マーケティング研究 他社事例 605 「様々なコロナ・エフェクト」 ~メガバンクの与信コスト~
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う日本経済の収縮を受けて、5月15日「最大の懸念事項」とみずほフィナンシャルグループの坂井社長は決算説明会で、貸倒引当金など「与信コスト」の膨張に危機感を示すとして指摘しました。
みずほの場合で新型コロナウイルス関連の与信額は2020年3月期で1350億円、2021年3月期で2000億円に及びます。
確かに数字はリーマンショック時と比べると6割程度の水準ですが、坂井氏はこう続けます。
「本当にこの程度で済むのか?」
メガバンク首脳でさえ、コロナの影響を読み切れていない現状を映します。
与信コストは主に、融資が回収できなくなる事態に備え計上する貸倒引当金と、回収が不可能と判断した際の確定損失である償却額を足したものです。
景気が悪くなり企業業績が下振れすれば当然、そのコストは膨らみます。
与信コストはメガバンクではみずほ以外でも急増しています。
三井住友フィナンシャルグループだと1706億円が4500億円と2.6倍に、三菱UFJフィナンシャル・グループも2229億円が4500億円と2倍に跳ね上がっています。
メガバンク3行全体では今期の与信コストの予想額は1兆1000億円となり、11年ぶりに1兆円を超える見通しです。
「敵は未知なるコロナ」という背景も重なって、コストの見積もり方にも苦慮がにじんでいます。
国内では緊急事態宣言が解除されたものの、その収束時期と経済の回復時期はどうしても正確さを欠いてしまうからです。
三菱UFJは、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しを一つの参考値としました。
IMFは2020年の世界経済の成長率をマイナス3.0%、日本ではマイナス5.2%になると見込んでいます。
その経路としては4~6月期が最悪期で、7~9月期に徐々に回復し、2019年の状態に経済が戻るのは先進国においては2021年末になるという、このシナリオの現実性が高いと考え、三菱UFJはコストをはじいたと言います。
「今回(与信コスト)予想が立つのが悩んだが、一定の前提を出してマーケットと対話するのが責務と考えた」(亀沢社長)
みずほは、グループの調査部門が出した「4~6月期の日本のGDPが約25%減少し、年度換算で6.5%マイナスとなる」との試算を前提にしました。
三井住友は、今年度中はコロナの影響が残るとの前提で与信コストを見積もりましたが、「新型コロナが広範囲かつグローバルに影響しており、正直、詳細が分からない」(太田社長)と胸の内を明かします。
いずれにせよ、コロナで日本経済と企業業績の傷口が広がれば広がるほど、銀行経営の行方も危うくします。
貸倒引当金には、「一般」の引当金と、個社の経営状況を判断して計上する「個別」の引当金の2種類があります。
みずほの場合で、貸倒引当金の増加分(2020年3月期で1366億円)のうち、「一般」が1030億円と大半を占めます。
前期は各行ともにこの一般引当金が大きく増加した構造になりました。
しかし、2021年以降は個社の業績悪化が予想されます。
そもそもコロナ禍では、「安泰」の太鼓判を押せる業種などありません。
三菱UFJの亀沢社長が「与信コストの予想は業種、個社を丁寧にみた」と話したように、今後は個別引当金も膨らむ可能性が高いです。
これまでの景気回復期においては、過去の「我慢」や「痛み」が一時的に「潤い」に化けるケースもありました。
ここ数年、メガバンクの利益を押し上げたのは過去の引当金の戻しでした。
「それほど計上する必要がなかったお金」との言い換えも可能でしょう。
反対に、今後の景気次第では「もっと積む必要」に迫られています。
引当金積み増しの動きは3メガバンクに限りません。
りそなフォールディングスは「新型コロナの影響が2年は続く」(南社長)として今期の与信費用はほぼ倍増の500億円と予想しています。
新生銀行も引当金を明示こそしませんでしたが、相応の対応を覚悟しています。
現時点でメガバンクは、自己資本比率が15%前後です。
表向きは「リーマン危機時の10%弱と比べれば財務健全性が保たれている」とは言えます。
しかしコロナの長期化によって、金融機関の貸し出し態度が変化する懸念は残ります。
今でこそ、救済や成長を目的とする融資に前向きな銀行ですが、「そもそも本業が弱かった所まで助けるかは別。例えば業界1位から5位まで一律な対応は難しく、一定の選別をせざるを得ない」との声もあります。
銀行各行がひとまず見立てた未来予想図よりも、さらに深刻な事態に陥る可能性を今は誰も否定できません。
下記は彩りプロジェクトのご紹介です。
ご興味があればご一読下さい。
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メール info@irodori-pro.jp
