雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

アレルゲン

2014年03月17日 | エッセイ

 アレルゲン


 今年のピークは過ぎたという話しだが、目が痒い。鼻もむずむずする。どうも花粉が原因らしい。私の場合、症状の出現は年によって違い、ほとんど症状無しでシーズンを終えてしまうことも多い。
 そのたまに出現する症状も花粉症でお悩みの方に比べたら可愛らしいということになるだろう。鼻水が意思と関係なく出続けて鼻の穴が赤くなってしまうのは、年に1日か2日。むず痒くて涙が出る程度の目のかゆみは数週間に渡って続くものの、可能なら目玉をいったん取り出して水でジャージャー洗ってしまいたい日は数日で済んでいる。予防薬もあるのだが、たまらなくて目薬を処方してもらったことがある以外は、何の治療も対策もしたことがない。
 小さい頃は今で言うアトピー性皮膚炎だったらしい。頭皮がカサカサで瘡蓋ができていたと、叔母から言われたことがある。私の家系にはアレルギーの体質が遺伝的にもあるのかもしれない。私の子どもには症状は出なかったが、甥や姪にはアトピーや喘息で苦しんだ者も多い。亡くなった父の手は、やはりアレルギーでカサカサにささくれだち、毎日絆創膏(ちなみに熊本ではリバテープと言います)を指に巻いていた。医師であった父は日光皮膚炎と言っていた
 高校生の頃だったか、親戚の法事か何かの集まりがあり、実家の近くの料理店の広い座敷で宴会があったが、そのときに年増の仲居さんが父にお酒の酌をしながら「センセイのこのカサカサの手が良かとよねえ」と言い出し、父が慌てて発言を止めていたのを思い出す。聞こえなかったふりをした息子は、大人のジョークに「にやり」とした。
 数年前から冬場になると、私の手の指の数本がカサカサになり、節がぱっくり裂けた状態になる。恐らく食器を洗う際に、お湯を使い、ただでさえ油気が少なくなっている皮脂が欠落してしまうのだろう。今年も一時アカギレ状態まで進行したが、保湿剤のクリームを処方してもらい、手を洗う度に手の水気を拭き取った後に、保湿剤を塗っていたらみるみる良くなってしまった。アカギレの際は避けた部位がヒリヒリと痛く見てくれも悪いので、父がしていたように絆創膏を1日何回も取り替えて使った。確かに絆創膏をすると空気に触れないせいか痛みが幾分治まり、たぶん父も同じ理由で絆創膏をしていたのだろうなと思った。
先日久しぶりに会った友人夫婦のTさんの奥さんは、旦那さんの身体を爪で「カキカキ」していた。掻いてくれと言われた訳ではなく、本を読んでいたり居眠りをしている旦那に横からちょっかいを出すのだ。掻かれた旦那は、「ここ痒いでしょう」と奥さんの爪でかかれた周辺が本当に痒くなってしまうらしいから、まったく迷惑なおせっかいだった。
 私の家人も金属アレルギーや日光皮膚炎がある。背中が痒いと言ってよく自分でボリボリ掻いている。今年の誕生日には「孫の手」を買ってあげようかと思っている。一緒にテレビを見ているときに「痒い」「痒い」というので、可哀想になって手の届かぬところを掻いてあげたりする。それなのに家人が先日「考えたらあなたが家にいるときに限って痒くなるわ」と憎まれ口をたたきだした。
 そうか。私は自らもアレルゲンでもあったのか‥‥。
(2014.3.14)

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