新型コロナに感染してしまったら 陽性者の宿泊・自宅療養の注意点 経口治療薬の処方は
1/24/2022
オミクロン株は非常に感染しやすく、新型コロナワクチンを2回接種していてもブレイクスルー感染する可能性があります。また、別の病気で入院したのに、偶発的に新型コロナが発見される事例も出ています。3回目接種もまだ十分ではない現在、誰にでも感染する可能性はあると言えるでしょう。そこで今回は、感染してしまった場合の療養期間(隔離解除基準)、療養時に宿泊施設・自宅でそれぞれ準備すべきものや注意点、そして治療薬の供給状況について紹介したいと思います。
新型コロナの陽性者になった場合の療養期間
もし新型コロナに感染した場合、無症状あるいは軽症であれば、入院ではなく宿泊療養か自宅療養となります。療養期間については「発症日(無症状者は陽性検体が採取された日)から10日間が経過し、かつ症状消失から72時間経過した場合」となっています(図1)。たとえば、2月1日に発症し、2月8日までに症状が軽快すれば、療養解除や療養施設退所日は2月11日になります。入院した場合についても、人工呼吸器を装着していなければ、同様の解除基準となっています。
図1. 新型コロナ陽性者の隔離解除基準(筆者作成)
解熱鎮痛薬を服用して症状が改善していても、軽快とはみなされないので注意してください。
宿泊療養で準備するもの・注意点
宿泊施設では、外出せずに療養施設内で過ごすことになります。施設ごとに注意事項や生活上のさまざまな制約があります。また、毎日健康状態の報告が必要です。
通販や外部からの物品受け取りについては、感染拡大防止のために不可のところもありますが、常用薬の補充や家族からの差し入れに関しては可能な施設が多いです。とはいえ、基本的に必要物資は療養開始時にすべて持参する必要があります。宿泊施設のスタッフにヒアリングした、おすすめの準備品は図2の通りです。
図3. 宿泊療養時の準備品(筆者作成)
私のように好き嫌いが多い人は、お菓子、ゼリー、菓子パンなどは持っていきたいところです。
体温計やパルスオキシメーターは宿泊施設で準備してもらえることが多いです。宿泊費用や食費の自己負担はありませんが、帰りの交通費が必要になることもあり、ある程度現金があったほうがよいです。
宿泊療養施設では、タオル類をクリーニングして再利用するマンパワーがないことが多く、いわゆる「ホテル備え付けのタオル」の提供がない場合が多いのでご注意ください。衣服をたくさん持っていってもかさばるため、最低限の部屋着くらいでよいです。これらの洗濯については、施設内コインランドリーが使用できないこともあり、バスルームで手洗いをお願いされる場合もあります。また、使い慣れたシャンプーやドライヤーなどを持っていくことが望ましいです。宿泊施設に備え付けのものが置いてあることもありますが、体に合わなくて10日間つらい思いをすることがあるそうです。
部屋からほとんど出られないのでストレスが溜まると思いますが、飲酒や喫煙はできません。飲酒して酔っぱらうと、病状の把握ができなくなります。喫煙した場合、数万円が請求される施設もあるので注意してください。
自宅療養で準備するもの・注意点
東京iCDC専門家ボードから「新型コロナウイルス感染症自宅療養者向けハンドブック」(URL:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/zitakuryouyouhandbook.files/zitakuryouyouhandbook02.pdf)が公開されているので参考にしてください。
宿泊療養と同じく、療養期間中の外出は禁止となります。家族と同居している場合、家族全員が不織布マスクを着用する必要があります。生活空間を分けて、可能なかぎり換気をおこないましょう。家族全員陽性という場合もありますし、小さな子供がいる場合に親と空間を分けるというのは至難の業ですから、実際のところはケースバイケースです。
洗面所やトイレを分けることは難しいので、ドアノブや手すりをこまめに消毒することが重要です(図3)。消毒は、アルコールあるいは0.05%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用います。後者を自宅で作ることは難しいので、環境用のアルコールタオルなどを薬局で入手するのがベストです。
陽性者から出たゴミについては、しっかりとしばって密閉して捨てるようにしてください。気になるときはゴミ袋を二重にします。
図3. 自宅療養時の注意点(筆者作成)
自治体によって自宅療養者のサポートには違いがありますが、療養者の食料品等の支援がおこなわれることが多いです。東京都では、自宅療養者フォローアップセンターを設置し、LINEや電話を活用した健康観察をおこなっています。
自宅では、咳の悪化、呼吸困難の悪化、酸素飽和度の低下(パルスオキシメーターで測定)、胸痛や意識障害の出現がないかチェックしてください。オミクロン株は上気道にとどまりやすいですが、肺炎にいたるとこれらの症状が出てくることがあるので注意が必要です。
治療薬の配送が可能
軽症者向けの経口治療薬モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)が特例承認され、現在使用されています。すでに全国の医療機関や薬局に2万人分以上が配布されています。発症5日以内に内服を開始することが望ましいとされています。
新型コロナを診断した医療機関から、登録薬局に処方箋が発行されますが、感染対策の観点から、陽性者が薬局を直接訪問することはありません。そのため、薬局から自宅あるいは宿泊施設に配送される仕組みとなっています(図4)(1)。
図4. モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)の処方(筆者作成)
すでに承認が申請されているニルマトレルビル/リトナビル(商品名パクスロビド)についても、同様の配送がおこなわれるのではないかと予想されます。
まとめ
新型コロナが陽性になると、10日間の療養が必要になります。オミクロン株は比較的軽症であるため3回目のワクチン接種を躊躇されている方がいるかもしれませんが、感染が判明すると現時点では隔離が必要になり、社会的ダメージも大きいです。また、周囲の高齢者や重症化リスクが高い人へ感染を広げる可能性がありますので、接種できるタイミングで3回目接種を受けることをおすすめします。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬の医療機関及び薬局への配分について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000873667.pdf)
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】