15日、東京大学の前で大学入学共通テストの受験生ら3人が切り付けられた事件。逮捕された名古屋の高校2年生は「東大を受験するなら東大で事件を起こそうと思った」と話していることがわかりました。
2022/1/
17日朝、殺人未遂の疑いで送検された、高校2年の男子生徒。事件は受験生にとって「特別な日」に、起きました。/
1/17/2022
15日午前8時半ごろ、東京大学の門の前。「大学入学共通テスト」の受験に来ていた高校生の男女2人と、試験の関係者とみられる72歳の男性が、刃物で刺される事件が起きました。
現場で取り押さえられ現行犯逮捕されのは、名古屋市の高校2年の男子生徒でした。
現場で見つかった刃渡り12cmの包丁の他に、生徒は刃渡り6cmのナイフと、折り畳み式のノコギリを持っていました。
被害者と面識はなく、通り魔的な犯行とみられています。
全国の試験会場で警備を強化 名古屋の受験生「被害にあった人はすごく辛かったと」
名古屋大学の受験会場前で警戒にあたる警察官(16日)
受験生が会場で襲われるという、過去に例のない事件。
15日、緊急会見を開いた、末松文科大臣は… 「受験生ならびに保護者の皆さんは不安を抱えている方も多いと思います。大学入試センターの各試験会場の大学・警察とも連携し、警備の強化に最大限努めますので、どうか落ち着いて受験に臨んでほしい」(末松信介 文科大臣 15日)
2日目となった16日の試験は、名古屋の会場でも付近を警察官が見回るなど、厳戒態勢の中、実施されました。
「受験の日はとても大事な日なので、(被害に遭った受験生は)今までの努力が出せなかったのは、かわいそうというか、すごく辛かったと思う(名古屋大学で受験した受験生)
「来年、東大を受験する予定だったが、勉強しろとの圧力が強く勉強が嫌だった」
逮捕された男子生徒の供述より
目指していた東大の前で、犯行に及んだとされる男子生徒。
捜査関係者によりますと「来年、東大を受験する予定だったが、勉強しろとの圧力が強く勉強が嫌だった」「東大を受験するなら、東大で事件を起こそうと思った」と 供述していることがわかりました。
愛知県警によると、先週金曜日(14日)の夜、家族から「子どもが帰ってこない」と通報があり、行方不明届を受理していました。
捜査関係者によると、男子生徒は夜行バスで上京し、自宅から刃物3本を持ってきたと話しています。
「頭がいいのは聞いていて、東大以上なんじゃないかという」(男子生徒を知る人) 周囲から、こう見られていた男子生徒。しかし… 「医者になるために、東大に入ることを目指していたが、1年前から成績が振るわなくなり、自信を無くした」(男子生徒の供述)
生徒会長に落選 三者面談では進路に悩む
東京メトロ・東大前駅で着火剤のようなものがまかれていた(15日)
男子生徒は通っている高校で、生徒会長に立候補しましたが落選。去年9月、保護者を含め行われた三者面談では進路について迷っていたといいます。 「『僕は来年、東大を受験するんだからね』と叫んでいたんですよ」(事件の目撃者)
「事件を起こし、自分も死のうと思った」とも供述している男子生徒。事件の直前には、東京メトロの車内で、液体が漏れたリュックサックが見つかっていました。 「15日8時24分ごろ、東大前駅で着火剤のようなものがまかれたと確認しています」(東京メトロの広報)
捜査関係者によると、男子生徒は「電車で液体をカバンに染み込ませ、カバンごと燃やそうとしたが燃えなかった」と話していて、関連を調べています。
生徒が通う学校「密をつくるなという社会風潮で生徒が分断・孤立感」
男子生徒の父親が発表したコメント
今回の事件を受けて、父親は弁護士を通じてコメントを発表しました。 「このたびは、世間をお騒がせしまして、誠に申し訳ございません。被害にあわれましたご本人様には、心より申し訳なくお詫び申し上げます」(男子生徒の父親が発表したコメント)
男子生徒が通う名古屋市内の高校では、17日朝、校長が朝礼で全校生徒に事件について報告しました。また、事件について高校は次のようなコメントを出しています。
「本校は、勉学だけが学校生活のすべてではないというメッセージを、授業の場のみならず、さまざまな自主活動を通じて発信してきました。昨今のコロナ禍のなかで、学校行事の大部分が中止となったこともありメッセージが届かず、正反対の受け止めをしている生徒がいることがわかりました。密をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません」(男子生徒が通う高校のコメント)
専門家は「ターゲットは受験や学歴社会そのものだった」
立正大学 文学部社会学科 小宮信夫教授
専門家は、男子生徒が受験へのプレッシャーを自覚し、心理的に追い込まれた可能性があると分析します
「大きな受験社会、受験システムに押しつぶされそうになったということなんですね。それを本人は自覚してしまった、プレッシャーの大きさは感じていたということだと思う。東京大学しかも受験の日という事なので、場所も時間も選んできたなと。ということはターゲットは、受験や学歴社会そのものだとすぐに思いましたね」(立正大学 文学部社会学科 小宮信夫教授)
さらに小宮教授は、受験システム自体について、こう指摘します 「『知らないことを学ぶことは楽しいんだ』と。しかし受験で“楽しい”はほとんどくっ付いてこない、むしろ暗いイメージ・閉塞的なイメージがつきまとう。そうじゃなくて、楽しい勉強を彼が知れば、誰か教えてあげれば、将来どこの大学に行こうが、こんなことにはならなかったと思います」(立正大学 文学部社会学科 小宮信夫教授) (1月17日 午後3時40分~放送 メ~テレ『アップ!』より)