雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

黒髪の

2013年10月17日 | ポエム

▲花と蝶 (自宅の庭のタカラヅカとモンキチョウ? 2013.10.14)


 黒髪の

おれの一日
おれの作る時間
中途半端な
時と時の間に
おれの胸をしめつける

汗をふいて
ため息をついて

おれは何を求めている
故郷にいることは
それだけでしあわせではないか
おれは何を求めている

まっすぐな
黒い髪の少女を

(創作年不詳~3013.10.11)

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石の安らぎのインテリア

2013年10月15日 | ポエム

 石の安らぎのインテリア

 二十年程前に私はパリのあるアパルトマンの寝室のベッドの上で、毛布から出した足でベッドの横の壁を撫でまわしていた。その壁には直径がニ、三十センチぐらいのまるい自然石が一面に埋め込まれていた。壁から突き出た石の半面を一個一個足の裏でたどりながら、ひんやりとしながら何処か暖かい石の感触に夢中になった。そして私は深夜の真っ暗な部屋で、何かに包まれているような安らぎを感じていた。
 もし私がインテリアを自由に作れるとしたら一面にはぜひその安らぎの石の壁を作りたい。
 その石の壁の反対側は全面ガラスの壁にしたい。ガラスの外には室内の床面とフラットに芝生の小さな庭が続き、一本の落葉樹だけがある。そのシンプルな庭は四季の移ろいと天候を告げるインテリアの一部と考える。自然を取り入れた癒しの壁である。
 もう一つの壁は、天井までの本棚にしたい。私の生活の一部である読書。壁一面の本棚に並んだ愛読書は私の生活を見つめ、励まし、刺激を与える智の壁となる。
 智の壁の反対側は白い重厚感のある漆喰の壁にしたい。私は日に何度かはその何もない無の空間を眺め、あらゆることを夢想する。白壁は私に想像と希望を与える。
 床は加工していない自然石を敷き詰めた石畳みとし、天井は黒ずんだ太い古材の梁をむき出しにして梁と梁の間は白い漆喰で埋める。
 家具はその存在を主張しない単純な形の丈夫な木製の物に統一したい。ベッド、机、椅子の最低限必要なものだけに限りたい。
 ガラス面はシンプルにブラインドで明るさを調整し、夜は複数のフロアライトで照明。部屋は日照と照明により一日の中でいろいろな表情を見せてくれる。
 住まいとして最も大切な安らぎと、さらに癒し、智、創造を加えた四つの壁は、インテリアを越えて私の身体の一部となる。
(WACOA 壁装材料協会 第5回明日のインテリア・アイデアコンクール B部門努力賞受賞作 2000年?)

 以上は、表記のとおり壁材料協会というところが募集した懸賞論文に私が応募し受賞した800文字の小論文だ。B部門239点の作品の中から受賞した6点に選ばれている。審査委員の中には、エッセイストの安藤加津さんの名前もあった。この論文の中に、私が本好きで、壁いっぱいの理想の本棚のことも書いてあるが、この夢の家とは違って、我が家には小さな本棚がある。心配性の家人から本の加重が気になると言われ、本棚を整理していたら、受賞作品を掲載した小冊子が出て来た。久しぶりに自分の作品を読み、面白いと思ったので、このブログに改めてアップしておこうと思った次第だ。この論文を書いた時分は、仕事に余裕が出来てきて、もともと書く事が好きだっただけに、いろんな懸賞論文に応募していた。ただ今回の論文については、もしかしたら私の家を設計した建築家からの応募のススメがあって書いたのかもしれない。
 もし、私が一人暮らしをすることになり、もう一軒家を作ることになったら、このような家を作ることになるかもしれない。現在住んでいる我が家ですでに実現しているアイデアもあって、芝生の庭とほとんどフラットな床面は、石畳ではないが、土足のコンクリートのたたきとなっている。庭に面する大きなガラス窓も一致している。漆喰ではないが、二階建ての建物を中心で貫くらせん階段は、珪藻土という厚い土壁が覆っていて、私のお気に入りだ。
 あらためて要項を読むと、懸賞金は4万円。原稿用紙2枚で4万円は、小遣い稼ぎには率がいい。この頃は結構、小金を稼いでいたと思う。宝くじの当選者が、黙っておれずにいつか回りが知ることとなると聞く。私も受賞したことがうれしくて家人に黙っておれなくて、多分賞金の半分以上は、家人のために遣ってしまった。それもまたうれしいことだった。(2013.10.10)
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山-2

2013年10月11日 | ポエム


 山-2


美しい女がいる
僕の掌で
出来ることなら そっとつつみ
なでまわし
眠っている、ひとつのこころ

(気がつくと僕が見える)

大の字になり
だきつき
大声で叫び
ひっそりと 恐ろしくしずかな、
そして どうしようもない強さのなかで
子供のように怯えている

(本当は子供は山を怯えないものだ)

