マイブログ2021.3.5付けで唯川恵さんの本『肩ごしの恋人』を初めて読みましたという記事を書いたが、面白かったので、2冊目の短編集も読んでみた。タイトルの本である。
この短編集は2007年に刊行されたものだが、8つの短編からなっていて、短編にはそれぞれ題名がついている。
題名を書くと、
『真珠の雫』『つまずく』『ロールモデル』『選択』
『教訓』『約束』『ライムがしみる』『帰郷』であり、『愛に似たもの』というタイトルのものはない。
これらの短編は1話が約30ページで非常に読みやすいうえに、最後に話のオチがついている。
どういうオチかは言えないが、なんだか切ない。
話はほとんど30代の女性が主人公で、独身か結婚して離婚しているか、結婚してもうまくいっていないかである。
どう面白いかというと、それぞれの女性が「幸せ」を追求している。それも、平凡な幸せである。
ところが、それが、なかなか手に入らないという話である。
どこで、どう間違えたのか考えさせられるものばかりである。
特に最後の『帰郷』という話は奥が深い。
母親のような弱い女性になりたくなくて、故郷を飛び出し、整形までして生き方を変えて、お金持ちになったふりをして母親の危篤時に帰郷した。(実はある人に出資してもらっている)
病院で、看護師さんに「あなたの母親は幸せだ」と言われる。
なぜって聞くと、「入院してからずっと付き添ってくれる人がいるから」と。
母親のようになりたくないと思って生きてきたのに?!
幸せと思っていた生活を手に入れたのに、時々幸せからどんどん遠ざかってしまうような気がする。
というこの矛盾。
「幸せ」は他人から援助を受けるのではなく、自分の力で手に入れないといけないのだろうと考える。
また、他人との比較ばかり考えていてはいけないと思わされた。