新型コロナウイルス感染拡大 糖尿病患者が絶対やるべき対策
新型コロナウイルスのニュースが連日報じられています。日本ではまだ大流行が認められる状況ではありませんが、ワクチンや薬がないと聞き、不安感を高めている人もいるでしょう。
海外旅行や海外出張を取りやめた人、人混みを避けるためにイベントやコンサートへの出席を控えている人もいると聞きます。
新型コロナウイルスへの対策として役立つのは、こまめな手洗いです。アルコール消毒なども利用して、料理や食事前、外出先から戻ったときなどに手洗いをする習慣を身に付けてください。
マスクは接触感染や飛沫感染の予防に役立つものの、マスクが手に入りづらい今は、風邪や感染症の疑いがある人に優先的に使ってもらい、そうでない人はガーゼマスクやタオルなど代用品で口をふさぐように。決して買い占めはしないようにしてください。米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスによる肺炎にはマスクを推奨しておらず、手洗いだけやればいいと述べています。
私は、マスクは重要な役割を持っていると考えていますが、マスクがなければ、とにかく手洗いは徹底して行うようにしてください。
■免疫力が低くもともと感染症にかかりやすい
そして、糖尿病の人はいつも以上に糖尿病対策に力を入れなくてはなりません。
1月29日付英医学誌「ランセット」電子版に、武漢の研究グループが先月1~20日に入院した99人を調査した結果が掲載されました。それによると、年齢は21~82歳で、平均年齢は55歳。糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病などの持病がある人が50人を占め、特に重症化した人に糖尿病患者が多かったのです。
糖尿病の人は免疫力が低く、あらゆる感染症にかかりやすくなります。日本糖尿病学会の調査では、糖尿病患者はがんに続いて感染症で命を落としやすい。水虫で足の指先が壊死して切断するケースが糖尿病の人に見られるのは、通常なら大したことがない程度の水虫でも、糖尿病の人は免疫機能が十分に働かず、一気に悪化してしまうからです。
インフルエンザで命を落とす人もいます。感染症によって体内に炎症が起こり、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの原因になることも指摘されています。また、糖尿病の人は尿路感染症にかかりやすく、膀胱炎、腎盂炎、腎盂腎炎と症状が重くなりやすい。歯周病の治療コントロールがうまくいかないことも、糖尿病の人によく見られます。
糖尿病の人がやるべき新型コロナウイルスへの対策としては、冒頭で紹介した手洗いなどの対策に加え、血糖コントロールを正常に保つ。一朝一夕でいい結果を出せるものではありませんが、努力はすべきです。過去1~2カ月の血糖コントロールを示すヘモグロビンA1cは、8%未満を目指してください。ヘモグロビンA1cは8%より高くなると免疫力が低くなるといわれているからです。また、インスリン注射や薬の服用を勧められている人は、この機会に前向きに検討してはいかがでしょうか? 早めの治療対策が、やがては「糖尿病と手を切れた」となるかもしれません。
中には、「そういえば、血糖値が高いと数年前の健康診断で指摘されたけど、不調を感じないから病院にずっと行っていなかった」という人もいるでしょう。現在の血糖コントロールがどうなっているか確認すべきです。
春~夏より秋~冬のほうが数値が高くなりがちなので、認識している数字以上に高値になっているかもしれません。
「病院に行く時間がなくて……」という人は、センサーを装着し、血糖読み取り用の機械を近づけるとすぐに血糖値を測定できる機器がアマゾンなどで安く手に入ります。目指す血糖値は70~180㎎/デシリットルで、この値に入っている時間帯を多くすることです。
日常的にできることとしては、月並みではありますが、睡眠をしっかり取り、規則正しい食生活を心掛ける。日頃の運動で心肺機能を高めれば、新型コロナウイルスに負けない体づくりにつながります。
(坂本昌也/東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授)
海外旅行や海外出張を取りやめた人、人混みを避けるためにイベントやコンサートへの出席を控えている人もいると聞きます。
新型コロナウイルスへの対策として役立つのは、こまめな手洗いです。アルコール消毒なども利用して、料理や食事前、外出先から戻ったときなどに手洗いをする習慣を身に付けてください。
マスクは接触感染や飛沫感染の予防に役立つものの、マスクが手に入りづらい今は、風邪や感染症の疑いがある人に優先的に使ってもらい、そうでない人はガーゼマスクやタオルなど代用品で口をふさぐように。決して買い占めはしないようにしてください。米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスによる肺炎にはマスクを推奨しておらず、手洗いだけやればいいと述べています。
私は、マスクは重要な役割を持っていると考えていますが、マスクがなければ、とにかく手洗いは徹底して行うようにしてください。
■免疫力が低くもともと感染症にかかりやすい
そして、糖尿病の人はいつも以上に糖尿病対策に力を入れなくてはなりません。
