると感じている」という状況があるというのです。あらためて原発事故の被害の異質さ、深刻さを感じながら聞いていたわけですが、こうしたことを繰り返してはならないと、参加した全国の市会議員さんたちが感じてくれていればいいな、そんな思いが湧きあがります。

 また、地方創生に関しては「もともと人口減少の課題があり、復興に向けたプラス程度にとらえている」(熊谷氏)、「地方創生や一億層活躍という前に、復旧・復興が必要だ。行革でマンパワーが不足する中、計画づくりも難しい」(伊藤氏)、「地方創生の前に復旧がすすんでおらず、そこまで行っていないのが現実」(平田氏)と、昨日の有識者によるパネルディスカッション同様、否定的な見方です。昨日の「地域振興や復旧・復興に寄せられた人々の関心を『上書更新』して、忘れさせようとしている」との指摘が、あらためて脳裏に浮かんできました。

 河村氏は、この意見交換の中で、

 一つが、災害時に対応に追われる自治体に、議会が住民の要望を伝えるというプロセスが確認された、
 二つ目に、住民の生の要望をそのまま伝えるのではなく、財源問題も含めて要望を集約して伝える役割を果たしており、議会が住民と行政の板挟みにあったと確認される、
 三つ目に、議会事務局自身が被災した事例もあり、二元代表制の一方である議会の専門性をどう発揮するかが問われる、

と3つの事が明らかになったとまとめましたが、この視点も含めていわき市議会の災害後の対応を見つめてみることも、今後の議会のあり方にとって大切かなと思いました。

 この2日間の研究フォーラムでは、国と地方の間に乖離・対立があるということをあらためて感じざるをえませんでした。だからこそ今後の方向で大切なのは、昨日のパネルディスカッションで福島市議会議長が最後に発言した「国に物申す議会をめざしていきたい」にあると思います。

 本来、地方議会は国から独立して住民のためにあるのですから当たり前のことなのです。しかし、その機能が弱かったということは否めないので、こうしたお話が出てくるのでしょう。気付いたのだから改める。その姿勢こそ議会に求められているのだと思います。

 昨日のパネルディスカッションに触発されて、本を3冊もとめてきました。

限界集落の真実―過疎の村は消えるか?(山下祐介著)
地方消滅の罠―「増田レポート」と人口減少社会の招待(同)
地方創生の正体―なぜ地域政策は失敗するのか(山下祐介/金井利之著)

いずれもちくま新書ですが、しっかり読んでみたい。


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