ニュースなはなし

気になるニュースをとりあげます

開業医でも勝ち組ではない…コロナで収入が半減した40代医師

2022年05月07日 08時02分32秒 | 医学部と医師の育成のこと


世界経済にも大打撃を与え続けている新型コロナウイルス。恩恵を受けているのはごく一部の企業に過ぎず、ほとんどの業界は業績が悪化。それは医療機関も例外ではない。

写真はイメージです(以下同じ)


 外来患者の診察を制限せざるを得なくなり、売り上げの大部分を占めていた診療報酬が激減。多くの医療機関ではボーナスの支給額が前年よりもカットされた。そのことはニュースでも大きく報じられ、覚えている人も多いはずだ。  なかでも経営危機に瀕しているところが多いと言われているのが、町の小さなクリニック。北沢徳祐さん(仮名・40代)が院長を務める内科医院も苦しい経営を強いられているという。 

2・24・2021

コロナ禍で診療報酬が激減

「昨年の緊急事態宣言中は、一時的に休診した時期もあり、その後もしばらくは新規の外来患者の受け入れを断っていました。当院独断での判断ではなく、関係各所からの通達・指示でそのように対応しなければならなかったんです。現在も37.5度以上の発熱が確認された患者さんについては診療をお断りしており、発熱患者を受け入れてくれる大きな医療機関を紹介しています。

  地域医療の一端を担う立場としては本当に心苦しいですが、ウチのクリニックに医師は私しかいません。もしコロナに感染してしまえば大勢の患者さんに迷惑をかけてしまうので……」 

 彼はもともと大きな総合病院に勤めていた勤務医。親は会社員で後を継げる病院はなかったが、医大生のころから「いつかは開業医に……」と考えていたそうだ。そのため、実家や祖父母からの援助を受けて開業することができたが、初期費用だけで軽く1億円以上のお金がかかったという。 

「田舎なので土地代は安かったですが建物や設備費用はもちろん、検査や治療に必要な機材を購入するとウチ程度の規模のクリニックでもこのくらいの費用がかかってしまうんです。さすがにこれほどの額だと全額用意するのが難しかったため、約5000万円は開業医向けのローンの利用しました」 

 それでも自分が生まれ育った町で開業したこともあり、かつての旧友たちを通じて口コミで噂が広がり、地元でも人気のクリニックとして毎日多くの患者が訪れていたとか。 

 今も厳しい経営ながらもなんとか踏みとどまっていられるのは、「地元でひいきにしてくれる患者さんがいるから」と話す。  
   

収入はコロナ前の半分以下に

 「それでも去年は、一昨年に比べると収益が3割も落ちました。しかし、月々のローン返済額は減額になるわけでもないですし、スタッフの給料だって大きな病院みたいに簡単には減らせません。夜勤がないので本来なら人手を集めやすいのですが、コロナ禍で求人を募集しても集まりにくくなっている。その状態で辞められてしまうとクリニックの業務が回らなくなるため、給料は据え置くしかないんです」 

 検査用の機器など新たな設備を導入することも考えていたが、診療報酬が減った今の状況では厳しいと判断。当分の間は設備投資を控えるつもりだ。 「私個人の報酬はコロナ前の半分以下に減り、月50万円もありません。同年代のサラリーマンの月収よりは多いかもしれませんが、私は開業医なので当然ボーナスもない。病院のローンとは別に自宅の住宅ローンの支払いもあるので大変です。正直、勤務医だったころのほうが生活には余裕がありました」

勤務医でも別の病院でのアルバイトが必要?


  ちなみに勤務医であれば、空いた時間を利用して別の病院でアルバイトも可能。実際、そうやって多くの収入を得ている者も多い。

  だが、北沢さんは週6日クリニックを開けており、休みは1日だけ。開業医としてはごく一般的だが、今後も収益が下がったままだとクリニックの経営はますます厳しくなる。そのため、ほかの病院でアルバイトすることも視野に入れているという。 

「最近はそういう開業医も増えているんです。例えば、大きな街の駅前や繁華街にはEDや薄毛治療のクリニックの看板が出ているビルをよく見かけますが、医師は治療薬の説明と処方の指示くらいしか仕事がないので人気なんです。私も研修医時代はよくアルバイトしていましたが、また働きに出ないとマズいかもしれません。そうなると休みがまったくなくなってしまうので最後の手段ですけど」  
   

勤務医に復帰することもできるが…
 いざとなればクリニックを閉めて勤務医に復帰することもできる。その点では普通の会社員に比べれば恵まれているが、その場合でも多額の医療ローンの返済は残ったまま。平均以上の収入があっても返済額も多いため、決して生活がラクになるわけではない。

  高給取りで地域の中では社会的地位も信用もある開業医。世間では羨望のまなざしで見られる存在だが、必ずしも全員が勝ち組というわけではないのだ。<TEXT/トシタカマサ> トシタカマサ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アマゾンもマイクロソフトも……顔認証システムから手を引く理由

2022年05月07日 03時30分14秒 | 国際情勢のことなど
アマゾンもマイクロソフトも……顔認証システムから手を引く理由




便利なデジタル技術の見えざる顔「監視」を追及してきたジャーナリストで社会学者の小笠原みどりさんが、カナダから届ける月末連載。第7回は、オンライン上の写真や監視カメラの映像を通じて、個人を特定する顔認証システムについて。アメリカでは顔認証システムの使用を禁止する自治体が相次ぎ、大手I T企業が販売を停止する動きが始まっています。


