なでしこ
花を育てることが好きな母の影響か、見よう見まねでプランターや花壇で草花を育てるうちに、知らぬ間にすっかり趣味の園芸家となってしまった。勤め人なので、週末園芸家である。休日も日のあるうちは、外で園芸作業をしていることが多い。勤め先でも、気がつくと、外回りの掃除と共に、小さな植え込みやプランターの世話係となってしまった。
朝一番に箒とちりとりを手に、剪定鋏をエプロンのポケットにしまい、玄関先や駐車場のゴミ拾いとともに、植え込みやプランターの草花を見回る。盛夏となると、朝夕2回の水やりだけでも時間をとられてしまうが、さらに枯れた花や黄ばんだ葉や雑草を見つけると、ついつい無視出来ないで、手を出してしまう。
「大変ですね」と近所の人に声をかけられるが、大変だとは思ったことがない。
むしろ時間さえ許せば、そのまま何時間も園芸作業のみを続けたいと思う。ただし、夏は朝から日差しが強く、暑い上に、しつこくまとわりつく蚊に閉口する。少しばかりの血は何も言わず恵んであげるから、痒い思いをさせないでほしいものだ。
日々の園芸作業の中心は、水やりと施肥、草取り、しぼんだ花を摘み取ったり剪定をすることだが、私はどうしてもその中の剪定が苦手である。花が次々に咲いていると、少々姿が乱れていても、そのままにしてしまう。
本当は切り戻しと言って、姿が乱れ始めたら、花があろうが、なかろうが思い切って1本の茎の3分の1くらいから切ってしまう作業をする。その方がまたすぐに株全体がイキイキとして、立派な花が咲き、全体の姿も美しく、長く花も楽しめる。それがわかっていても苦手だ。
咲いている花やつぼみを摘み取ることが可哀想で、ついつい切り戻すタイミングが遅れてしまい、結果的に花全体が衰えてしまう。やっと最近、少し切り戻しが出来るようになった。
そうやって我が家の小さなプランターで、ナデシコの花が数年間咲き続けている。
ホタルに似た虫が飛んで来て花を食べられてしまうこともある。水涸れを起こし、ほとんど枯れそうになったこともある。しかし、真っ赤と濃いピンクのナデシコ同士の寄せ植えは、次々に花を咲かせて見事だ。これも剪定の業を修得したからこそかもしてない。そして剪定した枝は挿し芽をして、他のプランターや知人に分けたりもしている。
サッカー女子W杯でみごと優勝をしたなでしこジャパン。
サッカー女子日本代表には、「大和撫子」という言葉や、花のナデシコより強いイメージがあり、私はその愛称に違和感を持ち続けていた。いいネーミングだけど、スポーツチームの愛称にしては、線が細いイメージがあった。事実、今回のW杯のサッカー女子日本代表には、先制点を取られても、再度突き放されても最後まで諦めず逆境を跳ね返した強さがあった。その力は英語のパワーとは違う、日本特有のものかもしれないが。
今朝、少し前に短く切り戻しをした我が家のナデシコに、また咲き出した花を見つけて、ふと思った。
サッカー女子日本代表チームは、切り戻しをされ、枯れそうになっても、春先には大きく束のように花を咲かせるナデシコの花の名がやはりふさわしいと。試合直前や、ハーフタイム、PK戦の前も、カメラは、固い表情のアメリカ選手と対照的な、笑顔のなでしこジャパンの選手達を映していた。その選手一人ひとりの笑顔こそ「なでしこ」の花である。なでしこジャパンの皆さんは現代日本の新たな「大和撫子」なのかもしれない。
(2011.7.19)
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