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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣
新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う日本経済の収縮を受けて、5月15日「最大の懸念事項」とみずほフィナンシャルグループの坂井社長は決算説明会で、貸倒引当金など「与信コスト」の膨張に危機感を示すとして指摘しました。
みずほの場合で新型コロナウイルス関連の与信額は2020年3月期で1350億円、2021年3月期で2000億円に及びます。
確かに数字はリーマンショック時と比べると6割程度の水準ですが、坂井氏はこう続けます。
「本当にこの程度で済むのか?」
メガバンク首脳でさえ、コロナの影響を読み切れていない現状を映します。
与信コストは主に、融資が回収できなくなる事態に備え計上する貸倒引当金と、回収が不可能と判断した際の確定損失である償却額を足したものです。
景気が悪くなり企業業績が下振れすれば当然、そのコストは膨らみます。
与信コストはメガバンクではみずほ以外でも急増しています。
三井住友フィナンシャルグループだと1706億円が4500億円と2.6倍に、三菱UFJフィナンシャル・グループも2229億円が4500億円と2倍に跳ね上がっています。
メガバンク3行全体では今期の与信コストの予想額は1兆1000億円となり、11年ぶりに1兆円を超える見通しです。
「敵は未知なるコロナ」という背景も重なって、コストの見積もり方にも苦慮がにじんでいます。
国内では緊急事態宣言が解除されたものの、その収束時期と経済の回復時期はどうしても正確さを欠いてしまうからです。
三菱UFJは、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しを一つの参考値としました。
IMFは2020年の世界経済の成長率をマイナス3.0%、日本ではマイナス5.2%になると見込んでいます。
その経路としては4~6月期が最悪期で、7~9月期に徐々に回復し、2019年の状態に経済が戻るのは先進国においては2021年末になるという、このシナリオの現実性が高いと考え、三菱UFJはコストをはじいたと言います。
「今回(与信コスト)予想が立つのが悩んだが、一定の前提を出してマーケットと対話するのが責務と考えた」(亀沢社長)
みずほは、グループの調査部門が出した「4~6月期の日本のGDPが約25%減少し、年度換算で6.5%マイナスとなる」との試算を前提にしました。
三井住友は、今年度中はコロナの影響が残るとの前提で与信コストを見積もりましたが、「新型コロナが広範囲かつグローバルに影響しており、正直、詳細が分からない」(太田社長)と胸の内を明かします。
いずれにせよ、コロナで日本経済と企業業績の傷口が広がれば広がるほど、銀行経営の行方も危うくします。
貸倒引当金には、「一般」の引当金と、個社の経営状況を判断して計上する「個別」の引当金の2種類があります。
みずほの場合で、貸倒引当金の増加分(2020年3月期で1366億円)のうち、「一般」が1030億円と大半を占めます。
前期は各行ともにこの一般引当金が大きく増加した構造になりました。
しかし、2021年以降は個社の業績悪化が予想されます。
そもそもコロナ禍では、「安泰」の太鼓判を押せる業種などありません。
三菱UFJの亀沢社長が「与信コストの予想は業種、個社を丁寧にみた」と話したように、今後は個別引当金も膨らむ可能性が高いです。
これまでの景気回復期においては、過去の「我慢」や「痛み」が一時的に「潤い」に化けるケースもありました。
ここ数年、メガバンクの利益を押し上げたのは過去の引当金の戻しでした。
「それほど計上する必要がなかったお金」との言い換えも可能でしょう。
反対に、今後の景気次第では「もっと積む必要」に迫られています。
引当金積み増しの動きは3メガバンクに限りません。
りそなフォールディングスは「新型コロナの影響が2年は続く」(南社長)として今期の与信費用はほぼ倍増の500億円と予想しています。
新生銀行も引当金を明示こそしませんでしたが、相応の対応を覚悟しています。
現時点でメガバンクは、自己資本比率が15%前後です。
表向きは「リーマン危機時の10%弱と比べれば財務健全性が保たれている」とは言えます。
しかしコロナの長期化によって、金融機関の貸し出し態度が変化する懸念は残ります。
今でこそ、救済や成長を目的とする融資に前向きな銀行ですが、「そもそも本業が弱かった所まで助けるかは別。例えば業界1位から5位まで一律な対応は難しく、一定の選別をせざるを得ない」との声もあります。
銀行各行がひとまず見立てた未来予想図よりも、さらに深刻な事態に陥る可能性を今は誰も否定できません。
下記は彩りプロジェクトのご紹介です。
ご興味があればご一読下さい。
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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