雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

舫綱~悲しきこころ

2014年04月07日 | ポエム

 舫綱~悲しきこころ


ぼくの喜びの日に
声をふるわす父
泣いている母
ぼく自身は
涙さえ出なかったというのに‥‥

親は 子の乗る舟に綱をつけ
沈みそうになったら
いつでも助けようとする
出来れば 子に
自分が築いた沈まない船に
もう一度 乗せようと願う

片手でひねると消えそうな赤子のいのち
親にすべて委ね
乳を飲むことと
泣くことと
眠ることしか知らない小さないのち
( ぼくもそこから 育ってきた )

親と子を繋ぐ舫綱を
ぼくは今 切ろうとしている
親から遠く彷徨うことを
ぼくは今 夢にさえみている

ああ、人よ
そんなぼくを
不孝者と言わないでおくれ

子を思う親は 人間のいのち
親を思う子は 野生のいのち

ぼくは 自分の選んだ道を恨む
ありがたい親であればなお
ぼくは 唇を噛みしめる

でも ぼくはやはり
野生のいのちを生きるだろう
そして いつか父となった日に
やはり人間のいのちを生きるのだろう

ぼくは 忘れないぞ
この日の感謝を
決して忘れないぞ

( それだけが ぼくに出来る孝行なの )

(1978.3.14~2014.4.7) 





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