1月29日付英医学誌「ランセット」電子版に、武漢の研究グループが先月1~20日に入院した99人を調査した結果が掲載されました。それによると、年齢は21~82歳で、平均年齢は55歳。糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病などの持病がある人が50人を占め、特に重症化した人に糖尿病患者が多かったのです。
糖尿病の人は免疫力が低く、あらゆる感染症にかかりやすくなります。日本糖尿病学会の調査では、糖尿病患者はがんに続いて感染症で命を落としやすい。水虫で足の指先が壊死して切断するケースが糖尿病の人に見られるのは、通常なら大したことがない程度の水虫でも、糖尿病の人は免疫機能が十分に働かず、一気に悪化してしまうからです。
インフルエンザで命を落とす人もいます。感染症によって体内に炎症が起こり、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの原因になることも指摘されています。また、糖尿病の人は尿路感染症にかかりやすく、膀胱炎、腎盂炎、腎盂腎炎と症状が重くなりやすい。歯周病の治療コントロールがうまくいかないことも、糖尿病の人によく見られます。
糖尿病の人がやるべき新型コロナウイルスへの対策としては、冒頭で紹介した手洗いなどの対策に加え、血糖コントロールを正常に保つ。一朝一夕でいい結果を出せるものではありませんが、努力はすべきです。過去1~2カ月の血糖コントロールを示すヘモグロビンA1cは、8%未満を目指してください。ヘモグロビンA1cは8%より高くなると免疫力が低くなるといわれているからです。また、インスリン注射や薬の服用を勧められている人は、この機会に前向きに検討してはいかがでしょうか? 早めの治療対策が、やがては「糖尿病と手を切れた」となるかもしれません。
中には、「そういえば、血糖値が高いと数年前の健康診断で指摘されたけど、不調を感じないから病院にずっと行っていなかった」という人もいるでしょう。現在の血糖コントロールがどうなっているか確認すべきです。
春~夏より秋~冬のほうが数値が高くなりがちなので、認識している数字以上に高値になっているかもしれません。
「病院に行く時間がなくて……」という人は、センサーを装着し、血糖読み取り用の機械を近づけるとすぐに血糖値を測定できる機器がアマゾンなどで安く手に入ります。目指す血糖値は70~180㎎/デシリットルで、この値に入っている時間帯を多くすることです。
日常的にできることとしては、月並みではありますが、睡眠をしっかり取り、規則正しい食生活を心掛ける。日頃の運動で心肺機能を高めれば、新型コロナウイルスに負けない体づくりにつながります。
(坂本昌也/東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授)
話題の「尿1滴でがん検査」に医師が鳴らす警鐘 陽性の的中率5%? 数字で解き明かす課題
日本人の2人に1人が生涯でがんになると言われる時代。死因の1位でもあり、早期発見が重要とされる。費用と身体的負担が少ない「尿1滴でがんを検知」という新しい検査方法がメディアを賑わせている。しかし、誤った結果を示す場合も多いと考えられ、手放しで喜べる状況ではないという。ブログで警鐘を鳴らしてきた五本木クリニック(東京)の桑満おさむ院長に、解説してもらった。
* * * * *
■これまでにない「尿1滴でがん検知」
「尿1滴調べるだけで、がんが判別できる」という検査が話題になっている。「線虫」という小さな生物が匂いに反応する性質を利用し、尿中のがんの匂いの有無によってがんの有無を判定するという。ベンチャー企業の「HIROTSUバイオサイエンス」が開発したN-NOSE。1月に実用化され、これまでにない画期的な検査方法であることには間違いない。
これまでのがん検査方法として有名なものは、血液検査の「腫瘍マーカー」がある。人間ドックでオプションとして調べたことがある人も多いだろう。これは1種類のがん、あるいは数種類のがんの存在を知ることができる。一方で、線虫を使ったがん検査は、5大がんをはじめ15種類ものがんに反応するため、がん検診のスクリーニング検査として期待されている。
(写真:47NEWS)
■費用も、苦痛も少なく見える
15種類のがんを保険診療で調べることは現在認められていない中、約1万円という低コストで検査できる点も「尿1滴でがん検知」が魅力的に聞こえる一因だろう。
例えば、私が専門とする泌尿器科領域で、前立腺がんの診断補助に使用される腫瘍マーカーの一種「PSA(Prostate Specific Antigen/前立腺特異抗原)」は採血が必要で、費用は診察料・判断料・検査料を含めると5000円程度(保険診療の場合はこの1ー3割を自己負担、症状が無い場合は全額自費)。尿だけの検査となれば、患者の経済的負担、身体的な苦痛が少なく受け入れやすいとも考えられる。
これだけを聞くと、尿を使ったがん検査の実用化はよろこばしいように思われる。しかし、実際に日常の診察で使用することには、多くの医療関係者が問題点を指摘している。
■15%のがんを見逃す危険性
N-NOSEでがんを見つけられる「感度」は、約85%だと公表されている。かなり高いように感じるが、実際に100人のがんにかかっている人を検査した場合、15人は「陰性」と判定され、がんを見逃してしまうことになる。