■凍てつく太陽/葉真中顕 2019.5.13=No.2
2019年版 このミステリーがすごい!
国内篇 第9位 凍てつく太陽
葉真中顕著 『凍てつく太陽』 を読みました。
第9位とは思えない面白さです。
ぼくの感覚では、ベスト5に入れてもいいくらいに感じました。
ヨンチョンの存在が物語の幅を拡げ、潤いを与えている気がします。
ヨンチョン、「君は、いい奴だなあ」と声をかけてしまった。
卑屈というのは、自分の弱さをよく知っているということだ。だからこそ、強い者の顔色を窺い、誇りを捨てて頭を垂れる。卑屈であることは弱き者にとっての唯一の生存戦略だ。
「北海道旧土人保護法」
大和人は、そんなアイヌを勝手に皇国臣民なんてもんにしちまった。みんながみんな、天皇陛下の子供だって言うじゃねえか。そんで土地も、言葉も、神も奪った。豊かさとやらをぶらさげて、こうすんのが幸福だって、騙くらかしてな。ところがどうだ。大和人に憧れて村を捨てた先にあったのは地獄だ。
この世界のすべては何かの使命を抱き人間の世界で生き、やがてそれを果たして神の世界へと帰ってくる。おまえが「死」と呼ぶものは、万人に等しく必ずやってくる。すべては早いか遅いかに過ぎない。生きることはすなわち、使命を果たすための、時間を稼ぐことだ。
現実の世界には終末などない。戦争が終わったあとも、世界は続く。
「そうかよ。じゃあ室蘭に着いたら別行動だな」
ふざけるな。おれは貴様らとは違う。貴様らは国家に仇なす害虫だ。死んで当然の者たちだ!
----それは見解の相違だね。私に言わせれば、きみのように、大局を見ずに盲目的に国家に従うことが、害悪なんだよ。
国家について、深く考えさせられる内容を含んだミステリでもあります。
『 凍てつく太陽/葉真中顕/幻冬舎 』
2019年版 このミステリーがすごい!
国内篇 第9位 凍てつく太陽
葉真中顕著 『凍てつく太陽』 を読みました。
第9位とは思えない面白さです。
ぼくの感覚では、ベスト5に入れてもいいくらいに感じました。
ヨンチョンの存在が物語の幅を拡げ、潤いを与えている気がします。
ヨンチョン、「君は、いい奴だなあ」と声をかけてしまった。
卑屈というのは、自分の弱さをよく知っているということだ。だからこそ、強い者の顔色を窺い、誇りを捨てて頭を垂れる。卑屈であることは弱き者にとっての唯一の生存戦略だ。
「北海道旧土人保護法」
大和人は、そんなアイヌを勝手に皇国臣民なんてもんにしちまった。みんながみんな、天皇陛下の子供だって言うじゃねえか。そんで土地も、言葉も、神も奪った。豊かさとやらをぶらさげて、こうすんのが幸福だって、騙くらかしてな。ところがどうだ。大和人に憧れて村を捨てた先にあったのは地獄だ。
この世界のすべては何かの使命を抱き人間の世界で生き、やがてそれを果たして神の世界へと帰ってくる。おまえが「死」と呼ぶものは、万人に等しく必ずやってくる。すべては早いか遅いかに過ぎない。生きることはすなわち、使命を果たすための、時間を稼ぐことだ。
現実の世界には終末などない。戦争が終わったあとも、世界は続く。
「そうかよ。じゃあ室蘭に着いたら別行動だな」
ふざけるな。おれは貴様らとは違う。貴様らは国家に仇なす害虫だ。死んで当然の者たちだ!
----それは見解の相違だね。私に言わせれば、きみのように、大局を見ずに盲目的に国家に従うことが、害悪なんだよ。
国家について、深く考えさせられる内容を含んだミステリでもあります。
『 凍てつく太陽/葉真中顕/幻冬舎 』