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ケイトが恐れるすべて  磁石が引きつけるように、わたしは異常者を引きつける

2019年11月18日 | もう一冊読んでみた
ケイトが恐れるすべて/ピーター・スワンソン  2019.11.18  

そしてミランダを殺す』 以来、二作目のピーター・スワンソンのミステリ。
面白く読みましたが..........。

巻末の解説で、川出正樹氏は、スワンソンの作品の魅力を以下のように述べている。

 ゴシック・ロマンスの舞台に深刻な事情を抱えた男女を配し複数の視線を用いて愛憎劇を演出した作者の手並みは見事という他はない。
 そう、一にアイディア、二に視点。

 二〇一〇年代に書かれキャラクター主体の所謂<イヤミス>寄りの小説とは力点の異なる、懐かしくも新しいサスペンスを生み出したピーター・スワンソン。


そうかも知れないが、ぼくは、好きになれる登場人物が一人ぐらいは、出てきて欲しいかった。
唯一、個性的な人物が、アラン・チャーニーではねえ。
少し、興ざめしてしまう。

ケイト・プリディー は、独白する。

 わたしには必ず悪い人間が寄ってくる。

それでは、彼女の人物像を追ってみましょう。

 そのあいだにガラスの天板のコーヒーテーブルが据えてある。ケイトはガラスのテーブルが嫌いだった。その上に何か置けば必ず、たちまちガラスが砕けるか、少なくともひびが入るだろうと考えずにはいられなかった。彼女は常につぎの瞬間、悲劇の瞬間を生きている。だから昔から、低い手すりや、往来の激しい道路の横断や、複数の皿を運ぶウェイターが大嫌いだった。

 不安に支配された彼女の人生のパラドックスのひとつは、やや向こう見ずな行動を取っている最中にこそ、もっとも正常な感じがすることなのだ。それはまるで、常に彼女とともにある不安に、存在理由が与えられるかのようだった。

 悪いことが怒ると、世界中が注目する。ケイトは普通の人よりそれをよく知っていた。

 生まれてからずっと彼女の人生は、まもなく悲劇が起こるという自らの確信に左右されてた。

 ケイトはその待ち受け画面が、紫と黒の映画のポスター、「エクソシスト」のものであることに気づいた。それは好きな映画のひとつだったが、そのことには触れなかった。過去のトラウマや、自身の想像力の暴走に悩まされていながら、昔からずっと彼女はホラー映画が好きだった。本物の心配が心を鎮めるように、そういった映画も彼女の心を鎮めるのだった。

他の登場人物の人物像もみておきましょう。

 ふたたび二十歳にもどり、夜明けの寒さのなか、ついに童貞を失って、リージェンツ・パークの向こう側のクレアのフラットから歩いて帰るところのような気がした。あのときの彼は幸せで、舞い上がらんばかりだったが、その思い出は、実にたくさんの理由により、胸の痛むものだった。ふたたびこの地を訪れたのは、やはりまちがいだったのかもしれない。コービンはそんな気がした。

 これまでのことは、彼のせいではない。問題は実は、彼が過去につきあってきた、救いようのない、未熟な女の子たちだったのだ。彼に必要なのはただ、本物の女を見つけることだけだった。そしてついに、そういう女が見つかったのだ。

 ヘンリーは応えた。
 「ときどき、何もかもが正常に見えて、この世がちゃんと本来の状態にあるように思えるんだ。ところがつぎの瞬間、彼女はもうこの世にはいないんだって気づくんだよ。オードリーは死んだ。それでも世界は彼女と一緒に止まってはいないんだって」


 半分はコービンのもの、もう半分は俺のもの。

さて、みなさんは、読後、ケイト・プリディーには、これからどのような人生が待ち受けていると想像されましたか。 幸せな人生でしょうか。


    『 ケイトが恐れるすべて/ピーター・スワンソン/務台夏子訳/創元推理文庫 』



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