風邪薬に咳止め…女子高生たちの間で蔓延する、「生きるための合法薬物乱用」の「ヤバすぎる実態」

9/4(日) 16:32配信

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生きづらさを抱える子どもたちが、学校、親、友人、進路といった現実から逃避するため、薬物に救いを求めている。それも大麻や覚せい剤といった違法薬物ではなく、どこでも誰でも手軽に買える市販薬や処方薬で……。今、そうした合法薬物への依存が深刻な問題になっている。前編記事『池袋駅西口、上野公園…次の「トー横」を探して彷徨う若者たちの「行き先」と、懸念すべき「ヤバい事態」』に続けて紹介する。
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合法薬物への依存
国立精神・神経医療研究センターの精神保健研究所薬物研究部長の松本俊彦氏
児童生徒の自殺者数がコロナ禍の中、戦後最悪の数字を示した。
警察庁の自殺統計によると、児童生徒の自殺者数は19年に399人、20年には統計を取り始めて最悪の499人、21年も473人と高水準を維持している。とりわけ目立つのが、女子高校生の数だ。19年には80人だったが、20年には140人、21年には143人と顕著になっている。
いったい、彼女たちに何が起きているのか。子どもの自殺問題に詳しいジャーナリストの渋井哲也氏が取材した。 生きづらさを抱えた子どもたちの背景に、薬物の問題が見え隠れする。特に問題になっているのが覚醒剤や大麻などの非合法の薬物ではなく、処方薬や市販薬といった「合法薬物」への依存だ。 国立精神・神経医療研究センターの精神保健研究所薬物研究部長、松本俊彦氏が話す。
「昨年秋、週刊誌などで『トー横キッズ』が取り上げられました。トー横キッズとは新宿・歌舞伎町の映画館TOHOシネマズの周辺にいる子どもたちのことです。そこには10代後半の女の子も多くいて、彼女たちはリストカットをしたり、過量服薬(オーバードーズ、以下、OD)の情報を交換したり、薬をシェアしたりしています」
彼女たちがシェアする薬は大麻やマリファナ、覚せい剤、脱法ハーブの類ではない。風邪薬や咳止めなど、ドラッグストアやインターネットなどで誰でも簡単に買えるような、ごく普通の市販薬だ。
2021年5月、新宿・歌舞伎町のホテルから男女2人が一緒に転落した。警察は自殺、心中事件とみていた。男性は18歳の専門学校生、女性は14歳の中学生。トー横に集まっていた子どもたちだった。目撃証言によると、2人は市販薬の咳止め薬をODして飛び降りたという。SNSで交際を宣言してから数時間後のことだ。
実は市販薬の乱用やODがこのコロナ禍で増えており、深刻化している。しかもそれはトー横に限らず、全国でみられるのだ。
'21年12月、滋賀県守山市で通信制の高校に通う京都市内に住む女子高生がODで死亡した。使われた薬は、精神科などで処方される睡眠薬や抗不安薬。そして市販されている咳止め薬などだった。このとき、死亡した女子高生はほかの10代の少女が2人と一緒にいた。彼女たちはSNSで知り合い、ODをするために集まっていた。
死亡事故に発展するケースも
乱用の対象になる市販薬には、本来であれば規制対象となる成分が微量に含まれている。
「例えばある薬の成分には抗不安作用があります。これは麻薬及び向精神薬取締法の規制対象となるのですが、少量なら市販薬に使えるんです。別の市販薬には、覚醒剤取締法の規制対象の成分が入っています。これは意欲増進や抑うつ気分を改善します」(松本氏)
子どもたちはそうした市販薬に頼り、生きづらさを緩和させる。生きるために薬物に手を出すと松本氏は分析する。だが、乱用した結果、死亡事故も起きている。
「より安価で手に入る市販薬もあります。警察への捜査協力の経験からわかったのですが、死亡原因に市販薬が絡んでいるケースも見えてきました。
ある成分が入った市販薬は、特に柑橘系果汁と混ざると血中濃度を上昇させます。その結果、血圧低下やめまいなどを引き起こす危険がある。例えば、それらの薬をグレープフルーツ果汁の入った缶チューハイと一緒に飲む行為は非常に危険なのです」(同)
OD後の救急搬送事例や死亡事例をみた時、それらの多くがカフェイン中毒だったと松本氏はいう。カフェイン中毒になると、心拍数の増加や呼吸が早くなるなどの身体症状や不安、焦燥感、緊張状態などの精神症状が現れる。重度となれば不整脈や痙攣による窒息などを引き起こし、最悪の場合は死に至る――。
不安な気分を安定させるべく、どうにか生きるための手段として行っていた薬物乱用が、結果的に死に近づく行為になってしまうのだ。
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