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マーケティング研究 他社事例 603 「武田薬品工業の戦略」 ~売らないから一転して売却の意図~

2020-07-17 10:13:35 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 603 「武田薬品工業の戦略」 ~売らないから一転して売却の意図~


武田薬品工業(以下、TCHC)がOTC子会社、武田コンシューマーヘルスケア(千代田区)を売却する方針を固めました。

OTC国内最大手の大正製薬などが名乗りを上げそうで、売却額は4000億円程度まで膨らむことが予想されています。

OTCは一般用医薬品の事で大衆薬と言われるものです。

OTCは処方箋が無くてもドラッグストアなどで購入できる医薬品です。

TCHCの主力商品はドリンク剤やビタミン剤の「アリナミン」、風邪薬の「ベンザブロック」で、2019年3月期の売上高は641億円、純利益は96億円でした。

武田薬品はファイナンシャルアドバイザーとして野村証券を雇って売却に向けた入札の準備を進めており、複数の買い手候補に打診しました。

一次入札の締め切りはGW明けでした。

武田薬品は、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の20倍程度での売却を求めていると言われています。

TCHCのEBITDAは約200億円で売却希望価格は4000億円程度になる計算ですが、買い手候補からは「さすがに割高」との声もありました。

交渉が武田側の思惑通りに進むほかは不透明な面もあるとの事です。

最有力の買い手候補とみられるのが、ドリンク剤「リポビタン」シリーズや風邪薬「パブロン」などを展開する大正製薬です。

資金力に優れる外資系のプライベートエクイティーファンドも手を挙げるとみられています。

OTCは国内シェア13%程度とみられる大正製薬が頭一つ抜けており、ロート製薬やTCHC、第一三共ヘルスケアが5~7%程度で追っています。

大正製薬がTCHCを買収すればシェアは約2割となり、2番手以下を一気に引き離します。

TCHCの主力商品であるアリナミンはビタミンB1欠乏症の治療薬として1954年に錠剤で発売しました。

1987年発売のドリンク剤も大ヒットし、武田薬品工業を象徴する商品になりました。

アリナミンで得た資金を医療用医薬品の開発に注ぎ、後に「タケプロン」(潰瘍治療薬)や「アクトス」(糖尿病治療薬)といった大型薬の開発につなげてきました。

長く経営に貢献して来た事業の売却に踏み切るのは、2019年にシャイアーを6兆円で買収し有利子負債が急増した為です。

かねて非中核事業を「100億ドル単位で売却して負債返済に充てる」と表明していた武田薬品です。

昨年、眼科用治療薬事業をスイスのノバルティスに売却していて、TCHCを手放せば、数字上の目標を達成することになります。

アリナミンは大量のテレビCMを流し、OTCは依然、竹田ブランドを消費者に印象付ける役割を果たします。

クリストフ・ウエーバー社長は、OTCを「売却しない」と2018年に明言していましたが、背に腹は代えられないという事です。

傷んだ財務体質に手を打つため、時を経るにつれて事業を残す選択肢は存在しなくなっていったのです。

日立製作所も御三家と言われた日立化成を昭和電工に売却しました。

企業が動く要因として新たに浮上したのが新型コロナウイルスです。

武田薬品工業の場合は、コロナ過と直接の関係はありませんが、「かつての主力というだけで抱える事業を売却する動きが増える」と、投資銀行の関係者は業界の動きを警戒しています。



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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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