いまの円高は一時的な調整に過ぎない…金融のプロが「1ドル=500円の大暴落に備えよ」と警告する理由
12/30(金) 13:17配信
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra
1ドル150円を超えたドル円相場は、現在135円前後に落ち着いている。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「これは一時的なものであり、今後、再び円安が進む。1ドル=500円の円安を覚悟しておいたほうがいい」という――。
【図表】アメリカの消費者物価指数 ※本稿は、藤巻健史『超インフレ時代の「お金の守り方」』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
■1ドル=400~500円を覚悟したほうがいい
為替のことを語る機会が多い私ですが、自分自身を為替のプロだとは思っていません。
私はディーリングの世界で長く仕事をしてきましたが、扱う商品は為替だけでなく株や金利など多岐にわたっていました。何でも好きな商品を扱って利益を出すのが私の仕事であり、為替を専門とする為替トレーダーではなかったのです。
さらに言えば、私が一番儲けたのは金利スワップやJGB(国債)先物、JGB先物オプションといった金利商品で、為替は儲けるのが一番難しいジャンルでした。
しかし、もし、私が現役のトレーダーだったら、今こそ、為替で儲けようとすることでしょう。
なぜなら、これほど先の予測がしやすい相場はないからです。
私の経験上、ドル円の相場を決めるもっとも大きな要因は「経常収支動向」と「日米金利差」の2つです。日本の経常収支が増大すれば円は上がり、減少すれば円は下がる。アメリカの金利が上がり、日本の金利が下がれば円安になり、逆にアメリカの金利が下がり、日本の金利が上がれば円高になる。
■円高が進む要素が見当たらない
現在、日本の経常収支は減少の一途をたどり、日米の金利差も大きく開きつつあります。つまり、2つの要因のどちらもが「円安」を示しているのです。こんなことは私の経験上、初めてのことです。
日本の経常収支はこれまで、赤字になることがあっても単月単位の短いものでした。しかし2021年12月、翌年1月と2カ月連続の赤字となった上に、6月にも再び赤字に転落するなど、極めて低調な数字になっています。
これに関しては、ウクライナ危機による原油や穀物等の値上がりや訪日外国人の減少等の影響があったと思われますが、それにしても異常な事態です。
ちなみに、「アメリカは毎年経常赤字を垂れ流している。だったらドルこそ下がるのではないか」と主張する人がいます。
確かにアメリカは経常赤字を繰り返しています。しかし、ドルは世界の基軸通貨です。アメリカが世界経済拡大と同率でドルを世界に垂れ流してくれなければ、世界はドル不足になってしまう。そうなると通貨の価値が上がる。
すなわち、デフレになってしまうのです。だからこそアメリカは経常赤字であってもいいということであり、言ってみればこれが基軸通貨国の強みでもあるのです。
<略>
今、マーケットでドル高・円安を説く人は、大体「日米金利差拡大」をその理由にしているようです。確かに、これはドル高・円安の大きな理由です。しかし、それだけでは、1ドル180円とか200円程度までしか説明できません。
■QT(量的引き締め)を甘く見てはいけない
私が1ドル400円、500円となり、その後は天文学的数字になると言っているのは、日米金利差よりも「ばらまいたお金を回収(QT:量的引き締め)」するFRBと「未来永劫、お金をばらまき続けなければならない(QE:量的緩和継続)」日銀との金融政策の違いなのです。
その結果、回収されて希少価値が出てくるドルと、毎日天から降ってくる円では、その価値に大きな差が出てくるのです。近年の世界的なインフレの主因は「お金のばらまきすぎ」ですから、インフレをコントロールできるFRBの通貨と、「インフレをコントロールできない」日銀の通貨との価値の差は将来、非常に大きくなってくるだろうと思っているのです。
そこで、1ドル400円から500円くらいまでドル高・円安が進みます。その結果、日本は世界に冠たるインフレ国家となります。
しかし、日銀にはそれを制御する手段は何もない、ということでハイパーインフレが進行(円の紙くず化)すると思っているのです。
日銀が未来永劫にQEを継続しなければならないのは、これほどの超低金利で日本国債を購入するのは日銀しかいないからです。
日銀が購入をやめれば(QEの中止)長期金利は暴騰し、前述したように政府は予算を組めなくなります。また、日銀自身、非常なる低金利で莫大な量の国債を保有していますから、巨大な債務超過が発生してしまいます。
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