ああ、
何とやさしいのです
すべてを見つめて
すべてを知り
すべてを許し
生まれ来る心のいのち
死にゆく心のはか
そして
動くことのない 僕のゆりかご

(不明~2013.10.10)

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星-2

2013年10月08日 | ポエム


 星-2


考え方によっては
何でもないことが
考え方によっては
すべてをむなしくしてしまう

明るい陽射しは
いつか西の海に沈んでしまって
影になった山の上の
あの星の光だけが
僕の心をあたためてくれる

考え方によっては
笑ってすませることが
考え方によっては
恐ろしく深刻になる

だからといって
考えまいとすることは
逃げることですか
負けることですか

(1972.12.13~1976.12.1)

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「みをつくし料理帖 残月」を読んで

2013年10月07日 | エッセイ

▲天高い秋の空(2013.10.6)


 「みをつくし料理帖 残月」を読んで

 このブログの2012年の9月28日に公開した「テレビドラマの原作 みをつくし料理帖」にも書いたが、近年ハマった小説に高田郁の「みをつくし料理帖」のシリーズがある。横浜の姉が教えてくれた本で、姉が自らの帰省の際に「面白いから」と最初の2巻を持ってきてくれた。その後も姉が本を買い、私が次に読み、私に似て本好きの娘に回し、その後で読む私の二人の妹も今やすっかり愛読者になっている。
 『天涯孤独の少女が大阪から江戸の街に出て様々な困難を乗り越えて、料理人として成長する姿を描いてある』料理をテーマにした時代小説だ。
 最初は正直、姉から借りた本を手にしても、それ程期待していなかった。ところが読み始めると、根が食べる事が好きな私だけに、すぐに話の展開が面白くなった。現代にも通じる上方と江戸の食文化の違い。それを大阪で修行した若い女料理人が江戸の人達にどのように受け入れてもらうか。その過程や個々の料理の作り方、季節の食材が描かれていて興味が募る。
 その上に、料理だけではなく、思っていた以上に読み応えのある深い内容である事に気がついた。主人公を含めて周りの登場人物が、それぞれに悲しい過去を持ちながら自分のことよりも周りの人のことを思いやり、親子や夫婦の情、友情、恋愛をからめて話が進んで行く。読み始めると、途中で止められず、寝不足になってしまうことも多い。まだ読んだことのない人には、オススメのシリーズです。
 それにしても、何と災害の多い物語だろう。主人公の澪が大阪で孤児になったのは、大水害が原因だし、そこで澪を救い、料理人への道を開いてくれた大阪の料理店「天満一兆庵」の店主の一家も大火ですべてを失い、澪共々、江戸に出てくることになる。江戸に出てからも、火災や水害にたびたび襲われ、主人公や周りの人々の運命を変えてゆく。でも物語の中の水害や大火は、史実に基づいて書かれているそうだ。
 その最新刊、みをつくし料理帖シリーズ第八弾の残月は、作家の創作ペースの都合で前作から間が空いて、姉も私も待ち遠しい書き下ろし文庫本の発行となった。最新刊では、大きな災害は起きないが、前号で起きた大火災の喪失感の中、物語は静かに進展し、次の新たな展開を予感させて終わる。
 本シリーズの魅力の一つは、主人公の育ての親である芳、主人公が料理長を勤める「つる屋」の主人、種市、そして「つる家」で働くふきやおりょうやりうと言った同僚の主人公への思いやりのあるまなざしが随所に感じられる点である。中でも私のお気に入りは、自称「つる家の看板娘」。隠居の身ながら芝居や戯作本にも精通し、客との絶妙なやりとりで、つる家に無くてはならぬキャラクターの、りうという老婆だ。年老いての他人の再婚話を聞いたりうは、うっとりとした表情で、歯の無い口を開く。
 「ひとは歳を重ねるだけ、寂しくなっていく。誰かを支え、誰かに支えられてこそ、生きる望みも湧くというものです。『貞女ニ夫に見えず』だなんて余計なお世話、あたしだってまだ捨てたもんじゃありませんよ」
 夢見る口調のりうを横目で見て、種市は、桑原、桑原、と震え上がった。
 さらに、行方不明だった一人息子が見つかりはしたものの、息子の生活や将来を考え思い悩む芳に対して、皺だらけの手を伸ばし、母親の腕を優しく撫でながら言う。りうの助言は、芳ばかりでなく、私を含めた人生の終着点が見えてきた読者に生きる希望や標を示してくれている。
 「子の幸せと親自身の幸せを混同しないことです。いっぱしに成長したなら、子には自力で幸せになってもらいましょうよ。そして、親自身も幸せになることです。ひとの幸せってのは、銭のあるない、身分のあるなしには関係ないんです。生きていて良かった、と自分で思えることが、何より大事なんですよ」
 「生きていて良かった、と自分で思える‥‥‥」
 ゆっくりと噛み締める口調で、芳は老女の言葉を繰り返す。
(高田郁著・「残月 みをつくし料理帖」・ハルキ文庫 ・2013.10.4)
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