7・31・2020

その背景となった根の深い問題とは――。 

アメリカを代表するIT企業のIBM、マイクロソフト、アマゾンの3社が6月、相次いで顔認証システムの開発・販売から撤退する、あるいは警察への販売を停止すると発表した。 顔認証システムとは、目と目の間の距離や鼻の長さ、あごの角度など、顔の複数の部分を数値化して照合し、個人を特定する技術だ。20年ほど前から販売競争が始まり、警察などの取締機関が空港や駅などに監視カメラを設置して、顔認証システムをインストールしてきた。が、人々のプライバシーを奪い、行動の自由を制限すると世界各国で物議をかもしてきた。


禁止する自治体が増加

私は新聞記者だった2002年に、税関が成田空港と関西空港でこっそり顔認証システムを使い始めたことをスクープした。日韓共催のサッカー・ワールドカップ対策として、外国人客への警戒がやたらに叫ばれていた頃だった。税関は、空港に降り立った全乗客を頭上の監視カメラで映しながら、「要注意人物」の顔データと照合していたのだ。来年に延期された東京五輪でも、大会関係者約30万人の会場入りにNECの顔認証システムが使われる。メガ・イベントの度に予算を獲得し、新しい監視技術は歩みを進めてきた。


 顔認証のように、指紋、手形、虹彩、声、動作など、人間の身体を数値化して識別する技術は生体認証(バイオメトリクス)と呼ばれる。9.11以降、パスポートやビザの申請、入国手続きなどに各国が導入して広がってきた。治安目的だけでなく、グーグルやフェイスブックは写真の分類や共有などSNSを楽しむ目的にも使っている。顔データを入力すれば世界中の人々をどこの誰なのか特定できる、いわば究極の監視を「面白い」とか「もう当たり前」と思う人もいるかもしれない。

 しかし、アメリカでは顔認証システムの使用を禁じる自治体が相次いでいる。19年5月、西海岸シリコンバレーの中心地サンフランシスコを皮切りに、東海岸のマサチューセッツ州でも5つの市が警察を含む行政機関による使用を禁じ、この5月、ボストンもこれに続いた。そして、世界的な技術競争の先頭を走ってきた3社が販売停止を発表。なぜいま、方針転換の決断が下されたのか。


技術に巣食う差別
3社の方針転換は、米ミネアポリスでアフリカ系市民ジョージ・フロイドさんが白人警察官に殺された事件によって、世界中に燎原の火の如く広がった反人種差別運動の最中に公表された。IBMのアーヴィンド・クリシュナCEOは、連邦議員に宛てた手紙にこう書いた。 「IBMは今後、多目的の顔認証や分析ソフトを提供しません。IBMは、大量監視、人種プロファイル、基本的人権と自由の侵害のために、他の業者が提供する顔認証技術を含めて、どんな技術が使われることにも固く反対し、これを容認することはありません(中略)。

人工知能(AI)は、警察が市民の安全を守るのに役立つ強力なツールですが、AIの業者と使用者はAIに偏りがないかを検査する責任を共有しています。特に、警察によって使用される場合がそうで、そのような偏りの検査は外部監査を受け、公開されるべきです」 クリシュナCEOが「偏り」(bias)と呼ぶのは、肌の色による人種的な偏見を主に指している。というのも、顔認証システムの正確さが人種や性別によって大きく異なることがここ数年、繰り返し指摘されてきたからだ。3社を含む大手企業の顔認証は、白人男性はほぼ間違いなく特定できたが、オバマ元大統領の妻ミシェル・オバマさんら黒人の女性を男性と判定したり、有色人種を誤判定する割合が高かかったりすることが報じられてきた。顔認証という技術も、社会同様、白人男性を中心に設計されていて、肌の色が違う人々を識別できない偏りを内蔵していることが明らかになってきた。 

誤判定は、クリシュナCEOが恐れるとおり、警察のような強制力を持った機関が顔認証を使用した場合には、特に実害が大きい。誤判定が誤認逮捕を呼び、誤認逮捕が冤罪(えんざい)を生み出しかねない。実際に今年1月、ミシガン州で顔認証AIによって、アフリカ系男性が誤認逮捕された。彼は30時間後に釈放され、「写真の人物は自分と全然似ていなかった。黒人がみんな同じように見えると思ってほしくない」と語ったが、いくら本人が否定しても、警察がAIを信用するケースもあるかもしれない。

まして、差別的で過剰な暴力をふるう警察によって、フロイドさんのようにいのちを奪われる人が増える危険性は否定できない。 

マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「私たちは、人権に基づく国内法ができ、その法律が顔認証技術に適用されるまで、米国内の警察機関には顔認証技術を販売しません」と述べた。自社製品の誤判定率の高さを指摘されても、警察への売り込みを積極的に続けてきたアマゾンですら、警察への販売を1年中断すると発表した。 つまり3社は、顔認証システムが人種差別を後押ししている事実を認め、コロナ下でわき起こった反人種差別運動への応答として、方針転換を発表した。


警察の差別的な暴力に怒る世論が、技術会社にも責任を問い、販売の停止を余儀なくさせたとも言えるだろう。人種差別は、警察という組織同様、顔認証という技術のなかにも巣食っていることが、多くの人々に認識され始めたのだ。

以下はリンクで>


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする